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第二章 真理亜と古の王サラマンディア
第42話 エピローグ
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数日後。
ひかりはサラマンディアと最後に戦った橋の近くの土手の上に来ていた。自転車を止めて少し降りたところで座って景色を眺める。
すぐに来なかったのはほとぼりを冷まそうとした気分だったからかもしれない。
町は平和そのものだった。守れて良かったと思う。
「ひかりさん」
のんびりとした気持ちで眺めていると上から声を掛けられて、ひかりは振り返った。
そこで微笑みを浮かべて立っていたのは不二だった。ひかりは立ち上がって応対した。
「不二さん」
「私のこの町での役目は終わりました。これより星々の神々に伝えに参ろうと思います。この町は良かったと」
「分かってもらえると良いですね」
不二がこの町に来たのは星々の神々がこの星を邪悪だと判断してのことだった。
星々の神々も完全に一枚岩というわけでも無いようだったが、彼らが納得しないとこの戦いは終わらない。
ひかりの心配を不二はやんわりと保障した。
「分かってくれますよ。こうして私が教えられたのですからね」
「気に入ってもらえたのなら良かったです」
「はい。それではまたいつか、この星で」
「ばいばい」
そうして、優しい旅人はこの星から去って行った。
ひかりの中に様々な気持ちを残して。
あの戦いの後でも、真理亜は学校で元気な顔を見せていた。久しぶりにひかりの教室にやって来て、紫門に文句を言われていた。
「お前、また来たのか。ここにお前の面白がるような物なんて何も無いぞ」
「いいでしょ、別に。あたしだってたまにはお姉さんと話がしたいのよ。お姉さん、あたし先生に褒められたのよ」
「へえ、それは凄いね」
「あたしも来年にはクラスの委員長になれるかな」
「真理亜ちゃんならなれると思うよ」
「フフッ、ありがと。お姉さんって優しいから好きよ。どこかのお兄ちゃんと違ってね」
「言ってろ」
妹の言葉に紫門がぼやく。ひかりは微笑ましく見ていた。
とても嬉しそうな少女の顔を見ると、ひかりも嬉しい気持ちになれるのだった。ただ一つのことを除いては。それをクラスメイトが質問した。
「それで真理亜ちゃん。次はいつヴァンパイアと戦うの?」
「もっと力を付けてからかな。前は負けちゃったから」
「真理亜ちゃんでも負けちゃったんだ。ヴァンパイアって強いねー」
真理亜はまだヴァンパイアと戦う気でいるようだ。ひかりとしては負けないように受けて立つ気構えでいるしか無かった。
活きの良いチャレンジャーを前にしたチャンピオンの心境とはこんな物だろうか。ひかりにはよく分からなかった。
修行には狼牙も明け暮れているようだった。ある日、廊下で会った時にこんなことを言ってきた。
「俺、今度こそ師匠の役に立てるようにバスケを始めました!」
「へえ、……何でバスケ?」
「はい! 友達が言うには、高さを制するにはバスケが良いと誘われまして。今度試合をしますんでぜひ見に来てください!」
「うん、見に行くねー」
狼牙を見送って、ひかりは考える。
バスケか。確かに狼牙の跳躍力と敵陣に切り込んでいく突破力があれば活躍できるかもしれない。
ひかりは見に来てと誘われた者として彼の活躍を楽しみにした。
辰也と箒は今日も生徒会の活動に精を出していた。
「奴らは近頃おとなしくしているようだな」
「火種はまだあるようだけどね」
「フン、その時はまた奴らが好きにするのだろう。あの勝手な奴らがな」
辰也は不機嫌そうに言ってのける。箒はニコニコして機嫌よく見守っていた。
「ウガーーー」
そこに計算を終えた資料を出してきたのは会計を務める生徒だ。彼はいつも部屋にいるのだが、壁際の暗がりで黙々と計算をしているのであまり気づかれることが無かった。
箒は笑顔でお礼を言った。あの骨トカゲ兵の大勢いる戦場でも彼は役に立ってくれた。
「フラン君もご苦労様」
「ウガー」
「ほら、次の仕事だ」
「ウガー」
辰也から次の資料を渡され、彼はまた壁際の席に戻って黙々と計算を始めた。
辰也は窓から外を見る。暖かな季節だった。
この町には霧の出る夜に魔物が出る。最近は忘れられかけていたことだが、人々はまた噂するようになっていた。
ひかりは夜の町に飛び立つ。この町の魔の王者として。
夜のヴァンパイアが町を飛ぶ。
ひかりはサラマンディアと最後に戦った橋の近くの土手の上に来ていた。自転車を止めて少し降りたところで座って景色を眺める。
すぐに来なかったのはほとぼりを冷まそうとした気分だったからかもしれない。
町は平和そのものだった。守れて良かったと思う。
「ひかりさん」
のんびりとした気持ちで眺めていると上から声を掛けられて、ひかりは振り返った。
そこで微笑みを浮かべて立っていたのは不二だった。ひかりは立ち上がって応対した。
「不二さん」
「私のこの町での役目は終わりました。これより星々の神々に伝えに参ろうと思います。この町は良かったと」
「分かってもらえると良いですね」
不二がこの町に来たのは星々の神々がこの星を邪悪だと判断してのことだった。
星々の神々も完全に一枚岩というわけでも無いようだったが、彼らが納得しないとこの戦いは終わらない。
ひかりの心配を不二はやんわりと保障した。
「分かってくれますよ。こうして私が教えられたのですからね」
「気に入ってもらえたのなら良かったです」
「はい。それではまたいつか、この星で」
「ばいばい」
そうして、優しい旅人はこの星から去って行った。
ひかりの中に様々な気持ちを残して。
あの戦いの後でも、真理亜は学校で元気な顔を見せていた。久しぶりにひかりの教室にやって来て、紫門に文句を言われていた。
「お前、また来たのか。ここにお前の面白がるような物なんて何も無いぞ」
「いいでしょ、別に。あたしだってたまにはお姉さんと話がしたいのよ。お姉さん、あたし先生に褒められたのよ」
「へえ、それは凄いね」
「あたしも来年にはクラスの委員長になれるかな」
「真理亜ちゃんならなれると思うよ」
「フフッ、ありがと。お姉さんって優しいから好きよ。どこかのお兄ちゃんと違ってね」
「言ってろ」
妹の言葉に紫門がぼやく。ひかりは微笑ましく見ていた。
とても嬉しそうな少女の顔を見ると、ひかりも嬉しい気持ちになれるのだった。ただ一つのことを除いては。それをクラスメイトが質問した。
「それで真理亜ちゃん。次はいつヴァンパイアと戦うの?」
「もっと力を付けてからかな。前は負けちゃったから」
「真理亜ちゃんでも負けちゃったんだ。ヴァンパイアって強いねー」
真理亜はまだヴァンパイアと戦う気でいるようだ。ひかりとしては負けないように受けて立つ気構えでいるしか無かった。
活きの良いチャレンジャーを前にしたチャンピオンの心境とはこんな物だろうか。ひかりにはよく分からなかった。
修行には狼牙も明け暮れているようだった。ある日、廊下で会った時にこんなことを言ってきた。
「俺、今度こそ師匠の役に立てるようにバスケを始めました!」
「へえ、……何でバスケ?」
「はい! 友達が言うには、高さを制するにはバスケが良いと誘われまして。今度試合をしますんでぜひ見に来てください!」
「うん、見に行くねー」
狼牙を見送って、ひかりは考える。
バスケか。確かに狼牙の跳躍力と敵陣に切り込んでいく突破力があれば活躍できるかもしれない。
ひかりは見に来てと誘われた者として彼の活躍を楽しみにした。
辰也と箒は今日も生徒会の活動に精を出していた。
「奴らは近頃おとなしくしているようだな」
「火種はまだあるようだけどね」
「フン、その時はまた奴らが好きにするのだろう。あの勝手な奴らがな」
辰也は不機嫌そうに言ってのける。箒はニコニコして機嫌よく見守っていた。
「ウガーーー」
そこに計算を終えた資料を出してきたのは会計を務める生徒だ。彼はいつも部屋にいるのだが、壁際の暗がりで黙々と計算をしているのであまり気づかれることが無かった。
箒は笑顔でお礼を言った。あの骨トカゲ兵の大勢いる戦場でも彼は役に立ってくれた。
「フラン君もご苦労様」
「ウガー」
「ほら、次の仕事だ」
「ウガー」
辰也から次の資料を渡され、彼はまた壁際の席に戻って黙々と計算を始めた。
辰也は窓から外を見る。暖かな季節だった。
この町には霧の出る夜に魔物が出る。最近は忘れられかけていたことだが、人々はまた噂するようになっていた。
ひかりは夜の町に飛び立つ。この町の魔の王者として。
夜のヴァンパイアが町を飛ぶ。
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