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第二章
第7話 軍の基地へ
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そして、当日。三人は軍の車で施設内を移動していた。さすがの慎介でも軍の基地に入るのは初めてで妙にそわそわしてしまう。
博士が同行を頼んだのも分かろうというものだった。その博士は助手席に座ってじっと軍の施設を観察しているようだった。
慎介の隣の後部座席で卑弥呼は子供のようにはしゃいでいた。落ち着けと言っても無駄だろう。
「大和にあってもこのような場所があるとは。ここもゆくゆくはわらわの邪馬台国の一部となるのじゃな」
「いや、ならないからな」
ちなみに美沙は置いてきた。彼女には今日も部活があるから。朝、出かける前に妹は悔しそうにしていた。
「みんなでお出かけするのに何であたしは部活に入ってしまったんだろう……糞ったれな先輩に呪いあれ!」
「そう言うなよ。やる気のある先輩がいていいじゃないか。みんなお前に期待しているんだぜ。俺なんて誰も期待してくれないし、誰も頑張れって応援してくれないから、トレーニングとか自分で考えて頑張るしかないんだぞ」
「かもしれないけど。うう……お土産お願いね」
「ああ、お互いに頑張ろうな」
そんなわけで美沙を学校へとやって、慎介と卑弥呼と博士は今軍の施設内を移動している。ロボットに乗ったことのある卑弥呼でも車に興味を示したようだ。
車は古代でも形を代えてあっただろうから、逆に違いを実感したのかもしれない。
「この車は随分と速いのう。牛にも引かせんとはこれもロボットの一部なのか?」
「お前の思うロボットとは少し違うかもしれないがこれは軍用車だな。普通の車よりも上等だし、卑弥呼の時代の車よりも速いだろうさ」
「ふむ、それに揺れも小さいし道も綺麗に整えておる。わらわの時代に戻ったら造らせるとしよう」
「勝手に造んな。歴史が変わる」
「まあ、これも博士がいなければ造れんか」
慎介と卑弥呼がどうでもいい日常会話をしていると運転手の仮面の男が博士に話しかけた。
軍人と博士の話に興味のある二人はすぐに黙って耳を傾ける。
「それにしても今日はよく来てくださいましたね。あなたはもう来ないと軍の間では話題になっていましたよ」
「私も何も見ずに断るのはよくないと思ったのです。軍では宇宙に行く設備を開発していると聞きました」
「ほう、そこまでお聞きになられましたか。エイリアンは宇宙から来ますからね。防衛するだけでなく、そうした装備もこれからは必要となります。ただこれはまだ極秘な計画なもので、お連れの方々ともどもくれぐれも内密に願いますよ」
「はい、黙っておきます」
「卑弥呼も黙っとけよ」
「ふむ、弱みは手放さず握っておくこととするか」
そうこう話しているうちに車は基地の奥の建物の入口へと入り、仮面の男はそこで俺達を下ろした。
「ここからは現場の責任者がご案内しますから、どうぞごゆっくり」
男はそれだけ伝えて密かに笑うと車を運転して去っていった。軍人にしては仮面を付けているし妙に怪しい男だったが、博士と卑弥呼は気にしていない様子だった。
「ここが軍の基地か。初めて見るが大きな施設だな」
「なあ、これから何が見れると思う?」
「さあ、何か宇宙的な物じゃないか?」
「今日は勉強していくとしよう」
博士がやる気だ。最近は学校の単位ばかり気にしていたが、やはりロボットに興味があるようだ。
あまり羽目を外さないように願いたいところだが、休日の今日ぐらいはいいだろう。
慎介達がそう待つこともなく、責任者とかいう男はすぐにやってきた。軍服に身を包んだ髭の似合うダンディな長身の男だった。
「初めまして、私がこの基地で建造中の宇宙戦艦の艦長を務めます八木沼たかしと申します。本日はようこそおいでくださいました」
「宇宙戦艦!!」
