13 / 17
第十三話 ダンジョンマスターとの戦いは大変ですか?
しおりを挟む
頑丈な大きな鉄の扉が内側から開けられる。
中からはテカテカと黒光りした肌を見せつけながら、スキンヘッドのマッチョな男が出てきた。
「まさかあんな倒され方をするとはな。また一から製作か。まあ、約束だ。我が相手をしてやろう。ついてこい」
ダンジョンマスターのジェロはミズホたちが来た道を引き返した。
「あそこから先は我の研究所兼居住区だ。あそこをさっきのように壊されると困るんでな」
そう言いながらまるで友人と買い物に行くように歩いて先ほどの広場に戻る。
「コマチ姫はどこよ。解放しなさい」
「威勢のいい子豚ちゃんだ。脂肪じゃなくて筋肉つけなさい。コマチ姫はちゃんと生きてるよ。それ!」
ジェロは空中に向かって手を振ると、女の子が写し出される。
背はクロフェより低く細身の体にほとんど膨らんでいない胸。幼さを残す顔には気の強さを表すように釣り上がった赤い瞳とツンと高い鼻。可愛らしい唇はキュッと閉じられている。
ピンクの長い髪は黒地に赤い刺繍がされたリボンでツインテールにまとめられている。
白い細い足には黒いニーソックスを履き、手には肘まである黒い手袋をつけていた。
そう、身につけているのは二つのリボン、ニーソックスと手袋のみ。
そして出産台のような椅子の上に手足を拘束されて座らされていた。
つまり胸だけでなく、股も丸見えの状態であった。
「な、え、どうしたの? 見られているのわたくし? いや~見て! じゃなくて見ないで!」
ミズホたちが見ていることが向こうからもわかるらしく、顔を紅葉させてコマチ姫は叫ぶ。
「まあ、このように人質は元気ですよ。さて……あなた仲間になりませんか? あなたとならこのダンジョンを出て、街の一つも手に入れられることができそうです。そこを足がかりに国を取るのもいいですね」
「何馬鹿なことを言ってるの。コマチ姫を解放しなさい」
「子豚がぶうぶうとうるさいですね。我はそこの金色の髪のあなたに話しをしているのですよ」
スキンヘッドのジェロはソリエを無視してミズホへ話しかける。
美しい青い目で黒光りのダンジョンマスターを見て答える。
「いいですよ」
「……ミズホ様」
クロフェは心配そうにミズホを見る。
「あなたが勝ったら仲間になりましょう」
ミズホはそう言って日本刀の柄に手をかける。
「やはりそうなりますか! いいでしょう。結果は見えていますがね。では始めましょうか」
そう言ってジェロは体を黒くテカらせながら、白い歯を見せてニッコリ笑う。右手で左手首を掴み、斜めに構えテカテカの筋肉を魅せつける。俗に言うサイド・チェストのポーズだ。
ミズホは腰を軽く落として、光一閃の構えをとる。
一撃で決着がつく。クロフェもソリエもそう思っていた。
クロフェが無意識に瞬きをした瞬間、美しい金色の髪をふわりと後ろにたなびかせた魔法剣士が黒光りしたスキンヘッドのボディビルダーの後ろにいた。
「滑った!?」
ミズホが呟くとジェロはポーズを崩して後ろを向く。
「今、何かしましたか? ああ、言い忘れましたが、我には剣も矢も効きませんよ。この体を覆う、液体が摩擦をほぼない状態にしているのですよ」
ミズホは剣を水平に構える。
その姿を見て呆れて両手を頭の後ろで合わせて足をクロスに構える、アブドミナル・アンド・サイのポーズを取るジェロ。
次の瞬間、クロフェには何十本もの剣が真直ぐにジェロへ向かっていった。
乱れ百桜花!
この技を習得する試験として無数に舞い散る桜の花びらを突くことから名付けられた連続突き。
しかし、全ての突きはそのテカって盛り上がった筋肉に当たるとつるりと滑り、傷一つつかない。
「わからないお馬鹿にはお仕置きが必要ですね」
ジェロは余裕を見せながら、詠唱を始める。
「我が古の契約にもとづき降臨奉り、我に力を与え給え、誇り高き炎の精霊イフリート!」
その詠唱にミズホは間合いを取ると、ジェロの目の前に大きな炎の塊が現れた。
それは大きな渦を巻き次第に人の形を取り始めた。
炎で出来た大きな人形!
それがクロフェが見たイフリートのイメージだった。
「上位精霊!」
ソリエがそのイフリートの熱気に当てられながら叫ぶ!
