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第5話
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聖女が主催するお茶会は、学園の中でも限られた者だけが出席できる重要なイベントだ。
アリアは今まで招待状を送られても無視していたが、あの事件の一件以来強制的に参加させられる羽目になってしまった。
「嫌よ。何で私があんな女の主催するパーティーになんて……」
気は乗らなかったが、断ると処刑なので選択肢はなかった。聞くところによればサレクスはいつでも処刑できるようにギロチンを修理しているという。
「なら、せいぜいあのお人好しを利用してやろうじゃない」
決意を固めて出向いていくと、リーリスは「よく来てくれました。これからみんなで関係を深めていきましょう」と喜び、周りは「聖女様がアリアに手を差し伸べてくれるなんて!」と感激の声を上げていた。
しかし、アリアにとって、それは最も苦手な場だった。
「何こいつら、何でこんなにキラキラしているの。私とは住む世界が違う人種だわ……」
アリアは光のオーラに当てられて思いっきり気後れしながらも、お茶会の広間へと足を踏み入れた。周囲は聖女の友達らしい、明るく華やかな雰囲気を持つお嬢様たちが集まり、すでにお茶を楽しんでいる。
「アリアさん、どうぞこちらの席へ」
リーリスが優雅に手を差し出し、にっこりと微笑む。それに答えるようにアリアもおどおどと歩み寄った。
お茶会の席に座ると、すぐに彼女は周囲の女性たちの視線を感じた。それはまるで「見て、これが悪役令嬢よ」「彼女が何をやらかすか見ものね」と言わんばかりの冷ややかな目線だったらまだ良かったのだが、キラキラとした綺麗な眼差しだった。
「うっ……そんな目で見ないで。眩しい……」
そして、会話が始まると、リーリスを中心に話が広がり、陽気な笑い声と軽快な会話が飛び交う中、アリアはただ一人、場に馴染めずにいる。
「なんでこんなことになったんだろう。お茶だけ飲んで帰りたい……」
アリアは心の中で祈りつつも、どうしても輪の中に入れずにいた。聖女が他の女子たちと何を話しても、どこかしら遠い世界の他人事のように感じてしまい、結局は会話に加わらずじまいだ。
その時、リーリスがふとアリアに話しかけた。
「アリアさん、あなたはもっと自分を出してみて。きっと楽しくなるから」
その言葉に、アリアは一瞬、言葉を失った。彼女は確かに善意で言っているのだろう。しかし、アリアにとってはそれがとても重く感じられる。
「自分を出す? ……私の夢は世界征服だとか?」
消えそうな声で呟きながらも、アリアは頑張って微笑みを浮かべた。
その後、エリオットが中庭のベンチで心配しながら待っていると、アリアがふらつきながら戻ってきた。
「疲れた……私に光の世界は眩しすぎる……」
アリアはエリオットの隣に腰かけると、頭を落としてうなだれた。陽気な女子たちの会話に馴染めず、強い力で笑顔を作り続けるうちに、どっと疲れが出てしまったのだ。
「私は滅びないわ。この世に邪悪の心がある限り、必ず蘇る。この世界を闇に閉ざしてみせる……」
そんな彼女をエリオットは心配そうに見ている。
「アリア、大丈夫か?」
エリオットの優しい声に、アリアは少しだけ安心した。彼は他の誰よりも自分の気持ちを理解してくれる存在だったから、つい本音を漏らしてしまう。
「無理だって。こんな関係、どうしていいかわからない。私は悪役なのよ」
「でも、アリアは頑張ってるじゃないか」
エリオットは、アリアが人と関わりたくない性格だってことを知っている。そんな彼女が、お茶会に行くこと自体、彼にとっては驚きだった。
「アリア、負けないで。頑張ろうとしてる君を、俺は誇りに思うから」
アリアはエリオットの言葉に、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。しかし、その瞬間、彼女の心の中で「悪役令嬢」としての立場が蘇った。
「空気のくせに暖かい言葉をかけないで」
「今日は暖かいんだからいいじゃないか」
「そうね。今は枕が欲しいわ」
アリアはそう呟くとそっとエリオットの肩に身を預けて眠ってしまった。彼女は、今までどれほどの困難に立ち向かってきただろう。敵を倒し、陰謀を巡らせ、どんな時でも強さを求めるのが自分の役目だと信じているようだった。
でも、今、彼女の周りの人々と過ごす中で、アリアはふと気づいた。彼女が本当に求めていたのは、勝利や権力ではなく、もっと単純なものだった。それは「友達」だったり、「理解してくれる人」だったり。
「俺でも君の助けになれるかな?」
