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第二章 真理亜と古の王サラマンディア
第29話 乱入者達
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校庭の野次馬達がざわめき出す。真理亜は油断することなく、ヴァンパイアが吹っ飛んでいって消えた暗闇を睨みつける。
これぐらいで終わるはずがない。少女の憶測に答えるように、ヴァンパイアはすぐに戻ってきて目の前に降り立った。
「今のは良かった。でも、わたしを倒すには至らない」
ひかりにとっては予想外の力に押されてしまったが、これぐらいで倒されるほど弱者では無かった。
これぐらいの苦境ならもう辰也やフェニックスの時に受けた。もう一人では何も出来ない能無しだと思われるのは御免だった。
ヴァンパイアは王者だともうみんなの前で発表してしまっている。期待を裏切るわけにもいかない。その発表をさせた使い魔のクロは夜空から邪魔にならないように戦いを見下ろしている。
真理亜は十字架はもう激しい激突で痛んで使えないと悟ったのかそれらを宙に開いた黒い穴の中にしまい、また別の武器を取り出してきた。
「さすがにタフね。まあ、これぐらいで無ければ、お兄ちゃんが苦労するはずもないか」
真理亜が今度出してきたのは鎖だった。それを手に持って垂らす。ひかりの知らない武器ではなかった。それはサハギンを捕まえていたあの鎖だった。
最初に出してきたガトリングガンより地味になってきている気がするが、油断は出来ない。ひかりは冷静に相手を見る。
「それでわたしも捕まえるつもり? あのサハギンのように」
「その通りよ。でも、今度はそれだけでは済まさないわ」
鎖を振り回しながら真理亜は続けて物騒な事を言ってきた。
「この封魔の鎖であなたを縛って心臓に杭を打ち込んであげる。ヴァンパイアを滅ぼすにはやっぱりそれしか無いみたいだから」
「心臓に杭は勘弁して欲しいかな」
想像するだけで痛そうでひかりはちょっと震えてしまった。王者として態度には出さないようにしたが。
真理亜は不敵に笑った。顔が可愛いだけに怖いです。
「今までの戦いで分かったことがあるわ。ヴァンパイアは決して無敵なんかじゃない。当たればダメージを受けるし、危ない攻撃は避けていく。必要なのは決定打よ!」
「紫門と同じことを!」
やはり兄妹は通じ合うものなのだろうか。決定打という言葉に良い思い出は無い。ひかりは自分の唇をちょっと気にして、すぐに真理亜に注意を戻した。
ハンターの思い通りにさせるわけにはいかない。ひかりは相手を警戒して慎重に構える。真理亜の振り回す鎖の回転速度が上がった。
再びの激突の予感に周囲の野次馬達は息を呑んで注視するが、双方が動く前に遠くの方から騒ぎの音が上がった。
校庭より外、町の方だ。
「何!?」
「隙ありよ!」
ヴァンパイアがよそ見したのを真理亜は見逃さなかった。投げた鎖がひかりの持つ剣に巻き付いた。
「捕まえたわ!」
「はあ、放置するわけにもいかないか」
魔物が暴れているなら王の責任だ。
ひかりはため息を吐き、剣を黒い炎に戻して消した。
「ああ!!」
絡みついた鎖が地面に落ちて真理亜はびっくりしていた。
対戦者の少女に構わず、ひかりは翼を広げ空に舞う。上空にいた使い魔のところまで飛んだ。
「クロ、何かあったの?」
「ここらでは見えませんね。ただ騒ぎはあちらの方でまだ続いているようです」
ひかりはクロの言う方角へと目を向ける。何か大きな力を持った集団が暴れているような気配を感じる。
もし魔物達が暴れているなら、ひかりは王として見過ごすわけにはいかなかった。
今でこそ町の人達は町おこしに利用しようとかヴァンパイアを好意的に見ているが、悪い話を立てられたくはないし、自分の見ていない場所で誰かに好き勝手されるわけにもいかなかった。
