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第7話
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「ここは……」
そこは今までの場所よりも明るく、天井も高い。そして、そこにツチノコがいた。
「あれがツチノコか……」
「思ったより小さいね」
ミハルちゃんが呟く。確かに見た目は普通の小動物といった感じだ。今までの偽物のツチノコより小さく見える。
だが、身体の小ささに反して、その存在感はかなりのものだ。これが本物のプレッシャーというものか。
「気を付けて! あのツチノコからは異様な気配を感じるわ!」
「異様?」
「ええ。恐らく、かなりの力を持っているはずよ」
「そう言われても……」
「ユイちゃん。さっきみたいな魔法のような物で攻撃できないの?」
「それが、どうも材料を切らしたというか……」
私は困ったように言った。これ以上魔法を見せたらどう言い訳すればいいか分からなくなる。できればみんなの力で何とかしたかった。
「ユイちゃんでもダメか」
「残念ながら」
「でも、戦わないとここから出られないよ。あいつ、そういう目をしてる」
「そうね……」
私は考える。正直あまり見せたくはないが、仕方がない。私は杖を構えた。
「速攻決める! ライトニング・ブレード!」
雷の刃を放つ。
「ギャウゥッ!!」
命中はしたが、効いている様子はない。
「ダメね。全然ダメージを与えられない。さすが本物」
「ユイちゃん下がって!」
「え?」
次の瞬間、私は何か強い衝撃を受けて吹き飛ばされていた。
「ぐっ!」
壁に叩きつけられる。
「ユイちゃん!」
「ユイちゃん!」
「ユイ!」
みんなの声が聞こえる。走馬灯だろうか。ここにはいない人の声まで。
夢を見ている場合ではない。
「いったた……」
私は起き上がると、すぐに状況を確認する。どうやら、あのツチノコも魔法が使えるようだ。
「危なかった……私の専売特許だと思ってたのに……」
もし、反応が遅れていれば、命を落としていてもおかしくなかった。あの少年が言っていた見た者は死ぬとはこういうことだったのか。
魔法が使える私でもこうなんだもの。普通の人間が食らったらどうなるか。
「とりあえず、反撃しないと」
「ユイちゃん。無理しないで」
「大丈夫。今度は効かせてみせるわ」
「わかった。私達でなんとか隙を作るから、その間に攻撃して」
「了解!」
私は呪文を唱え始めた。ここまで来て下がる選択は無い。みんなの戦意も十分だ。今度は手加減なしの本気で行こう。マジスター・ユイの本領発揮だ。
「消し炭になっても怒らないでね。ライトニング・アトミックブレード!」
巨大な雷の刃がツチノコを襲う。しかし、それはあっさり避けられてしまった。
「当たらない……警戒されたか」
「大丈夫。まだ手はあります」
カエデちゃんが自信ありげに言う。
「本当!?」
「ええ。少しの間、時間を稼いでください」
「分かった!」
私はツチノコに向かって走り出す。雷を足元へと流しローラースケートのように加速する。魔法を使えばこんな事もできるのだ。
「こっちよ!」
「ガウッ!」
そして、ツチノコは派手な動きを見せる私の方に注目して突進してきた。
「させないわ!」
カエデちゃんがツチノコの前に立ち塞がる。
「危ないよ!」
「大丈夫! 今よ!」
「はい!」
ミハルちゃんの声と同時に私は後ろに飛び退く。すると、ツチノコの動きが止まった。
今頃になって他の動きに警戒したか。ミハルちゃんが転がしたおにぎりに気を取られたらしい。
「ナイスよ、ミハルちゃん」
「はい! 次はお願い!」
それが武器ではないとツチノコが判断して食べる一瞬の隙。カエデちゃんが木の枝を構える。
「はあああっ!」
私の残した雷の残滓を巻き取って凄まじいスピードでツチノコに斬りかかる。しかし、それでも致命傷には至らなかった。
「くっ!」
「カエデさん!」
「ミハルちゃん。私が合図したら、全力で攻撃して!」
「分かりました!」
「よし……」
