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第25話 約束した場所へ
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天気のいい朝。
屋敷の前で待ち合わせして合流して、ミリエルはリンダとニーニャと一緒に草原に囲まれた道を歩いていく。
目的地は町外れにある洞窟だ。町外れと言ってもミリエルの住んでいる屋敷自体が町外れにあるのでそう遠い距離では無い。
女の子達の足でも、ちょうどいい遠足ぐらいの感覚で行ける距離だ。
その町外れの洞窟で何をするのかというと、勇者の受けたモンスター退治の依頼にミリエル達は同行させてもらえることになったのだ。
女の子のやる事にしてはロマンが無いかもしれないが、ミリエルは狩りが大好きだし、アルトも幼い頃から彼女の喜ぶことを知っているので気を回してくれたのだと思う。
『いよいよ奴の実力が見れるのだな』
「わたし達に許可してくれた場所だから、前の森と敵の強さは変わらないと思うよ」
中の人は期待しているようだが、アルトは安全だと言ってたし、そのレベルの敵で彼の強さが見れるかは疑問の出るところだ。
「アルト様に会えるー」
ミリエルの腕を取って隣にひっついてもう片方の手を大きく振りながら、リンダはとても上機嫌だった。彼女にとっては憧れの人に会えることが一番の目的で、狩りに行くとか何をしに向かうとかそんな目的はどうでもいいことのようだった。
お嬢様はとてもニコニコして笑っている。ミリエルは彼女とは反対に迷惑していた。ちょっと腕を揺すって言った。
「リンダちゃん、そんなにくっつかないでよ」
「どうしてですか? わたくし達は友達なんだから良いでしょう」
彼女は聞く耳持たずだ。もうミリエルと友達になった気でいる。いや、クラスメイトなんだし、友達なのは事実かもしれないが。
機嫌が良いことは良いのだが、ミリエルは今はニーニャと話がしたかった。年上ばかりに囲まれて育ったミリエルにとって、初めて出来た年下の友達とこの機会に仲良くしたかった。
それはジーロ君と別れてぽっかりと空いた穴を埋める思いもあったのかもしれない。
だが、リンダに腕をがっつりと拘束されてくっつかれていたので、彼女と話が出来なかった。ニーニャはお嬢様に気を使ってか黙って後ろを歩いていたし。
<ニーニャちゃん、何してるんだろう?>
ミリエルは後ろを向こうとするが、リンダに腕を引っ張られて前を向けさせられてしまった。
本当に迷惑だが、リンダはどこ吹く風だ。とても楽しそうに自分達で話をしようと誘ってきた。
「ミリエルさん、この機会にわたくしと話をしましょう。そうしないとこの気持ちが抑えられませんの!」
「ああ、そうだねえ……。じゃあ、ニーニャちゃんのこと」
「ニーニャはどうでもいいのです。わたくしの話を聞いてくださいませ」
「ああ」
そして、リンダは一人でペラペラと話し始めた。そうしないと落ち着かないとばかりに。ニーニャのことが聞ければ良かったが、彼女が話したのは自分のことだけだった。
陽気なマシンガンのような浮かれたトークにミリエルがうんざりとし始めていると、中の人が話しかけてきた。
『女って本当によく喋るよな。しかも有益な情報が無い。アルトのことはどうなっているんだ』
「知らないよ。喋っているのはリンダちゃんだけだよ」
ミリエルもニーニャも何も喋っていないのに、女と一括りにされても困ってしまう。
結局ミリエルは町外れの洞窟まで歩いている間ずっとリンダにくっつかれて無駄話に付き合わされ、ニーニャと口を聞く機会は無かったのだった。
後ろを歩きながらニーニャはそんな二人の様子をずっと見ていた。
<やっぱり嫌がられてるじゃないか、リンダお嬢様。あの子に嫌われなければいいけどな>
