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第二章 真理亜と古の王サラマンディア
第36話 先制攻撃
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ひかりは夜空を飛んでいく。少し前まで綺麗に星の瞬いていた上の空にはオーロラのような光が揺らめき、地上にもそれに呼応するかのように不思議で幻想的な光が揺らめいている。
いつもなら魔物の出る夜には霧が出る物だったが、今ではそれはほとんどが光に抑えつけられているかのようだった。
そして、ひかりの目指す前方。町の方角からは明らかに今までには無かった異質と感じられるような空気があった。
向かいながら、ひかりは隣に飛ぶクロに訊ねた。
「これはサラマンディアの仕業なの?」
「おそらくはそうでしょう。先代の懸念されていたことが現れてしまいましたね」
「構わない。わたしの町で好きにはさせない!」
祖父から話を聞いておきながら、今まで何の手がかりも得られなかったことを悔やんでいる場合ではない。これから挽回するだけだ。
ヴァンパイアとして。この町の魔の王者として。
ひかりは使い魔のクロとともに飛んでいく。すると、そこに近づいてきた二人の姿があった。敵では無かった。よく知った味方であることはすぐに分かった。
「ひかり、またろくでもない奴が町を荒らしに来たようだな」
「この前の骨トカゲの親分なの?」
竜人の姿に変身した辰也とハーピーの姿に変身した箒だ。箒は王を決める戦いの時には割と乱暴な言葉を使っていたけれど、今は素だった。
その理由を箒は相手に舐められないためだよと語り、辰也はこいつは気ままな奴なんだと評していた。ひかりは苦笑するだけだった。世の中には色んな人がいるものだ。ひかり自身だって似たようなものかもしれない。
物語で思い描いたチート能力者として、上から目線で振る舞った。
今は過去を思い出している場合ではない。ひかりは合流した二人に、今の自分の知っていることを話した。聞き終えて辰也は不愉快そうに鼻を鳴らした。
「くだらんことだ。新しい王が決まったばかりで今頃になって古い王がノコノコと現れるとはな」
「ひかりちゃんの王座がもう取られちゃうかもね」
「させませんよ。わたしの町で好き勝手なことはさせない!」
「言うねえ」
「行くぞ。これ以上この町に過去の王など必要ないことを教えてやる!」
「はい! 王はわたしだ! 続け!」
箒が口笛を鳴らし、辰也が不機嫌そうに前を見る。ひかりは負けないように王者として先頭を飛んでいった。
不思議な幻想的な光の揺らめく町の中。
祭壇のように設えられた骨で組まれた高い玉座に座りながら、サラマンディアは遠くの空から三人の魔物が飛んでくるのを察知していた。
玉座のひじ掛けに肘をついたまま、彼の怒りの視線が前方の空を見る。
「王より高くを飛ぶとは。長い時代の果てに参拝の礼儀を忘れたようだな。教えてやらねばなるまい」
サラマンディアの右手に持つ杖が掲げられる。その先端が遠くの空から向かってくる魔物達に向けられ、不気味な殺意の籠った赤い光が瞬いた。
「死んで覚えるがよい」
短いシンプルな言葉とともに発射される。赤いレーザー光線が町を貫いた。
誰もそれを察知することが出来なかった。戦場はまだ遠く、今までの戦いでこのようなことは無かったので油断もあったのだろう。
町の方で何かが赤く煌めいた。そう思った時にはすでに遠距離から発射された殺意の光線が辰也の肩を貫いていた。
「ぐあっ!」
上がる苦悶の声。箒もひかりも驚いて動きを止めてしまった。
「ひかりちゃん!」
「うん!」
辰也を支える箒の言葉に答え、ひかりは素早く反応する。狙撃されたのだ。このまま空にいるのは危険だった。
「もう少し右だったか。フフ」
杖をわずか右に動かそうとしたところで、標的の動きが変わって、サラマンディアはその動きを取りやめた。
遠くの空から近づいていた者達が地上へと降りていく。サラマンディアは満足の笑みを浮かべて杖を下ろした。
「それでいい。ここへは歩いて参れ。それが王に対する礼儀というものだ。もっともその頃には物言わぬ屍となっているかもしれんがな。フハハハハ!」