カエデちゃんはツチノコの攻撃を受け流しながら、少しずつダメージを与える。私だって魔法で牽制していく。そして、ついにその時が訪れた。
「ミハルちゃん!」
「はいっ!」
ミハルちゃんが拳を構え、カエデちゃんの横に並ぶ。
「これで終わりです! ヨガの拳!」
ミハルちゃんが渾身の一撃を放った。
「ギャウウウウンッ!!!」
ツチノコは断末魔の叫びを上げ、その場に倒れた。
「やった!」
「やりましたね!」
私達は喜び合った。
「ミハルちゃん、今の技は?」
「少し習っていて。えへへ」
人は見かけによらないものだ。私だって人の事は言えないかもしれないが。
そんな私達の所にカケル君達がやって来る。
「みんな無事か?」
「ええ。問題ありません」
「そうか……よかった」
「偽物のツチノコはこっちで倒したぜ」
「それで、本物のツチノコは?」
「ああ……それなら、ほらそこに」
そこには小さなツチノコの姿があった。
「かわいい!」
みんなはしゃがみ込むと、優しく撫でた。
「グルルル……」
「本物は大人しいんだな」
「さっきまではやんちゃだったんだけどね」
「おそらく、もう私達に危害を加えるつもりはないようです」
「そうなんですか?」
「ええ。だから、安心してください」
「わかりました!」
私達はその後、本物のツチノコを森の外まで送り届けた。町長に見せれば表彰されただろうが、それは止めておくことにした。このツチノコには自然の中で生きていって欲しいと思ったのだ。
「さようなら、ツチノコ!」
「ツチノコも無事に帰れたし、一件落着ね」
「そうだね」
「今日一日、色々あったけど楽しかった」
「うん」
「また来ましょう」
「そうだね……」
表彰台にはネネコお姉ちゃんがツチノコを連れて来ていたけど、それは未知の生物が擬態した偽物だった。
私達は何とかしなければと身構えるが、すぐに本気を出した町長がこらしめてしまった。いやあ、大人は凄い。
「みなさん、本日は町内会のイベントに参加してくださりありがとうございました」
挨拶とともに人々が解散していく。
こうして、私達の夏休みのクエストは終わったのだった。
そこは今までの場所よりも明るく、天井も高い。そして、そこにツチノコがいた。
「あれがツチノコか……」
「思ったより小さいね」
ミハルちゃんが呟く。確かに見た目は普通の小動物といった感じだ。今までの偽物のツチノコより小さく見える。
だが、身体の小ささに反して、その存在感はかなりのものだ。これが本物のプレッシャーというものか。
「気を付けて! あのツチノコからは異様な気配を感じるわ!」
「異様?」
「ええ。恐らく、かなりの力を持っているはずよ」
「そう言われても……」
「ユイちゃん。さっきみたいな魔法のような物で攻撃できないの?」
「それが、どうも材料を切らしたというか……」
私は困ったように言った。これ以上魔法を見せたらどう言い訳すればいいか分からなくなる。できればみんなの力で何とかしたかった。
「ユイちゃんでもダメか」
「残念ながら」
「でも、戦わないとここから出られないよ。あいつ、そういう目をしてる」
「そうね……」
私は考える。正直あまり見せたくはないが、仕方がない。私は杖を構えた。
「速攻決める! ライトニング・ブレード!」
雷の刃を放つ。
「ギャウゥッ!!」
命中はしたが、効いている様子はない。
「ダメね。全然ダメージを与えられない。さすが本物」
「ユイちゃん下がって!」
「え?」
次の瞬間、私は何か強い衝撃を受けて吹き飛ばされていた。
「ぐっ!」
壁に叩きつけられる。
「ユイちゃん!」
「ユイちゃん!」
「ユイ!」
みんなの声が聞こえる。走馬灯だろうか。ここにはいない人の声まで。
夢を見ている場合ではない。
「いったた……」
私は起き上がると、すぐに状況を確認する。どうやら、あのツチノコも魔法が使えるようだ。
「危なかった……私の専売特許だと思ってたのに……」
もし、反応が遅れていれば、命を落としていてもおかしくなかった。あの少年が言っていた見た者は死ぬとはこういうことだったのか。