「委員長も王もやることは大変ね」
現実にぼやき、ひかりは地上にいる真理亜を見下ろす。そして、王としての威厳を持って言った。
「邪魔が入ったようだ。勝負は預けるぞ!」
戦いを治めるにはちょうどいい頃合いだ。これだけ戦えば挑戦を受けた義理も果たせただろう。
ひかりはせいぜい漫画で見た強いライバルを演じて飛び去ることにした。
去っていくヴァンパイアを真理亜は追うことができなかった。
「くっ、まさか逃げるだなんて……」
戦いが終わって少女の足から力が抜けてしまっていた。
地面に膝をついて肩を抱きしめて身を震わせてしまって、真理亜は今頃になって自分がどんな強大な敵と戦っていたのかを実感してしまった。
「あれがヴァンパイア……お兄ちゃんの……いえ、あたし達の先祖が戦ってきた敵……」
校庭にしゃがみこんでしまった。そんな少女の肩に優しく置かれた手があった。振り返ると兄がいた。
「よくやったな、真理亜。後は俺に任せておけ」
「うん」
「俺が先に行くぜ!」
「待てよ!」
真理亜は遠い眼差しで走っていく兄と、ついでに狼牙の背中を見送った。
異変は生徒会室から見ていた辰也も感じていた。
「何やら勝手な奴らが町で暴れ出したようだな」
「うん、これは見たことのない魔物だね。どこから出てきたんだろう」
ハーピーの千里眼の能力で箒は辰也にも見えない遠くの物を見ていた。辰也は訊いた。
「どんな奴らだ?」
「うーーーーんと……骨?」
「…………」
箒の能力に期待したのが間違いだった。いじわるで誤魔化しているのではない。箒の性格は大雑把なのだ。
昔から知っている辰也はため息を吐いてから副会長の少女に言った。
「俺が行ってくる。お前はここから校庭にいる生徒達に被害が出ないか見張っていろ」
「えー? あたし留守番?」
「ここを野放しにするわけにはいかんだろう。何か問題を起こしたら許さんからな」
「へいへい、後の事はどうか頼りになるあたしにお任せあれ」
いい加減に見えて箒が頼りになることも知っている。辰也は部屋から屋上に出て、体を竜化させて竜人となって飛び立った。
これぐらいで終わるはずがない。少女の憶測に答えるように、ヴァンパイアはすぐに戻ってきて目の前に降り立った。
「今のは良かった。でも、わたしを倒すには至らない」
ひかりにとっては予想外の力に押されてしまったが、これぐらいで倒されるほど弱者では無かった。
これぐらいの苦境ならもう辰也やフェニックスの時に受けた。もう一人では何も出来ない能無しだと思われるのは御免だった。
ヴァンパイアは王者だともうみんなの前で発表してしまっている。期待を裏切るわけにもいかない。その発表をさせた使い魔のクロは夜空から邪魔にならないように戦いを見下ろしている。
真理亜は十字架はもう激しい激突で痛んで使えないと悟ったのかそれらを宙に開いた黒い穴の中にしまい、また別の武器を取り出してきた。
「さすがにタフね。まあ、これぐらいで無ければ、お兄ちゃんが苦労するはずもないか」
真理亜が今度出してきたのは鎖だった。それを手に持って垂らす。ひかりの知らない武器ではなかった。それはサハギンを捕まえていたあの鎖だった。
最初に出してきたガトリングガンより地味になってきている気がするが、油断は出来ない。ひかりは冷静に相手を見る。
「それでわたしも捕まえるつもり? あのサハギンのように」
「その通りよ。でも、今度はそれだけでは済まさないわ」
鎖を振り回しながら真理亜は続けて物騒な事を言ってきた。
「この封魔の鎖であなたを縛って心臓に杭を打ち込んであげる。ヴァンパイアを滅ぼすにはやっぱりそれしか無いみたいだから」
「心臓に杭は勘弁して欲しいかな」
想像するだけで痛そうでひかりはちょっと震えてしまった。王者として態度には出さないようにしたが。
