12 / 19
第12話 町外れの探索
しおりを挟む
廃ビルの建つ敷地を目にして、結衣の胸は高鳴っていた。
町外れにひっそりと佇むこのビルは、長い間誰も近づかない場所だった。
外壁はところどころ崩れ、ガラスは割れ、窓には埃が積もっている。
全体に薄汚れた空気が漂い、かつての賑わいの面影はすっかり消えていた。
「ここが、呪詛生物の痕跡があった場所か……」
みんなが息を呑んで周囲を見渡す。辺りはひっそりと静まり返り、何も存在しないかのように思えた。
あるいはこの世ならざる存在が現世の者を遠ざけているのだろうか。
さすがの真司も少し不安そうに言った。
「これが本当に呪詛生物の影響だとしたら、まだ痕跡が残っているかもしれない。それに、このビル周辺には怪しい気配が漂っている」
辺りを伺っていた怜が冷静に言う。
「気配があるのなら、見逃すわけにはいかないわ。私たちができることは、できる限りの情報を集めて、神楽の復活を防ぐこと。どんな小さな手がかりでも無駄にはできない」
遥がその言葉を引き継ぐように、明るく言った。
「じゃあ、行こうか! みんなで協力して調べればきっと何か分かるよ」
その言葉に一同頷いて、意を決してビルのある敷地へと踏み込んだ。
ここにあの怪物がまたいるのだろうか。何の姿もない空虚なビルの窓を見上げる結衣の隣で遥と怜が声を掛けてきた。
「結衣ちゃんは凄いね。ここまで来てまるでびびってる様子がないもん」
「謝るわ。あなたはどこかで逃げると思ってた。あなたは本当に強いのね」
「そ……そんなことないよ。みんながいるから恐くないだけ」
それは本心でもあったが、遥と怜には冗談だと思われたようで軽く笑われてしまった。
やがて薄暗い内部に足を踏み入れると、すぐに湿気とカビの匂いが鼻をつく。
床は不安定で、歩くたびに軋む音が鳴った。
どこかで、かすかな風の音が聞こえるが、人の気配は一切ない。
「気をつけろよ、結衣。呪詛生物は何でも食らう。君は自信があるかもしれないが初心者なんだ。襲われたらすぐに僕達を頼れ」
真司の警告に、結衣は気を引き締めた。
彼らは呪いの怪物とも戦った経験者なのだろうか。結衣の知るより前から研究をしていたようだし、この町に呪いも昔からあるから経験があるのかもしれない。
「うん、分かってる」
部室での緊張がまだ残っているのか、結衣の肩の力は抜けなかった。
だけど、今はもう後戻りはできない。
自分の知らない世界に踏み込んで、少しでも多くを知りたいと思ったから。
「この階には何も無いようだな」
「上に行きましょう。人のいない廃墟は呪詛生物の痕跡が残りやすい場所よ。見落とさないように」
結衣は心の中で深く息を吸い、気を取り直した。
ここで何かを見つけなければならない。呪詛生物の痕跡、あるいはそこから神楽の呪いに繋がる一端を――。
「あそこに何かある!」
その時、遥が窓際に近づき、壁にかかる不自然な影を指さした。
「これ、見て! 何か書いてある!」
「文字では無さそうね。図形かしら」
「何らかの意味のある呪いの陣なのかもしれない」
結衣もそこに駆け寄ると、薄暗い壁に、何かが刻まれているのを見つけた。
それは文字でも、図でもなく、奇妙な模様だった。
「これは……」
神楽の使っていた術式で似たようなのを見た気がする。
結衣はしばらくじっと見つめると、ようやく口を開いた。
「呪紋……?」
遥が頷きながら言った。
「これ、神楽に関係しているかもしれない。もしかしたら、呪詛生物が現れる場所にこれを刻んで、呪いの力を呼び寄せているのかも」
神楽がここに来て何かしたとは結衣には思えなかったが。
真司はしばらく黙っていたが、低い声で言った。
「それに、あちこちに黒く染まった場所がある。これは呪詛生物が通った跡かもしれない。ひょっとしたら、まだこの廃ビルの中にいるのか……」
その言葉に結衣はさらに深く、廊下の暗がりの奥を見つめた。
(呪詛生物がまだここにいる可能性がある……)
その存在をまだ感じる事は出来なかったが。
「さっさと探して、倒しましょう」
怜が引き締まった顔で言う。
「私たちの目的は、神楽の復活を防ぐこと。呪詛生物を倒すのも、その為の手段よ」
結衣はここに呪いの痕跡があると改めて感じた。
今はここでしっかりと足を踏みしめ、目の前にある真実を掴まなければならない。
少しずつ足を進めて行くと、廃ビルの奥から奇妙な音が聞こえてきた。
何かが動いているようだ。
一同は、その音がどこから来ているのかを探るべく、さらに深く進んでいった。
町外れにひっそりと佇むこのビルは、長い間誰も近づかない場所だった。
外壁はところどころ崩れ、ガラスは割れ、窓には埃が積もっている。
全体に薄汚れた空気が漂い、かつての賑わいの面影はすっかり消えていた。
「ここが、呪詛生物の痕跡があった場所か……」
みんなが息を呑んで周囲を見渡す。辺りはひっそりと静まり返り、何も存在しないかのように思えた。