魔法が使える私でもこうなんだもの。普通の人間が食らったらどうなるか。
「とりあえず、反撃しないと」
「ユイちゃん。無理しないで」
「大丈夫。今度は効かせてみせるわ」
「わかった。私達でなんとか隙を作るから、その間に攻撃して」
「了解!」
私は呪文を唱え始めた。ここまで来て下がる選択は無い。みんなの戦意も十分だ。今度は手加減なしの本気で行こう。マジスター・ユイの本領発揮だ。
「消し炭になっても怒らないでね。ライトニング・アトミックブレード!」
巨大な雷の刃がツチノコを襲う。しかし、それはあっさり避けられてしまった。
「当たらない……警戒されたか」
「大丈夫。まだ手はあります」
カエデちゃんが自信ありげに言う。
「本当!?」
「ええ。少しの間、時間を稼いでください」
「分かった!」
私はツチノコに向かって走り出す。雷を足元へと流しローラースケートのように加速する。魔法を使えばこんな事もできるのだ。
「こっちよ!」
「ガウッ!」
そして、ツチノコは派手な動きを見せる私の方に注目して突進してきた。
「させないわ!」
カエデちゃんがツチノコの前に立ち塞がる。
「危ないよ!」
「大丈夫! 今よ!」
「はい!」
ミハルちゃんの声と同時に私は後ろに飛び退く。すると、ツチノコの動きが止まった。
今頃になって他の動きに警戒したか。ミハルちゃんが転がしたおにぎりに気を取られたらしい。
「ナイスよ、ミハルちゃん」
「はい! 次はお願い!」
それが武器ではないとツチノコが判断して食べる一瞬の隙。カエデちゃんが木の枝を構える。
「はあああっ!」
私の残した雷の残滓を巻き取って凄まじいスピードでツチノコに斬りかかる。しかし、それでも致命傷には至らなかった。
「くっ!」
「カエデさん!」
「ミハルちゃん。私が合図したら、全力で攻撃して!」
「分かりました!」
「よし……」
カエデちゃんはツチノコの攻撃を受け流しながら、少しずつダメージを与える。私だって魔法で牽制していく。そして、ついにその時が訪れた。
「ミハルちゃん!」
「はいっ!」
ミハルちゃんが拳を構え、カエデちゃんの横に並ぶ。
「これで終わりです! ヨガの拳!」
ミハルちゃんが渾身の一撃を放った。
「ギャウウウウンッ!!!」
ツチノコは断末魔の叫びを上げ、その場に倒れた。
「やった!」
「やりましたね!」
私達は喜び合った。
「ミハルちゃん、今の技は?」
「少し習っていて。えへへ」
人は見かけによらないものだ。私だって人の事は言えないかもしれないが。
そんな私達の所にカケル君達がやって来る。
「みんな無事か?」
「ええ。問題ありません」
「そうか……よかった」
「偽物のツチノコはこっちで倒したぜ」
「それで、本物のツチノコは?」
「ああ……それなら、ほらそこに」
そこには小さなツチノコの姿があった。
「かわいい!」
みんなはしゃがみ込むと、優しく撫でた。
「グルルル……」
「本物は大人しいんだな」
「さっきまではやんちゃだったんだけどね」
「おそらく、もう私達に危害を加えるつもりはないようです」
「そうなんですか?」
「ええ。だから、安心してください」
「わかりました!」
私達はその後、本物のツチノコを森の外まで送り届けた。町長に見せれば表彰されただろうが、それは止めておくことにした。このツチノコには自然の中で生きていって欲しいと思ったのだ。
「さようなら、ツチノコ!」
「ツチノコも無事に帰れたし、一件落着ね」
「そうだね」
「今日一日、色々あったけど楽しかった」
「うん」
「また来ましょう」
「そうだね……」
表彰台にはネネコお姉ちゃんがツチノコを連れて来ていたけど、それは未知の生物が擬態した偽物だった。
私達は何とかしなければと身構えるが、すぐに本気を出した町長がこらしめてしまった。いやあ、大人は凄い。
「みなさん、本日は町内会のイベントに参加してくださりありがとうございました」
挨拶とともに人々が解散していく。
こうして、私達の夏休みのクエストは終わったのだった。
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