エリオットは近くで彼女を見守りながら、静かに呟いた。
「頑張れ、アリア」
その言葉に、彼女は静かに笑みを零した。
アリアは今まで招待状を送られても無視していたが、あの事件の一件以来強制的に参加させられる羽目になってしまった。
「嫌よ。何で私があんな女の主催するパーティーになんて……」
気は乗らなかったが、断ると処刑なので選択肢はなかった。聞くところによればサレクスはいつでも処刑できるようにギロチンを修理しているという。
「なら、せいぜいあのお人好しを利用してやろうじゃない」
決意を固めて出向いていくと、リーリスは「よく来てくれました。これからみんなで関係を深めていきましょう」と喜び、周りは「聖女様がアリアに手を差し伸べてくれるなんて!」と感激の声を上げていた。
しかし、アリアにとって、それは最も苦手な場だった。
「何こいつら、何でこんなにキラキラしているの。私とは住む世界が違う人種だわ……」
アリアは光のオーラに当てられて思いっきり気後れしながらも、お茶会の広間へと足を踏み入れた。周囲は聖女の友達らしい、明るく華やかな雰囲気を持つお嬢様たちが集まり、すでにお茶を楽しんでいる。
「アリアさん、どうぞこちらの席へ」
リーリスが優雅に手を差し出し、にっこりと微笑む。それに答えるようにアリアもおどおどと歩み寄った。
お茶会の席に座ると、すぐに彼女は周囲の女性たちの視線を感じた。それはまるで「見て、これが悪役令嬢よ」「彼女が何をやらかすか見ものね」と言わんばかりの冷ややかな目線だったらまだ良かったのだが、キラキラとした綺麗な眼差しだった。
「うっ……そんな目で見ないで。眩しい……」
そして、会話が始まると、リーリスを中心に話が広がり、陽気な笑い声と軽快な会話が飛び交う中、アリアはただ一人、場に馴染めずにいる。
「なんでこんなことになったんだろう。お茶だけ飲んで帰りたい……」
アリアは心の中で祈りつつも、どうしても輪の中に入れずにいた。聖女が他の女子たちと何を話しても、どこかしら遠い世界の他人事のように感じてしまい、結局は会話に加わらずじまいだ。
その時、リーリスがふとアリアに話しかけた。
「アリアさん、あなたはもっと自分を出してみて。きっと楽しくなるから」
その言葉に、アリアは一瞬、言葉を失った。彼女は確かに善意で言っているのだろう。しかし、アリアにとってはそれがとても重く感じられる。
「自分を出す? ……私の夢は世界征服だとか?」
消えそうな声で呟きながらも、アリアは頑張って微笑みを浮かべた。
その後、エリオットが中庭のベンチで心配しながら待っていると、アリアがふらつきながら戻ってきた。
「疲れた……私に光の世界は眩しすぎる……」
アリアはエリオットの隣に腰かけると、頭を落としてうなだれた。陽気な女子たちの会話に馴染めず、強い力で笑顔を作り続けるうちに、どっと疲れが出てしまったのだ。
「私は滅びないわ。この世に邪悪の心がある限り、必ず蘇る。この世界を闇に閉ざしてみせる……」
そんな彼女をエリオットは心配そうに見ている。
「アリア、大丈夫か?」
エリオットの優しい声に、アリアは少しだけ安心した。彼は他の誰よりも自分の気持ちを理解してくれる存在だったから、つい本音を漏らしてしまう。
「無理だって。こんな関係、どうしていいかわからない。私は悪役なのよ」
「でも、アリアは頑張ってるじゃないか」
エリオットは、アリアが人と関わりたくない性格だってことを知っている。そんな彼女が、お茶会に行くこと自体、彼にとっては驚きだった。
「アリア、負けないで。頑張ろうとしてる君を、俺は誇りに思うから」
アリアはエリオットの言葉に、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。しかし、その瞬間、彼女の心の中で「悪役令嬢」としての立場が蘇った。
「空気のくせに暖かい言葉をかけないで」
「今日は暖かいんだからいいじゃないか」
「そうね。今は枕が欲しいわ」
アリアはそう呟くとそっとエリオットの肩に身を預けて眠ってしまった。彼女は、今までどれほどの困難に立ち向かってきただろう。敵を倒し、陰謀を巡らせ、どんな時でも強さを求めるのが自分の役目だと信じているようだった。
でも、今、彼女の周りの人々と過ごす中で、アリアはふと気づいた。彼女が本当に求めていたのは、勝利や権力ではなく、もっと単純なものだった。それは「友達」だったり、「理解してくれる人」だったり。
「俺でも君の助けになれるかな?」
エリオットは近くで彼女を見守りながら、静かに呟いた。
「頑張れ、アリア」
その言葉に、彼女は静かに笑みを零した。
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