真理亜は不敵に笑った。顔が可愛いだけに怖いです。
「今までの戦いで分かったことがあるわ。ヴァンパイアは決して無敵なんかじゃない。当たればダメージを受けるし、危ない攻撃は避けていく。必要なのは決定打よ!」
「紫門と同じことを!」
やはり兄妹は通じ合うものなのだろうか。決定打という言葉に良い思い出は無い。ひかりは自分の唇をちょっと気にして、すぐに真理亜に注意を戻した。
ハンターの思い通りにさせるわけにはいかない。ひかりは相手を警戒して慎重に構える。真理亜の振り回す鎖の回転速度が上がった。
再びの激突の予感に周囲の野次馬達は息を呑んで注視するが、双方が動く前に遠くの方から騒ぎの音が上がった。
校庭より外、町の方だ。
「何!?」
「隙ありよ!」
ヴァンパイアがよそ見したのを真理亜は見逃さなかった。投げた鎖がひかりの持つ剣に巻き付いた。
「捕まえたわ!」
「はあ、放置するわけにもいかないか」
魔物が暴れているなら王の責任だ。
ひかりはため息を吐き、剣を黒い炎に戻して消した。
「ああ!!」
絡みついた鎖が地面に落ちて真理亜はびっくりしていた。
対戦者の少女に構わず、ひかりは翼を広げ空に舞う。上空にいた使い魔のところまで飛んだ。
「クロ、何かあったの?」
「ここらでは見えませんね。ただ騒ぎはあちらの方でまだ続いているようです」
ひかりはクロの言う方角へと目を向ける。何か大きな力を持った集団が暴れているような気配を感じる。
もし魔物達が暴れているなら、ひかりは王として見過ごすわけにはいかなかった。
今でこそ町の人達は町おこしに利用しようとかヴァンパイアを好意的に見ているが、悪い話を立てられたくはないし、自分の見ていない場所で誰かに好き勝手されるわけにもいかなかった。
「委員長も王もやることは大変ね」
現実にぼやき、ひかりは地上にいる真理亜を見下ろす。そして、王としての威厳を持って言った。
「邪魔が入ったようだ。勝負は預けるぞ!」
戦いを治めるにはちょうどいい頃合いだ。これだけ戦えば挑戦を受けた義理も果たせただろう。
ひかりはせいぜい漫画で見た強いライバルを演じて飛び去ることにした。
去っていくヴァンパイアを真理亜は追うことができなかった。
「くっ、まさか逃げるだなんて……」
戦いが終わって少女の足から力が抜けてしまっていた。
地面に膝をついて肩を抱きしめて身を震わせてしまって、真理亜は今頃になって自分がどんな強大な敵と戦っていたのかを実感してしまった。
「あれがヴァンパイア……お兄ちゃんの……いえ、あたし達の先祖が戦ってきた敵……」
校庭にしゃがみこんでしまった。そんな少女の肩に優しく置かれた手があった。振り返ると兄がいた。
「よくやったな、真理亜。後は俺に任せておけ」
「うん」
「俺が先に行くぜ!」
「待てよ!」
真理亜は遠い眼差しで走っていく兄と、ついでに狼牙の背中を見送った。
異変は生徒会室から見ていた辰也も感じていた。
「何やら勝手な奴らが町で暴れ出したようだな」
「うん、これは見たことのない魔物だね。どこから出てきたんだろう」
ハーピーの千里眼の能力で箒は辰也にも見えない遠くの物を見ていた。辰也は訊いた。
「どんな奴らだ?」
「うーーーーんと……骨?」
「…………」
箒の能力に期待したのが間違いだった。いじわるで誤魔化しているのではない。箒の性格は大雑把なのだ。
昔から知っている辰也はため息を吐いてから副会長の少女に言った。
「俺が行ってくる。お前はここから校庭にいる生徒達に被害が出ないか見張っていろ」
「えー? あたし留守番?」
「ここを野放しにするわけにはいかんだろう。何か問題を起こしたら許さんからな」
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