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第20話 アマンダのお願い
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「この人もエルフ」
「本当か? 何でエルフが人の街に?」
人、亜人、獣人は基本的に各々の国、村、町に分かれて住んでいる。ドワーフの保安官ジェームズや鬼人のタレニアのように一部は人の街に暮らし、その反対もあるが、エルフ族に限っては自分たちのテリトリーから出てこない保守的な民族で有名だ。それは、過去にその美しさのため、ペットとして捕まったり、研究動物にされたりすることが多かった。また、長寿のためか少子化の傾向が強く、自分たちの血を守るため、排他的な種族となっていった。
「はい。そこの彼と同じエルフです」
長い髪に隠した特徴的な長い耳を見せながら、男たちの様子をうかがう。
クリスの態度から、ほかの人たちにエルフということを隠しているものと思っていたが、特に驚く様子もなく、落ち着いているのを見て、アマンダは拍子抜けした。そして、クリスはエルフであることを隠す必要がないほど、ほかの人たちを信用していたことに驚いた。それなのになぜクリス自身は、そのことに言及しようとすると、どうしてあれほど嫌がったのだろうか。
そんなことを考えている赤毛のエルフにウェインが質問をする。
「しかし、エルフ族は金髪じゃないのですか? クリスのように光り輝く」
「ほとんどは金髪ですが、一部私のような赤毛のエルフもいるのですよ。まあ、私が人の街に来た理由のひとつですが……」
赤毛の美しいエルフの女性は少し悲しそうな顔をして答える。
「それで……捕まっているエルフとあなたの関係は?」
ガドランドは少し躊躇して尋ねる。自分の子供だとか、恋人、夫と言うのではないかと恐れながら。
しかし、アマンダの言葉はガドランドをホッさせた。
「同じ村の子達です。エルフの子供は村の子供という意識で子育てします。昔、少しの間、人の街に住んでいたことがあったので、私が助けに来ました」
アマンダの説明によると、街の酒場で情報を集めて、ドラゴンの卵に捕まっていることを突き止めたアマンダは、一人二千万マルで引き取ることを約束して、あちらこちらから金を集めた。そしてガドランドから渡された二千万マルでなんとか四人分が準備できたのだが、いざ、引き取りに行くと既にプリマ教会に売られていたということらしい。
その後、教会に交渉に行ったのだが、エルフの子供達はどこにいるのか教えてくれなかった。
「それで、四人を返す代わりにフリートの秘宝を持って来いと言うのです。どうか、フリートの秘宝を探すのを手伝ってもらえないでしょうか? ここにまだ、六千万マルあります。これでどうかお願いします」
そう言って新たな皮袋をテーブルへ置いた。
それを見て、ルカは色めき立つ。
ロレンツは怒りをあらわにする。
ウェインは冷静に状況を見守る。
クリスはガドランドの言葉を待つ。
「これは引っ込めてください」
ガドランドの言葉を聞いて、落胆するルカ。
ザマアミロと心の中でガッツポーズするロレンツ。
納得するウェイン。
成り行きを見守るクリス。
単純に金では動かないと、事前に聞いていたアマンダは最後の手に出る。
「お金でダメなら……私ではどうですか?」
椅子から立ち上がり、ガドランドに縋るように胸を押し当て、耳元で甘く囁く。
本日二回目の真っ赤になるガドランドは、慌ててアマンダから離れようとする。
「じょ、女性がそんなことをするもんじゃありません! オレが言ったのはそう言うことじゃなくて、あのですね、別の依頼でフリートダンジョンに行くのですよ。そのついでにフリートの秘宝を探して来るって話ですよ」
慌てふためきながら説明する。あの夜、多数の男たちに向かって堂々と渡り合っていた男とは思えないほど、ドギマギとしていた。
これは惚れたな。
弟子たちはみんな心の中で呟いた。
そう思いながらも、ルカはその態度の変化を気にすることなく文句を言う。
「ガーさん、何で無償なんだよ。お金は持ってるんだから、貰っとこうよ」
「六千万マルあると言ったって、どうせ、まずいところから借りてるか、騙し取ったんだろうよ。領主の次男マリウスが貢いでる歌姫っていうのも、あなたのことだろう。悪い事は言わない、今のうちに返しときな。そうでないと四人を救えたとしても、この街から出ることもできなくなるぞ」
アマンダは目を見開いて驚く。この男はどこまで知っているのだろうか? ウブなフリをしてやはり見た目通り、裏があるのだろうか? 自分はただ、手のひらで踊らされているのではないかと錯覚する。
しかし、今はこの人に頼るしかない。
「ウェイン、ロレンツ。あとでアマンダさんを連れて、ジェームズ爺さんのところに行ってくれ。あの爺さんを通せば、裏の連中も丸く収めてくれるだろう。領主には俺から話をしておく」
「なんでオレが? 裏稼業の連中だったらルカでいいだろう」
「ルカに金を手放す仕事を任せられるか? ウェインだけだと馬鹿正直に話して、まとまるもんも、まとまんねえだろう」
ガドランドは嫌がるロレンツに指示を出すと、今度はルカの方を向く。
「ルカ、仕事だ。できる限りのフリートダンジョンと秘宝の情報を集めてくれ。俺が昔、作ったマップがこれだ。情報交換に使え。必要に応じて金も出していいからな」
「分かった。お金は経費扱いだよね」
「当たり前だ。それとクリスは、俺と買い出しだ。準備が出来次第、フリートダンジョンに行くぞ」
「ちょっと、待てください」