そう自分の仕えるお嬢様の事を心配するニーニャだった。
屋敷の前で待ち合わせして合流して、ミリエルはリンダとニーニャと一緒に草原に囲まれた道を歩いていく。
目的地は町外れにある洞窟だ。町外れと言ってもミリエルの住んでいる屋敷自体が町外れにあるのでそう遠い距離では無い。
女の子達の足でも、ちょうどいい遠足ぐらいの感覚で行ける距離だ。
その町外れの洞窟で何をするのかというと、勇者の受けたモンスター退治の依頼にミリエル達は同行させてもらえることになったのだ。
女の子のやる事にしてはロマンが無いかもしれないが、ミリエルは狩りが大好きだし、アルトも幼い頃から彼女の喜ぶことを知っているので気を回してくれたのだと思う。
『いよいよ奴の実力が見れるのだな』
「わたし達に許可してくれた場所だから、前の森と敵の強さは変わらないと思うよ」
中の人は期待しているようだが、アルトは安全だと言ってたし、そのレベルの敵で彼の強さが見れるかは疑問の出るところだ。
「アルト様に会えるー」
ミリエルの腕を取って隣にひっついてもう片方の手を大きく振りながら、リンダはとても上機嫌だった。彼女にとっては憧れの人に会えることが一番の目的で、狩りに行くとか何をしに向かうとかそんな目的はどうでもいいことのようだった。
お嬢様はとてもニコニコして笑っている。ミリエルは彼女とは反対に迷惑していた。ちょっと腕を揺すって言った。
「リンダちゃん、そんなにくっつかないでよ」
「どうしてですか? わたくし達は友達なんだから良いでしょう」
彼女は聞く耳持たずだ。もうミリエルと友達になった気でいる。いや、クラスメイトなんだし、友達なのは事実かもしれないが。
機嫌が良いことは良いのだが、ミリエルは今はニーニャと話がしたかった。年上ばかりに囲まれて育ったミリエルにとって、初めて出来た年下の友達とこの機会に仲良くしたかった。
それはジーロ君と別れてぽっかりと空いた穴を埋める思いもあったのかもしれない。
だが、リンダに腕をがっつりと拘束されてくっつかれていたので、彼女と話が出来なかった。ニーニャはお嬢様に気を使ってか黙って後ろを歩いていたし。
<ニーニャちゃん、何してるんだろう?>
ミリエルは後ろを向こうとするが、リンダに腕を引っ張られて前を向けさせられてしまった。
本当に迷惑だが、リンダはどこ吹く風だ。とても楽しそうに自分達で話をしようと誘ってきた。
「ミリエルさん、この機会にわたくしと話をしましょう。そうしないとこの気持ちが抑えられませんの!」
「ああ、そうだねえ……。じゃあ、ニーニャちゃんのこと」
「ニーニャはどうでもいいのです。わたくしの話を聞いてくださいませ」
「ああ」
そして、リンダは一人でペラペラと話し始めた。そうしないと落ち着かないとばかりに。ニーニャのことが聞ければ良かったが、彼女が話したのは自分のことだけだった。
陽気なマシンガンのような浮かれたトークにミリエルがうんざりとし始めていると、中の人が話しかけてきた。
『女って本当によく喋るよな。しかも有益な情報が無い。アルトのことはどうなっているんだ』
「知らないよ。喋っているのはリンダちゃんだけだよ」
ミリエルもニーニャも何も喋っていないのに、女と一括りにされても困ってしまう。
結局ミリエルは町外れの洞窟まで歩いている間ずっとリンダにくっつかれて無駄話に付き合わされ、ニーニャと口を聞く機会は無かったのだった。
後ろを歩きながらニーニャはそんな二人の様子をずっと見ていた。
<やっぱり嫌がられてるじゃないか、リンダお嬢様。あの子に嫌われなければいいけどな>
そう自分の仕えるお嬢様の事を心配するニーニャだった。
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