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第1話 平穏だった日常
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普通の町の普通の家に暮らしている少年がいる。
彼の名前は木村陽翔(きむら はると)。特にスポーツが出来るわけでも背が高いわけでもない、ごくありふれた地味で平凡な普通の高校生だ。
学校に行く前の朝の時間、彼の家に幼馴染の少女が朝ご飯を食べに来ていた。
別に特別のことでもない。彼女はすっかり慣れた態度で食べ終わり、手を合わせた。
「ごちそうさま。今日の目玉焼きはなかなか良い焼き加減だったわよ」
「そりゃどうも」
人の家で自分の家のようにくつろいでいる彼女は横山日葵(よこやま ひまり)。明るい性格でクラスの人気もそこそこあるクラスメイトだ。
彼女とは家が隣で親同士の仲が良く、陽翔は親から彼女の面倒を見るようにと言われていた。
陽翔は彼女が食べ終わったお皿をテーブルから持ち上げて流しに浸けて洗い出す。
日葵はテーブルの席に腰掛けたまま話しかけてきた。
「それにしても親も勝手よね。子供を置いて自分達だけ楽しく旅行に行くなんてさ」
「まったくだね」
「あたしも連れていって欲しかったのに」
「学校があるから仕方ないよ」
「一人で家にいても暇だし、あんたあたしを楽しませてよね」
「努力はするよ」
陽翔は洗い物を終えて、学校に行く準備をした。二人は高校生だ。これから学校に行く。
日葵はこの家に来た時にはもう学校に行く準備を済ませてきていた。
陽翔は鞄を持って玄関に向かう。
「それじゃ、行こうか」
「戸締りはしてね。合鍵はあたしも渡されてるけど」
「分かってるよ。ここは僕の家だしね」
外に出て陽翔は家の鍵を掛ける。
二人で学校への道を歩いていく。
その途中で見慣れたものを見かけて陽翔は立ち止まり、日葵はそそくさと彼の背後へと隠れるように動いた。
その生き物は「ニャー」と鳴いた。
路上の猫は特にリアクションを返さない人間にそれ以上構うこともせず、さっさと去っていった。
日葵が安心の息を吐き、陽翔は背後の彼女に話しかけた。
「まだ猫が苦手なの?」
「だって猫よ?」
「可愛いと思うけどなあ」
「むう」
日葵は不機嫌な顔になる。彼女は何故か幼い頃から猫が嫌いだった。
何故かは分からないが。
陽翔は思い出すことがあった。
雨の日の子供の頃に空き地で捨て猫を見たことがあった。
ダンボール箱に入れられて寂しそうに鳴いていた。
日葵と二人でそれを見た。
「可愛そうに。僕が飼ってあげようか」
「止めなさいよ。あたしが猫嫌いなの知ってるでしょ。おばさんもきっと駄目だと言うわ」
「そうだね。仕方ない。誰か他の良い人に拾ってもらってよ」
あの時は日葵や親に気を使って置いてきてしまったが、あの猫は元気にしているだろうか。少し気になるところだった。
その思考から呼び戻す声があった。
「よう、お二人さん。相変わらず仲が良いな」
そこにいたのは背の高いスポーツマンで女子からの人気も非常に高い生徒だった。
彼の名前は石崎孝介(いしざき こうすけ)。高校で知り合った陽翔の友達だ。
日葵といい人気者と友達で肩身の狭い思いをしそうなものだが、陽翔はもう自分の境遇に諦めとともに慣れていた。
「別に仲が良いわけじゃないわよ」
陽翔が何か言うよりも先に、日葵から否定の声が入った。
孝介は不思議そうに目をパチクリさせた。
「そうなのか? 一緒に登校してるじゃないか」
「仲が良いのは親同士。僕は面倒を見るようにと言われているだけだよ」
「むう」
陽翔が正直に事情を話すと日葵がまた不機嫌な顔になる。もう本当に仲が良くないなと陽翔には思えた。
孝介はその爽やかな顔に笑みを浮かべた。
「そうなのか。じゃあ、俺にもまだチャンスあるよな」
「何のチャンス?」
と訊ねるが、陽翔はそれほど鈍感ではない。
孝介はきっと日葵のことが好きなのだろう。人気者の二人が付き合うならそれは喜ばしいことだし、お似合いだ。友達として素直に歓迎できる。
陽翔はそう思った。
孝介はその質問には答えず、時間を気にした。
「おっともうこんな時間だ。早く行こうぜ。遅刻するぞ」
「おう」
立ち止まっている間に結構な時間をロスしてしまっていたようだ。
先を行く孝介の後を陽翔は急いで追いかけた。
「ちょっと待ちなさいよ。あたしを置いていくなー!」
日葵も急いで追いかけてくる。そんないつもの日常だった。
平和に広がる青空をヘリが飛んでいく。
その中の客席に座る清楚さを感じさせる少女は、膝に置いた占い盤を見て呟いた。
「この辺りですね」
「掴めましたか。お嬢様」
少女の声に運転をしていた執事が答えた。
「ええ、占いはそう示しています」
彼女は外の景色に目を向ける。その視線の先には地上にある学校が見えていた。
「あそこですね。あの場所にわたしの占いが指し示す物があります。まさしく中心点と呼べる場所となるでしょう」
