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第二章

第99話 駆け出し冒険者は拗ねる

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「そんな事が……」

 ダイニングに戻り、エルシーから話を聞いたトリステンの父は、同じ父親である山の主の悲報に絶句した。
 家族を守り、襲撃者に立ち向かったのだろう。しかし、力及ばず子が連れて行かれた時は死んでも死にきれなかっただろう。
 そう思うと、自分よりも力があるとは言え、子供達だけで山に行かせた事を後悔した。

「それで、これからどうするつもりだ?」
「ドロンジョを連れて、ガダリナに戻るよ」

 トリステンはコーヒーを飲みながら答えた。エルシーの説明を聞いているトリステンには、ドロンジョを殺すという選択肢はなくなっていた。しかし、ドロンジョをこのままにしておく訳にはいかない。そうであれば、ガダリナの警備兵に引き渡すしかなかった。
 父親は息子の言葉を聞いて、肩を落とした。

「そうか」
「でも、オルコットが回復して、ドロンジョが自分で歩けるようになるまでは村にいるつもりだから」

 トリステンとしても村に帰ってきてから、慌ただしい日々を過ごし、ゆっくりと家族の時間が無かったのを気にしている。
 せっかくの故郷をみんなに案内一つしていない。ほんの二、三日しかいられないかもしれないが、その間はゆっくりしようと思っていた。
 何よりも、色々とありすぎてトリステン自体疲れ果てていた。

~*~*~

 次の日、オルコットは目を覚ますと、トリステンが側にいた。

「オル、大丈夫か?」
「あ、お兄ちゃん……おはよう」

 しっかり者のオルコットにしては珍しく、少し寝ぼけていた。
 それほど疲れていたのだろう。
 ボーとした顔で、トリステンを見つめていた。

「お兄ちゃん、だっこ」
「あら、オルちゃんは甘えん坊さんなんですね」

 トリステンの後ろにいたマリアーヌが、ひょいっとオルコットに顔を見せて言った。

「マリー! いたの?」
「いましたわ。何だったら、お姉様も、スティーブンもいますわよ」
「え! きゅー」

 恥ずかしくなったオルコットは布団をかぶってしまった。
 実家の部屋だった上に、トリステンとふたりっきりだと思って油断してしまった。
 それも一番見られなく無かったマリアーヌに見られてしまった。
 エルシーはそんなオルコットに今更ながらと言った口調で声をかけた。

「オルちゃん、今更何を恥ずかしがってるのよ。オルちゃんがトリくん大好きだってことは、みんな知ってることなのに」
「そうですわ。オルちゃんがリーダーを大好きだって、みんな知ってますわよ」
「そういうことじゃないの~!!」

 そう言って、ますます布団に潜り込んだ。
 こうなった時のオルコットの頑固さは厄介だと、トリステンはよく知っている。どうしようかと考えていると、エルシーがオルコットに声をかけた。

「オルちゃん。お腹空かない? オルちゃんのお母さんがシチューを作ってたわよ。一緒に食べましょう」

 その言葉と共に台所から美味しそうな匂いが漂ってきた。
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