その言葉に俺も博士もさすがに驚いてしまう。卑弥呼だけがピンと来なかったのか、小声で慎介に話しかけてきた。
「宇宙戦艦とはなんじゃ?」
「宇宙を飛ぶ船だよ。イスカンダルとか行ける奴」
「はっは、船が空を飛ぶわけ」
「城を飛ばした奴が何を言うか」
俺達が小声で小突きあっていると、艦長が何かを伺うように辺りを見回した。
「一人足りないな。今日はもう一人来る予定になっていたはずだが……」
「まさか美沙が頭数に?」
一瞬そう思ったが違っていたようだ。艦長の待ち人はすぐにやってきた。
「お、来たようだな」
「ん、誰が……うわっ、まぶしい!」
慎介がそう思ったのは当然だった。ライトが直接照らしていたからだ。
その光の中心に慎介の知らない美少女が立っていた。見慣れない他校の制服に身を包み、長く輝くような髪が風に靡いている。と思ったら同じ制服を着た彼女の連れと思われる二人が装置で風とライトを起こしていた。
中心に立つ少女は堂々とこちらに歩いてくると、綺麗に慣れたような挨拶をした。
「待たせましたね。私は流聖女学園のクイーン、白金星河。いよいよこの私が暗く寂しい宇宙に住まうエイリアン達に愛の火を灯す時が来たのです!」
「ん?」
「愛?」
「クイーンとは何じゃ?」
「女王ってこと」
「なんじゃとー! 女王はわらわじゃ!」
地団駄を踏む卑弥呼の前を颯爽と通り過ぎ、クイーンを自称する少女は艦長の前に立って挨拶した。
「私に誘いの声をいただけるなんてあなたは見る目がおありですね。必ずや私の歌で宇宙に愛を伝え、エイリアンとの戦争を終結に導いてみせますわ!」
「いや、君を選んだのはアイドルではなく……おっと、もう時間だな。船へ案内しよう。君達もこれからの事はそれから考えてもらいたい」
そう言えば慎介と卑弥呼は見物に来ただけのつもりだったが、博士にとってはこれが就職に繋がるのかもしれないのだ。
今は絶対に学校に行くと誇示している博士だが、その考えが変わるような物は見られるのだろうか。
艦長の案内で慎介達は船を身にいく事になった。果たしてどのような宇宙戦艦が見られるのだろうか。
慎介の心は柄にもなく高鳴っていた。
博士が同行を頼んだのも分かろうというものだった。その博士は助手席に座ってじっと軍の施設を観察しているようだった。
慎介の隣の後部座席で卑弥呼は子供のようにはしゃいでいた。落ち着けと言っても無駄だろう。
「大和にあってもこのような場所があるとは。ここもゆくゆくはわらわの邪馬台国の一部となるのじゃな」
「いや、ならないからな」
ちなみに美沙は置いてきた。彼女には今日も部活があるから。朝、出かける前に妹は悔しそうにしていた。
「みんなでお出かけするのに何であたしは部活に入ってしまったんだろう……糞ったれな先輩に呪いあれ!」
「そう言うなよ。やる気のある先輩がいていいじゃないか。みんなお前に期待しているんだぜ。俺なんて誰も期待してくれないし、誰も頑張れって応援してくれないから、トレーニングとか自分で考えて頑張るしかないんだぞ」
「かもしれないけど。うう……お土産お願いね」
「ああ、お互いに頑張ろうな」
そんなわけで美沙を学校へとやって、慎介と卑弥呼と博士は今軍の施設内を移動している。ロボットに乗ったことのある卑弥呼でも車に興味を示したようだ。
車は古代でも形を代えてあっただろうから、逆に違いを実感したのかもしれない。
「この車は随分と速いのう。牛にも引かせんとはこれもロボットの一部なのか?」
「お前の思うロボットとは少し違うかもしれないがこれは軍用車だな。普通の車よりも上等だし、卑弥呼の時代の車よりも速いだろうさ」
「ふむ、それに揺れも小さいし道も綺麗に整えておる。わらわの時代に戻ったら造らせるとしよう」
「勝手に造んな。歴史が変わる」
「まあ、これも博士がいなければ造れんか」
慎介と卑弥呼がどうでもいい日常会話をしていると運転手の仮面の男が博士に話しかけた。
軍人と博士の話に興味のある二人はすぐに黙って耳を傾ける。