「では、あそこにヘリを下ろします」
「例の手続きもしておいてください。今回の用事は長くなりそうですから」
「かしこまりました」
そうしてヘリは学校の屋上へと降りていった。
彼の名前は木村陽翔(きむら はると)。特にスポーツが出来るわけでも背が高いわけでもない、ごくありふれた地味で平凡な普通の高校生だ。
学校に行く前の朝の時間、彼の家に幼馴染の少女が朝ご飯を食べに来ていた。
別に特別のことでもない。彼女はすっかり慣れた態度で食べ終わり、手を合わせた。
「ごちそうさま。今日の目玉焼きはなかなか良い焼き加減だったわよ」
「そりゃどうも」
人の家で自分の家のようにくつろいでいる彼女は横山日葵(よこやま ひまり)。明るい性格でクラスの人気もそこそこあるクラスメイトだ。
彼女とは家が隣で親同士の仲が良く、陽翔は親から彼女の面倒を見るようにと言われていた。
陽翔は彼女が食べ終わったお皿をテーブルから持ち上げて流しに浸けて洗い出す。
日葵はテーブルの席に腰掛けたまま話しかけてきた。
「それにしても親も勝手よね。子供を置いて自分達だけ楽しく旅行に行くなんてさ」
「まったくだね」
「あたしも連れていって欲しかったのに」
「学校があるから仕方ないよ」
「一人で家にいても暇だし、あんたあたしを楽しませてよね」
「努力はするよ」
陽翔は洗い物を終えて、学校に行く準備をした。二人は高校生だ。これから学校に行く。
日葵はこの家に来た時にはもう学校に行く準備を済ませてきていた。
陽翔は鞄を持って玄関に向かう。
「それじゃ、行こうか」
「戸締りはしてね。合鍵はあたしも渡されてるけど」
「分かってるよ。ここは僕の家だしね」
外に出て陽翔は家の鍵を掛ける。
二人で学校への道を歩いていく。
その途中で見慣れたものを見かけて陽翔は立ち止まり、日葵はそそくさと彼の背後へと隠れるように動いた。
その生き物は「ニャー」と鳴いた。
路上の猫は特にリアクションを返さない人間にそれ以上構うこともせず、さっさと去っていった。
日葵が安心の息を吐き、陽翔は背後の彼女に話しかけた。
「まだ猫が苦手なの?」
「だって猫よ?」
「可愛いと思うけどなあ」
「むう」
日葵は不機嫌な顔になる。彼女は何故か幼い頃から猫が嫌いだった。
何故かは分からないが。
陽翔は思い出すことがあった。
雨の日の子供の頃に空き地で捨て猫を見たことがあった。
ダンボール箱に入れられて寂しそうに鳴いていた。
日葵と二人でそれを見た。
「可愛そうに。僕が飼ってあげようか」
「止めなさいよ。あたしが猫嫌いなの知ってるでしょ。おばさんもきっと駄目だと言うわ」
「そうだね。仕方ない。誰か他の良い人に拾ってもらってよ」
あの時は日葵や親に気を使って置いてきてしまったが、あの猫は元気にしているだろうか。少し気になるところだった。
その思考から呼び戻す声があった。
「よう、お二人さん。相変わらず仲が良いな」
そこにいたのは背の高いスポーツマンで女子からの人気も非常に高い生徒だった。
彼の名前は石崎孝介(いしざき こうすけ)。高校で知り合った陽翔の友達だ。
日葵といい人気者と友達で肩身の狭い思いをしそうなものだが、陽翔はもう自分の境遇に諦めとともに慣れていた。
「別に仲が良いわけじゃないわよ」
陽翔が何か言うよりも先に、日葵から否定の声が入った。
孝介は不思議そうに目をパチクリさせた。
「そうなのか? 一緒に登校してるじゃないか」
「仲が良いのは親同士。僕は面倒を見るようにと言われているだけだよ」
「むう」
陽翔が正直に事情を話すと日葵がまた不機嫌な顔になる。もう本当に仲が良くないなと陽翔には思えた。
孝介はその爽やかな顔に笑みを浮かべた。
「そうなのか。じゃあ、俺にもまだチャンスあるよな」
「何のチャンス?」
と訊ねるが、陽翔はそれほど鈍感ではない。
孝介はきっと日葵のことが好きなのだろう。人気者の二人が付き合うならそれは喜ばしいことだし、お似合いだ。友達として素直に歓迎できる。
陽翔はそう思った。
孝介はその質問には答えず、時間を気にした。
「おっともうこんな時間だ。早く行こうぜ。遅刻するぞ」
「おう」
立ち止まっている間に結構な時間をロスしてしまっていたようだ。
先を行く孝介の後を陽翔は急いで追いかけた。
「ちょっと待ちなさいよ。あたしを置いていくなー!」
日葵も急いで追いかけてくる。そんないつもの日常だった。
平和に広がる青空をヘリが飛んでいく。
その中の客席に座る清楚さを感じさせる少女は、膝に置いた占い盤を見て呟いた。
「この辺りですね」
「掴めましたか。お嬢様」
少女の声に運転をしていた執事が答えた。
「ええ、占いはそう示しています」
彼女は外の景色に目を向ける。その視線の先には地上にある学校が見えていた。
「あそこですね。あの場所にわたしの占いが指し示す物があります。まさしく中心点と呼べる場所となるでしょう」
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