物理無双のオカルト探偵

沼平甫

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第一話 オカルト探偵(自称)神代壮

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 この世界には触れてはならない領域というものが存在する。
 呪い、因習、怪異──自然発生したものか、はたまた人間の業が生み出したものか。
 闇より黒く、泥より汚いそれらは『オカルト』と呼ばれるものだ。
「うっせぇからちょっと黙ってろ」
 あ、待って、まだ冒頭途中なんだから!
 ちょっと、殴っちゃ、鉄パイプで殴っちゃ駄目だって!
 実体が無い怪異を鉄パイプで殴るとか、物理法則完全に無視どころかジャンル崩壊してるんですけど???
「知るかボケ!」
 そして鉄パイプを思い切り振りかぶって──からのフィニッシュブロー。
 命中、そしてクリティカルヒット。
「ぐげぎゃあああぁぁぁぁぁ……」
 あ、消滅した。
 …………………………。
 えーと、こいつがこの物語の主人公、神代壮(くましろ・つよし)31歳独身。ちなみに無職。
「無職は余計だろ! 一応オカルト探偵やってんだ」
 探偵って何だっけ……?
「あ、あの……」
 あ、依頼人だ。いかにもイマドキって感じがする大学生。ちょっとドン引きしてるけども。
「さっきから、一人で虚空に向かって何言ってるんですか」
 ……おおっと。
「あー……、ちょっとうるせぇのがいやがるんだ。気にすんな」
 明らかヤバい人と思われてそう。
「まあ、ともかく、これでお前さんは大丈夫だ」
 言いながら、壮が粉々になった何かの破片を、鉄パイプの先端で指す。
 たぶん石像か何かかな。こういうのって、色々と宿りやすいから。
「あ、ありがとうございます、助かりました!」
 深々とおじぎする大学生。何か悪質なキャッチセールスに引っ掛かりそうな雰囲気の子だなぁ。
「で、祓い料は三万な」
「は、はい!」
 慌てて財布から万札を三枚取り出して渡す大学生。完全にカツアゲにしか見えないけども。
「んじゃあな。もう二度と変なモン拾ってくるんじゃねぇぞ」
 壮は大股で現場を去っていく。
「さぁて。金も入ったし、明日は久しぶりにパチ屋にでも行くかね。おっと、その前にスマホ代か。後でコンビニ寄らねぇと」
 やっぱ駄目だこいつ。
 そんなこんなで歩いてる最中、壮のポケットから音がした。
 スマホの通知。DMが来たお知らせだ。
「えーと、何々……最近、変な現象に悩まされてます。どこからか自分を呼ぶ声が聞こえて、夜になるとうるさくて眠れません。スマホで録音してみても、声すら残りません。どうか助けて下さい、か。良いねぇ。また、金づるゲットだぜ」
 物凄く駄目だ、こいつ。
 でもこういうのに限って、全く痛い目見なかったりするんだよなぁ。
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