「それにしても今日はよく来てくださいましたね。あなたはもう来ないと軍の間では話題になっていましたよ」
「私も何も見ずに断るのはよくないと思ったのです。軍では宇宙に行く設備を開発していると聞きました」
「ほう、そこまでお聞きになられましたか。エイリアンは宇宙から来ますからね。防衛するだけでなく、そうした装備もこれからは必要となります。ただこれはまだ極秘な計画なもので、お連れの方々ともどもくれぐれも内密に願いますよ」
「はい、黙っておきます」
「卑弥呼も黙っとけよ」
「ふむ、弱みは手放さず握っておくこととするか」
そうこう話しているうちに車は基地の奥の建物の入口へと入り、仮面の男はそこで俺達を下ろした。
「ここからは現場の責任者がご案内しますから、どうぞごゆっくり」
男はそれだけ伝えて密かに笑うと車を運転して去っていった。軍人にしては仮面を付けているし妙に怪しい男だったが、博士と卑弥呼は気にしていない様子だった。
「ここが軍の基地か。初めて見るが大きな施設だな」
「なあ、これから何が見れると思う?」
「さあ、何か宇宙的な物じゃないか?」
「今日は勉強していくとしよう」
博士がやる気だ。最近は学校の単位ばかり気にしていたが、やはりロボットに興味があるようだ。
あまり羽目を外さないように願いたいところだが、休日の今日ぐらいはいいだろう。
慎介達がそう待つこともなく、責任者とかいう男はすぐにやってきた。軍服に身を包んだ髭の似合うダンディな長身の男だった。
「初めまして、私がこの基地で建造中の宇宙戦艦の艦長を務めます八木沼たかしと申します。本日はようこそおいでくださいました」
「宇宙戦艦!!」
その言葉に俺も博士もさすがに驚いてしまう。卑弥呼だけがピンと来なかったのか、小声で慎介に話しかけてきた。
「宇宙戦艦とはなんじゃ?」
「宇宙を飛ぶ船だよ。イスカンダルとか行ける奴」
「はっは、船が空を飛ぶわけ」
「城を飛ばした奴が何を言うか」
俺達が小声で小突きあっていると、艦長が何かを伺うように辺りを見回した。
「一人足りないな。今日はもう一人来る予定になっていたはずだが……」
「まさか美沙が頭数に?」
一瞬そう思ったが違っていたようだ。艦長の待ち人はすぐにやってきた。
「お、来たようだな」
「ん、誰が……うわっ、まぶしい!」
慎介がそう思ったのは当然だった。ライトが直接照らしていたからだ。
その光の中心に慎介の知らない美少女が立っていた。見慣れない他校の制服に身を包み、長く輝くような髪が風に靡いている。と思ったら同じ制服を着た彼女の連れと思われる二人が装置で風とライトを起こしていた。
中心に立つ少女は堂々とこちらに歩いてくると、綺麗に慣れたような挨拶をした。
「待たせましたね。私は流聖女学園のクイーン、白金星河。いよいよこの私が暗く寂しい宇宙に住まうエイリアン達に愛の火を灯す時が来たのです!」
「ん?」
「愛?」
「クイーンとは何じゃ?」
「女王ってこと」
「なんじゃとー! 女王はわらわじゃ!」
地団駄を踏む卑弥呼の前を颯爽と通り過ぎ、クイーンを自称する少女は艦長の前に立って挨拶した。
「私に誘いの声をいただけるなんてあなたは見る目がおありですね。必ずや私の歌で宇宙に愛を伝え、エイリアンとの戦争を終結に導いてみせますわ!」
「いや、君を選んだのはアイドルではなく……おっと、もう時間だな。船へ案内しよう。君達もこれからの事はそれから考えてもらいたい」
そう言えば慎介と卑弥呼は見物に来ただけのつもりだったが、博士にとってはこれが就職に繋がるのかもしれないのだ。
今は絶対に学校に行くと誇示している博士だが、その考えが変わるような物は見られるのだろうか。
艦長の案内で慎介達は船を身にいく事になった。果たしてどのような宇宙戦艦が見られるのだろうか。
慎介の心は柄にもなく高鳴っていた。
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