「…………」
すぐ間近で古の王の余りにも暴力的な力を目撃し、フェニックスは自分でも得も言われぬ感情を胸に抱いていた。
いつもなら魔物の出る夜には霧が出る物だったが、今ではそれはほとんどが光に抑えつけられているかのようだった。
そして、ひかりの目指す前方。町の方角からは明らかに今までには無かった異質と感じられるような空気があった。
向かいながら、ひかりは隣に飛ぶクロに訊ねた。
「これはサラマンディアの仕業なの?」
「おそらくはそうでしょう。先代の懸念されていたことが現れてしまいましたね」
「構わない。わたしの町で好きにはさせない!」
祖父から話を聞いておきながら、今まで何の手がかりも得られなかったことを悔やんでいる場合ではない。これから挽回するだけだ。
ヴァンパイアとして。この町の魔の王者として。
ひかりは使い魔のクロとともに飛んでいく。すると、そこに近づいてきた二人の姿があった。敵では無かった。よく知った味方であることはすぐに分かった。
「ひかり、またろくでもない奴が町を荒らしに来たようだな」
「この前の骨トカゲの親分なの?」
竜人の姿に変身した辰也とハーピーの姿に変身した箒だ。箒は王を決める戦いの時には割と乱暴な言葉を使っていたけれど、今は素だった。
その理由を箒は相手に舐められないためだよと語り、辰也はこいつは気ままな奴なんだと評していた。ひかりは苦笑するだけだった。世の中には色んな人がいるものだ。ひかり自身だって似たようなものかもしれない。
物語で思い描いたチート能力者として、上から目線で振る舞った。
今は過去を思い出している場合ではない。ひかりは合流した二人に、今の自分の知っていることを話した。聞き終えて辰也は不愉快そうに鼻を鳴らした。
「くだらんことだ。新しい王が決まったばかりで今頃になって古い王がノコノコと現れるとはな」
「ひかりちゃんの王座がもう取られちゃうかもね」
「させませんよ。わたしの町で好き勝手なことはさせない!」
「言うねえ」
「行くぞ。これ以上この町に過去の王など必要ないことを教えてやる!」
「はい! 王はわたしだ! 続け!」
箒が口笛を鳴らし、辰也が不機嫌そうに前を見る。ひかりは負けないように王者として先頭を飛んでいった。
不思議な幻想的な光の揺らめく町の中。
祭壇のように設えられた骨で組まれた高い玉座に座りながら、サラマンディアは遠くの空から三人の魔物が飛んでくるのを察知していた。
玉座のひじ掛けに肘をついたまま、彼の怒りの視線が前方の空を見る。
「王より高くを飛ぶとは。長い時代の果てに参拝の礼儀を忘れたようだな。教えてやらねばなるまい」
サラマンディアの右手に持つ杖が掲げられる。その先端が遠くの空から向かってくる魔物達に向けられ、不気味な殺意の籠った赤い光が瞬いた。
「死んで覚えるがよい」
短いシンプルな言葉とともに発射される。赤いレーザー光線が町を貫いた。
誰もそれを察知することが出来なかった。戦場はまだ遠く、今までの戦いでこのようなことは無かったので油断もあったのだろう。
町の方で何かが赤く煌めいた。そう思った時にはすでに遠距離から発射された殺意の光線が辰也の肩を貫いていた。
「ぐあっ!」
上がる苦悶の声。箒もひかりも驚いて動きを止めてしまった。
「ひかりちゃん!」
「うん!」
辰也を支える箒の言葉に答え、ひかりは素早く反応する。狙撃されたのだ。このまま空にいるのは危険だった。
「もう少し右だったか。フフ」
杖をわずか右に動かそうとしたところで、標的の動きが変わって、サラマンディアはその動きを取りやめた。
遠くの空から近づいていた者達が地上へと降りていく。サラマンディアは満足の笑みを浮かべて杖を下ろした。
「それでいい。ここへは歩いて参れ。それが王に対する礼儀というものだ。もっともその頃には物言わぬ屍となっているかもしれんがな。フハハハハ!」
「…………」
すぐ間近で古の王の余りにも暴力的な力を目撃し、フェニックスは自分でも得も言われぬ感情を胸に抱いていた。
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