ガドランドの指示で各々行動を開始しようとするのを、アマンダが声をかける。
「本当か? 何でエルフが人の街に?」
人、亜人、獣人は基本的に各々の国、村、町に分かれて住んでいる。ドワーフの保安官ジェームズや鬼人のタレニアのように一部は人の街に暮らし、その反対もあるが、エルフ族に限っては自分たちのテリトリーから出てこない保守的な民族で有名だ。それは、過去にその美しさのため、ペットとして捕まったり、研究動物にされたりすることが多かった。また、長寿のためか少子化の傾向が強く、自分たちの血を守るため、排他的な種族となっていった。
「はい。そこの彼と同じエルフです」
長い髪に隠した特徴的な長い耳を見せながら、男たちの様子をうかがう。
クリスの態度から、ほかの人たちにエルフということを隠しているものと思っていたが、特に驚く様子もなく、落ち着いているのを見て、アマンダは拍子抜けした。そして、クリスはエルフであることを隠す必要がないほど、ほかの人たちを信用していたことに驚いた。それなのになぜクリス自身は、そのことに言及しようとすると、どうしてあれほど嫌がったのだろうか。
そんなことを考えている赤毛のエルフにウェインが質問をする。
「しかし、エルフ族は金髪じゃないのですか? クリスのように光り輝く」
「ほとんどは金髪ですが、一部私のような赤毛のエルフもいるのですよ。まあ、私が人の街に来た理由のひとつですが……」
赤毛の美しいエルフの女性は少し悲しそうな顔をして答える。
「それで……捕まっているエルフとあなたの関係は?」
ガドランドは少し躊躇して尋ねる。自分の子供だとか、恋人、夫と言うのではないかと恐れながら。
しかし、アマンダの言葉はガドランドをホッさせた。
「同じ村の子達です。エルフの子供は村の子供という意識で子育てします。昔、少しの間、人の街に住んでいたことがあったので、私が助けに来ました」
アマンダの説明によると、街の酒場で情報を集めて、ドラゴンの卵に捕まっていることを突き止めたアマンダは、一人二千万マルで引き取ることを約束して、あちらこちらから金を集めた。そしてガドランドから渡された二千万マルでなんとか四人分が準備できたのだが、いざ、引き取りに行くと既にプリマ教会に売られていたということらしい。
その後、教会に交渉に行ったのだが、エルフの子供達はどこにいるのか教えてくれなかった。
「それで、四人を返す代わりにフリートの秘宝を持って来いと言うのです。どうか、フリートの秘宝を探すのを手伝ってもらえないでしょうか? ここにまだ、六千万マルあります。これでどうかお願いします」
そう言って新たな皮袋をテーブルへ置いた。
それを見て、ルカは色めき立つ。
ロレンツは怒りをあらわにする。
ウェインは冷静に状況を見守る。
クリスはガドランドの言葉を待つ。
「これは引っ込めてください」
ガドランドの言葉を聞いて、落胆するルカ。
ザマアミロと心の中でガッツポーズするロレンツ。
納得するウェイン。
成り行きを見守るクリス。
単純に金では動かないと、事前に聞いていたアマンダは最後の手に出る。
「お金でダメなら……私ではどうですか?」
椅子から立ち上がり、ガドランドに縋るように胸を押し当て、耳元で甘く囁く。
本日二回目の真っ赤になるガドランドは、慌ててアマンダから離れようとする。
「じょ、女性がそんなことをするもんじゃありません! オレが言ったのはそう言うことじゃなくて、あのですね、別の依頼でフリートダンジョンに行くのですよ。そのついでにフリートの秘宝を探して来るって話ですよ」
慌てふためきながら説明する。あの夜、多数の男たちに向かって堂々と渡り合っていた男とは思えないほど、ドギマギとしていた。
これは惚れたな。
弟子たちはみんな心の中で呟いた。
そう思いながらも、ルカはその態度の変化を気にすることなく文句を言う。
「ガーさん、何で無償なんだよ。お金は持ってるんだから、貰っとこうよ」
「六千万マルあると言ったって、どうせ、まずいところから借りてるか、騙し取ったんだろうよ。領主の次男マリウスが貢いでる歌姫っていうのも、あなたのことだろう。悪い事は言わない、今のうちに返しときな。そうでないと四人を救えたとしても、この街から出ることもできなくなるぞ」
アマンダは目を見開いて驚く。この男はどこまで知っているのだろうか? ウブなフリをしてやはり見た目通り、裏があるのだろうか? 自分はただ、手のひらで踊らされているのではないかと錯覚する。
しかし、今はこの人に頼るしかない。
「ウェイン、ロレンツ。あとでアマンダさんを連れて、ジェームズ爺さんのところに行ってくれ。あの爺さんを通せば、裏の連中も丸く収めてくれるだろう。領主には俺から話をしておく」
「なんでオレが? 裏稼業の連中だったらルカでいいだろう」
「ルカに金を手放す仕事を任せられるか? ウェインだけだと馬鹿正直に話して、まとまるもんも、まとまんねえだろう」
ガドランドは嫌がるロレンツに指示を出すと、今度はルカの方を向く。
「ルカ、仕事だ。できる限りのフリートダンジョンと秘宝の情報を集めてくれ。俺が昔、作ったマップがこれだ。情報交換に使え。必要に応じて金も出していいからな」
「分かった。お金は経費扱いだよね」
「当たり前だ。それとクリスは、俺と買い出しだ。準備が出来次第、フリートダンジョンに行くぞ」
「ちょっと、待てください」
ガドランドの指示で各々行動を開始しようとするのを、アマンダが声をかける。
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