あるいはこの世ならざる存在が現世の者を遠ざけているのだろうか。
さすがの真司も少し不安そうに言った。
「これが本当に呪詛生物の影響だとしたら、まだ痕跡が残っているかもしれない。それに、このビル周辺には怪しい気配が漂っている」
辺りを伺っていた怜が冷静に言う。
「気配があるのなら、見逃すわけにはいかないわ。私たちができることは、できる限りの情報を集めて、神楽の復活を防ぐこと。どんな小さな手がかりでも無駄にはできない」
遥がその言葉を引き継ぐように、明るく言った。
「じゃあ、行こうか! みんなで協力して調べればきっと何か分かるよ」
その言葉に一同頷いて、意を決してビルのある敷地へと踏み込んだ。
ここにあの怪物がまたいるのだろうか。何の姿もない空虚なビルの窓を見上げる結衣の隣で遥と怜が声を掛けてきた。
「結衣ちゃんは凄いね。ここまで来てまるでびびってる様子がないもん」
「謝るわ。あなたはどこかで逃げると思ってた。あなたは本当に強いのね」
「そ……そんなことないよ。みんながいるから恐くないだけ」
それは本心でもあったが、遥と怜には冗談だと思われたようで軽く笑われてしまった。
やがて薄暗い内部に足を踏み入れると、すぐに湿気とカビの匂いが鼻をつく。
床は不安定で、歩くたびに軋む音が鳴った。
どこかで、かすかな風の音が聞こえるが、人の気配は一切ない。
「気をつけろよ、結衣。呪詛生物は何でも食らう。君は自信があるかもしれないが初心者なんだ。襲われたらすぐに僕達を頼れ」
真司の警告に、結衣は気を引き締めた。
彼らは呪いの怪物とも戦った経験者なのだろうか。結衣の知るより前から研究をしていたようだし、この町に呪いも昔からあるから経験があるのかもしれない。
「うん、分かってる」
部室での緊張がまだ残っているのか、結衣の肩の力は抜けなかった。
だけど、今はもう後戻りはできない。
自分の知らない世界に踏み込んで、少しでも多くを知りたいと思ったから。
「この階には何も無いようだな」
「上に行きましょう。人のいない廃墟は呪詛生物の痕跡が残りやすい場所よ。見落とさないように」
結衣は心の中で深く息を吸い、気を取り直した。
ここで何かを見つけなければならない。呪詛生物の痕跡、あるいはそこから神楽の呪いに繋がる一端を――。
「あそこに何かある!」
その時、遥が窓際に近づき、壁にかかる不自然な影を指さした。
「これ、見て! 何か書いてある!」
「文字では無さそうね。図形かしら」
「何らかの意味のある呪いの陣なのかもしれない」
結衣もそこに駆け寄ると、薄暗い壁に、何かが刻まれているのを見つけた。
それは文字でも、図でもなく、奇妙な模様だった。
「これは……」
神楽の使っていた術式で似たようなのを見た気がする。
結衣はしばらくじっと見つめると、ようやく口を開いた。
「呪紋……?」
遥が頷きながら言った。
「これ、神楽に関係しているかもしれない。もしかしたら、呪詛生物が現れる場所にこれを刻んで、呪いの力を呼び寄せているのかも」
神楽がここに来て何かしたとは結衣には思えなかったが。
真司はしばらく黙っていたが、低い声で言った。
「それに、あちこちに黒く染まった場所がある。これは呪詛生物が通った跡かもしれない。ひょっとしたら、まだこの廃ビルの中にいるのか……」
その言葉に結衣はさらに深く、廊下の暗がりの奥を見つめた。
(呪詛生物がまだここにいる可能性がある……)
その存在をまだ感じる事は出来なかったが。
「さっさと探して、倒しましょう」
怜が引き締まった顔で言う。
「私たちの目的は、神楽の復活を防ぐこと。呪詛生物を倒すのも、その為の手段よ」
結衣はここに呪いの痕跡があると改めて感じた。
今はここでしっかりと足を踏みしめ、目の前にある真実を掴まなければならない。
少しずつ足を進めて行くと、廃ビルの奥から奇妙な音が聞こえてきた。
何かが動いているようだ。
一同は、その音がどこから来ているのかを探るべく、さらに深く進んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私の守護霊さん『ラクロス編』
Masa&G
キャラ文芸
本作は、本編『私の守護霊さん』の番外編です。
本編では描ききれなかった「ラクロス編」を、単独でも読める形でお届けします。番外編だけでも内容はわかりますが、本編を先に読んでいただくと、より物語に入り込みやすくなると思います。
「絶対にレギュラーを取って、東京代表に行きたい――」
そんな想いを胸に、宮司彩音は日々ラクロスの練習に明け暮れている。
同じポジションには、絶対的エースアタッカー・梶原真夏。埋まらない実力差に折れそうになる彩音のそばには、今日も無言の相棒・守護霊さんがいた。
守護霊さんの全力バックアップのもと、彩音の“レギュラー奪取&東京代表への挑戦”が始まる──。
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる