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トリックオアトリート!
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「何がハロウィンだよ。くだらねえ。陽キャなんて滅びろよ」
一人暮らしでネットを見ながら俺はそう考えていた。
そんな時、玄関でピンポンが鳴った。
「誰だよ、こんな時に。クソッ、めんどくせえな」
悪態を付きながら外に出るとそこには輝くような笑顔で仮装した女の子が立っていた。
「ハッピーハロウィン、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞー!」
元気いっぱいの声。可愛い仕草。明るい笑顔。
ああ、なんて眩しいんだ。こいつは俺とは住む世界の違う人間だ。さっさと閉じてしまおう。
俺はパソコンをシャットダウンするような感覚でドアを閉じようとするのだが、彼女は阻止してきた。
「ちょっと待ってよ。お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞって言ってるじゃん! ほら、早く出してよ」
「うるさいなあ。わかったから静かにしてくれよ」
「うん、静かにするね。だから、お菓子ちょうだい」
「はいはい……お菓子お菓子~~~……ああ、今切らしてるね。ここには無い。10円あげるから自分でコンビニでも行って買っておいで」
「ふーん、そっかぁ……お兄さん、そういう事言うんだあ……」
彼女は何かを考え込むように下を向いていた。
そして、次に顔を上げた時は悪戯っ子のような笑みを浮かべていたのだ。
「じゃあ、イタズラを執行するしか無いね」
「……は? 何を言っているんだ。この俺が見ず知らずの子供に10円も上げようと言うのに何が気に食わないと言うんだ?」
「別にお金の問題じゃないんだよ。お菓子をくれなきゃイタズラする。それがこの世のルールなんだよ」
「……どういう意味だ?」
「つまり、お菓子をくれないならイタズラをしちゃうよってことだよ。それがハロウィンなの。問答無用!」
すると、彼女はポケットからスタンガンを取り出したのだ。
「おいおい、冗談だろ!? なんで子供がそんな物を持っているんだ!?」
「それは秘密かな。それよりも覚悟を決めてよね」
「ちょ、ま……ぎゃああああああ!!」
ビリビリビリ。俺はスタンガンを食らった。
「どう? 肩こりは取れたかな?」
「ああ、少しは取れたかな。……って、俺を騙しやがったな!」
「トリックオアトリート!」
「何がトリックオアトリートだ、もう許さねえ! そっちこそお菓子を寄こしやがれ!」
「もらってない物は渡せないよ~」
「チクショウめ!! ならお前にイタズラしてやる!」
「いい度胸だ。掛かってこーい!」
「上等だゴラァ!!」
こうして始まったイタズラ合戦。俺は彼女を捕まえようと手を伸ばしたのだが、ひらりと避けられてしまった。
「へへん。遅いぞお兄さん! 引きこもり生活が長すぎたんじゃない?」
「くっ、捕まえられないだと……。だが、このままでは終わらないぜ! 大人を舐めんな!」
それから数時間後。俺たちは疲れ果てて床に転がっていた。
「ハア……ハア……なかなかやるな」
「お兄さんもね。動けなさそうに見えるのにやるじゃない」
「ゲームだよ」
「ゲーム?」
「どんな強敵も動きを見切ればノーダメージで倒せるようになるんだぜ」
「分かったような口を……だけど、まだ勝負は終わっていないよ……」
お互いに息切れをしながら睨み合う。もはや意地だった。
「行くぞ!」
「来い!」
「おりゃ!」
「そこ!」
俺は彼女の腕を掴んだ。
「よし、捕まえたぞ!」
「しまった!」
「俺の勝ちだな。イタズラをくらえ!」
「うわーん! 痺れるううう!」
彼女自身の持ってきたスタンガンを当ててやる。
「肩こりは取れたか?」
「少しは」
「上がっていくか? お茶ぐらいは出すぜ」
「わーい、やったー。ごちになります!」
彼女を部屋で待たせ、俺はお茶を探す。すると戸棚にお菓子があるではないか。
「こんなところにあったのかー」
俺は彼女にお茶とお菓子を出してやる。お菓子を見て彼女の目が輝いた。
「お菓子あるじゃん。何で無いなんて嘘ついたの?」
「うっせ、俺だって忘れてたんだよ」
「またまたー、本当は私にイタズラされたかったんじゃないの?」
「そんな事言う奴にはイタズラしちゃうぞ」
「キャー、助けてー!」
そんな冗談を言いながら、俺と彼女はしばらくお菓子を食べながら談笑した。
やがてお菓子を食べ終わって、彼女の帰る時間になった。
「それじゃあ、私はそろそろ帰ろうかな」
「そうか。楽しかったよ。今日は来てくれてありがとうな」
「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごさせていただきました。本当に感謝しております」
「大袈裟だな。さあ、気をつけて帰れよ」
「バイバーイ、来年もお菓子を用意しておいてねー」
「ああ、覚えていたらな」
こうして彼女を見送って慌ただしかったハロウィンの日は幕を閉じた。
そう思っていたが、甘かった。今日という日はまだ続いている。
「トリックオアトリート!」
背後から声が聞こえてきた。振り返るとそこには黒いローブを着た女性が立っていた。
「誰だ、あんたは?」
「私は魔女よ。お菓子をくれないとイタズラするわよ」
「もうお菓子はねえよ! 全部食っちまったからな!」
「なら、仕方がないわね。イタズラさせてもらうわ」
「やめろー!」
やっぱりハロウィンという日は騒がしくなるようだった。
一人暮らしでネットを見ながら俺はそう考えていた。
そんな時、玄関でピンポンが鳴った。
「誰だよ、こんな時に。クソッ、めんどくせえな」
悪態を付きながら外に出るとそこには輝くような笑顔で仮装した女の子が立っていた。
「ハッピーハロウィン、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞー!」
元気いっぱいの声。可愛い仕草。明るい笑顔。
ああ、なんて眩しいんだ。こいつは俺とは住む世界の違う人間だ。さっさと閉じてしまおう。
俺はパソコンをシャットダウンするような感覚でドアを閉じようとするのだが、彼女は阻止してきた。
「ちょっと待ってよ。お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞって言ってるじゃん! ほら、早く出してよ」
「うるさいなあ。わかったから静かにしてくれよ」
「うん、静かにするね。だから、お菓子ちょうだい」
「はいはい……お菓子お菓子~~~……ああ、今切らしてるね。ここには無い。10円あげるから自分でコンビニでも行って買っておいで」
「ふーん、そっかぁ……お兄さん、そういう事言うんだあ……」
彼女は何かを考え込むように下を向いていた。
そして、次に顔を上げた時は悪戯っ子のような笑みを浮かべていたのだ。
「じゃあ、イタズラを執行するしか無いね」
「……は? 何を言っているんだ。この俺が見ず知らずの子供に10円も上げようと言うのに何が気に食わないと言うんだ?」
「別にお金の問題じゃないんだよ。お菓子をくれなきゃイタズラする。それがこの世のルールなんだよ」
「……どういう意味だ?」
「つまり、お菓子をくれないならイタズラをしちゃうよってことだよ。それがハロウィンなの。問答無用!」
すると、彼女はポケットからスタンガンを取り出したのだ。
「おいおい、冗談だろ!? なんで子供がそんな物を持っているんだ!?」
「それは秘密かな。それよりも覚悟を決めてよね」
「ちょ、ま……ぎゃああああああ!!」
ビリビリビリ。俺はスタンガンを食らった。
「どう? 肩こりは取れたかな?」
「ああ、少しは取れたかな。……って、俺を騙しやがったな!」
「トリックオアトリート!」
「何がトリックオアトリートだ、もう許さねえ! そっちこそお菓子を寄こしやがれ!」
「もらってない物は渡せないよ~」
「チクショウめ!! ならお前にイタズラしてやる!」
「いい度胸だ。掛かってこーい!」
「上等だゴラァ!!」
こうして始まったイタズラ合戦。俺は彼女を捕まえようと手を伸ばしたのだが、ひらりと避けられてしまった。
「へへん。遅いぞお兄さん! 引きこもり生活が長すぎたんじゃない?」
「くっ、捕まえられないだと……。だが、このままでは終わらないぜ! 大人を舐めんな!」
それから数時間後。俺たちは疲れ果てて床に転がっていた。
「ハア……ハア……なかなかやるな」
「お兄さんもね。動けなさそうに見えるのにやるじゃない」
「ゲームだよ」
「ゲーム?」
「どんな強敵も動きを見切ればノーダメージで倒せるようになるんだぜ」
「分かったような口を……だけど、まだ勝負は終わっていないよ……」
お互いに息切れをしながら睨み合う。もはや意地だった。
「行くぞ!」
「来い!」
「おりゃ!」
「そこ!」
俺は彼女の腕を掴んだ。
「よし、捕まえたぞ!」
「しまった!」
「俺の勝ちだな。イタズラをくらえ!」
「うわーん! 痺れるううう!」
彼女自身の持ってきたスタンガンを当ててやる。
「肩こりは取れたか?」
「少しは」
「上がっていくか? お茶ぐらいは出すぜ」
「わーい、やったー。ごちになります!」
彼女を部屋で待たせ、俺はお茶を探す。すると戸棚にお菓子があるではないか。
「こんなところにあったのかー」
俺は彼女にお茶とお菓子を出してやる。お菓子を見て彼女の目が輝いた。
「お菓子あるじゃん。何で無いなんて嘘ついたの?」
「うっせ、俺だって忘れてたんだよ」
「またまたー、本当は私にイタズラされたかったんじゃないの?」
「そんな事言う奴にはイタズラしちゃうぞ」
「キャー、助けてー!」
そんな冗談を言いながら、俺と彼女はしばらくお菓子を食べながら談笑した。
やがてお菓子を食べ終わって、彼女の帰る時間になった。
「それじゃあ、私はそろそろ帰ろうかな」
「そうか。楽しかったよ。今日は来てくれてありがとうな」
「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごさせていただきました。本当に感謝しております」
「大袈裟だな。さあ、気をつけて帰れよ」
「バイバーイ、来年もお菓子を用意しておいてねー」
「ああ、覚えていたらな」
こうして彼女を見送って慌ただしかったハロウィンの日は幕を閉じた。
そう思っていたが、甘かった。今日という日はまだ続いている。
「トリックオアトリート!」
背後から声が聞こえてきた。振り返るとそこには黒いローブを着た女性が立っていた。
「誰だ、あんたは?」
「私は魔女よ。お菓子をくれないとイタズラするわよ」
「もうお菓子はねえよ! 全部食っちまったからな!」
「なら、仕方がないわね。イタズラさせてもらうわ」
「やめろー!」
やっぱりハロウィンという日は騒がしくなるようだった。
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