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第14話 僕と彼女の別れ際
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夕方まで動植物園で遊んだ後、僕達はバスを使って駅まで戻って行っていた。
バスから駅へ向かう人の波をやり過ごした僕達はふたりっきりになっていた。
さよならを言おうとしたとき、彼女は少し恥ずかしそうに麦わら帽子を触りながら言った。
「ねえ、今日、麦わら帽子にしたのって、もしも菊池君が忘れてたら、これを見て、持って帰っちゃった麦わら帽子を思い出して貰おうと思ったの」
「そうなんだ。そう言えば、あの持って帰った麦わら帽子ってどうしたの」
「ふふふ、内緒」
そう言って、彼女は朝顔のような微笑みを見せた。
そして、ほんの少しの沈黙。
それは別れの時間をお互いに感じさせていた。それは”お礼”の時間は終わりを意味していた。
その空気を感じ取った僕は、別れのあいさつを口にした。
「それじゃあ、武田さん。今日は楽しかったよ。ありがとう」
「ちょっと待って」
「何?」
彼女は、その大きな麦わら帽子をかぶり直した。
まだなにか”お礼”があるのだろうか? しかし、動植物園にお弁当とたったあれだけの事に対する礼にしては十分すぎる物を貰っている。
人々の話し声、バスの音、車のエンジン音が他人のように聞こえてくる。
そろりと風の音が聞こえてくる。
僕はじっと彼女の言葉を待った。
武田は下を向いたまま、しばらくすると、顔を上げた。
「あのね……」
バスから駅へ向かう人の波をやり過ごした僕達はふたりっきりになっていた。
さよならを言おうとしたとき、彼女は少し恥ずかしそうに麦わら帽子を触りながら言った。
「ねえ、今日、麦わら帽子にしたのって、もしも菊池君が忘れてたら、これを見て、持って帰っちゃった麦わら帽子を思い出して貰おうと思ったの」
「そうなんだ。そう言えば、あの持って帰った麦わら帽子ってどうしたの」
「ふふふ、内緒」
そう言って、彼女は朝顔のような微笑みを見せた。
そして、ほんの少しの沈黙。
それは別れの時間をお互いに感じさせていた。それは”お礼”の時間は終わりを意味していた。
その空気を感じ取った僕は、別れのあいさつを口にした。
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「何?」
彼女は、その大きな麦わら帽子をかぶり直した。
まだなにか”お礼”があるのだろうか? しかし、動植物園にお弁当とたったあれだけの事に対する礼にしては十分すぎる物を貰っている。
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武田は下を向いたまま、しばらくすると、顔を上げた。
「あのね……」
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