四つある魔法体系の頂点に立つ上位精霊魔法。
通常の精霊魔法のようにその力だけを借りるのではない、上位の精霊を使役しその力を借りる。
その力は訓練された一個大隊をも壊滅させる力があると言われている。しかし、その大きな力のため、習得している者は稀である。
「クロフェ! 逃げるわよ。あんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りないわよ」
ソリエはクロフェの手を引っ張って広場の入り口へ急ぐ。
「でもミズホ様が……」
クロフェはミズホを見ると刀を鞘に収めていた。
「大丈夫よ。ミズホ様は負ければ仲間になるって言う約束だから殺されることはないわよ。それよりも私たちの方が危ないわよ。あいつにとって私たちはただの邪魔者でしかないんですもの」
ジェロの興味がミズホに向いている隙に二人はなんとか広場の外へ逃げることに成功した。
中からはテカテカと黒光りした肌を見せつけながら、スキンヘッドのマッチョな男が出てきた。
「まさかあんな倒され方をするとはな。また一から製作か。まあ、約束だ。我が相手をしてやろう。ついてこい」
ダンジョンマスターのジェロはミズホたちが来た道を引き返した。
「あそこから先は我の研究所兼居住区だ。あそこをさっきのように壊されると困るんでな」
そう言いながらまるで友人と買い物に行くように歩いて先ほどの広場に戻る。
「コマチ姫はどこよ。解放しなさい」
「威勢のいい子豚ちゃんだ。脂肪じゃなくて筋肉つけなさい。コマチ姫はちゃんと生きてるよ。それ!」
ジェロは空中に向かって手を振ると、女の子が写し出される。
背はクロフェより低く細身の体にほとんど膨らんでいない胸。幼さを残す顔には気の強さを表すように釣り上がった赤い瞳とツンと高い鼻。可愛らしい唇はキュッと閉じられている。
ピンクの長い髪は黒地に赤い刺繍がされたリボンでツインテールにまとめられている。
白い細い足には黒いニーソックスを履き、手には肘まである黒い手袋をつけていた。
そう、身につけているのは二つのリボン、ニーソックスと手袋のみ。
そして出産台のような椅子の上に手足を拘束されて座らされていた。
つまり胸だけでなく、股も丸見えの状態であった。
「な、え、どうしたの? 見られているのわたくし? いや~見て! じゃなくて見ないで!」
ミズホたちが見ていることが向こうからもわかるらしく、顔を紅葉させてコマチ姫は叫ぶ。
「まあ、このように人質は元気ですよ。さて……あなた仲間になりませんか? あなたとならこのダンジョンを出て、街の一つも手に入れられることができそうです。そこを足がかりに国を取るのもいいですね」
「何馬鹿なことを言ってるの。コマチ姫を解放しなさい」
「子豚がぶうぶうとうるさいですね。我はそこの金色の髪のあなたに話しをしているのですよ」
スキンヘッドのジェロはソリエを無視してミズホへ話しかける。
美しい青い目で黒光りのダンジョンマスターを見て答える。
「いいですよ」
「……ミズホ様」
クロフェは心配そうにミズホを見る。
「あなたが勝ったら仲間になりましょう」
ミズホはそう言って日本刀の柄に手をかける。
「やはりそうなりますか! いいでしょう。結果は見えていますがね。では始めましょうか」
そう言ってジェロは体を黒くテカらせながら、白い歯を見せてニッコリ笑う。右手で左手首を掴み、斜めに構えテカテカの筋肉を魅せつける。俗に言うサイド・チェストのポーズだ。
ミズホは腰を軽く落として、光一閃の構えをとる。
一撃で決着がつく。クロフェもソリエもそう思っていた。
クロフェが無意識に瞬きをした瞬間、美しい金色の髪をふわりと後ろにたなびかせた魔法剣士が黒光りしたスキンヘッドのボディビルダーの後ろにいた。
「滑った!?」
ミズホが呟くとジェロはポーズを崩して後ろを向く。
「今、何かしましたか? ああ、言い忘れましたが、我には剣も矢も効きませんよ。この体を覆う、液体が摩擦をほぼない状態にしているのですよ」
ミズホは剣を水平に構える。
その姿を見て呆れて両手を頭の後ろで合わせて足をクロスに構える、アブドミナル・アンド・サイのポーズを取るジェロ。
次の瞬間、クロフェには何十本もの剣が真直ぐにジェロへ向かっていった。
乱れ百桜花!
この技を習得する試験として無数に舞い散る桜の花びらを突くことから名付けられた連続突き。
しかし、全ての突きはそのテカって盛り上がった筋肉に当たるとつるりと滑り、傷一つつかない。
「わからないお馬鹿にはお仕置きが必要ですね」
ジェロは余裕を見せながら、詠唱を始める。
「我が古の契約にもとづき降臨奉り、我に力を与え給え、誇り高き炎の精霊イフリート!」
その詠唱にミズホは間合いを取ると、ジェロの目の前に大きな炎の塊が現れた。
それは大きな渦を巻き次第に人の形を取り始めた。
炎で出来た大きな人形!
それがクロフェが見たイフリートのイメージだった。
「上位精霊!」
ソリエがそのイフリートの熱気に当てられながら叫ぶ!
四つある魔法体系の頂点に立つ上位精霊魔法。
通常の精霊魔法のようにその力だけを借りるのではない、上位の精霊を使役しその力を借りる。
その力は訓練された一個大隊をも壊滅させる力があると言われている。しかし、その大きな力のため、習得している者は稀である。
「クロフェ! 逃げるわよ。あんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りないわよ」
ソリエはクロフェの手を引っ張って広場の入り口へ急ぐ。
「でもミズホ様が……」
クロフェはミズホを見ると刀を鞘に収めていた。
「大丈夫よ。ミズホ様は負ければ仲間になるって言う約束だから殺されることはないわよ。それよりも私たちの方が危ないわよ。あいつにとって私たちはただの邪魔者でしかないんですもの」
ジェロの興味がミズホに向いている隙に二人はなんとか広場の外へ逃げることに成功した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる