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現れた闇の炎
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廊下を風のように走り抜け、郁子は素早く教室のドアに辿りついた。光輝が追いついて声を掛ける暇も無かった。
悪魔と戦う相談とかしなくて良かったのだろうか。きっと彼女は一人で戦えるのかもしれない。
凛堂郁子は悪魔も認めるハンターを自称する少女なのだから。
「待たせたわね! 闇のハンターのお出ましよ!」
剣を手にした郁子はまたびっくりするような勢いで教室のドアを開けた。光輝は今度は驚かなかった。だが、教室でいつもの授業が行われていたのには目が点になった。
教壇に立っている先生がのんびりとした様子で訊いてくる。
「凛堂、剣は取ってきたのか?」
「ええ、この手に」
「じゃあ、早くそいつを何とかしてくれよ」
先生は別にのんびりとしているわけでは無かった。どうすればいいか分からなくて害獣を駆除する業者を待っていただけだった。光輝はそう理解した。
悪魔はまだいた。教室の後ろでまるで授業参観するかのように立っていた。
「待っていたぞ。お前が必ず戻ってくるとこいつが言っていたからな!」
「お兄ちゃん!」
何と希美が悪魔に人質に取られていた。黒い爪のある手が希美の肩を掴んでいた。
「今度は逃げるなよ。逃げるとこいつが痛い目に合うからな!」
「くっ」
人質が取られてはハンターもうかつに踏み込めない。膠着する状態で光輝は訊くことにした。
「お前の目的は何なんだ。僕に何の用があるんだ!」
「お前の中には闇の炎シャドウレクイエムが宿っているはずだ。それを渡せ」
「シャドウレクイエム?」
初めて聞く名前だった。
だが、その名を呟いた時だった。光輝の呼び声に呼応したかのように内なる闇が目覚める感覚がして、右腕が痛んだ。
「何だこれは。うおお、鎮まれ! 僕の右腕えええ!」
反射的に叫んでしまう。
「お兄ちゃん! ついにそっちの道に……」
魔の者に興味のある希美は目を煌めかせた。光輝の方はそれどころではない。別に妹の遊びに付き合っているわけではないのだ。
ただ鎮まって欲しいと思っているだけで。恥ずかしいと思って気を抜いた隙だった。
「違うよ! うわあああ!」
闇が目覚めた。そう精神の奥深くで知覚するとともに、光輝の右腕から闇の炎が吹き上がった。教室のみんながそれを目撃した。
「これが王の力!」
「なんかすげえぜ!」
「シャドウレクイエム!」
「時坂君、それをしまいなさい!」
「僕にどうしろってんだ!」
「渡せ! それは真に王にふさわしい方の物だ!」
「キャ!」
「ちょっと待ってよ。うわあああ!」
希美を突き飛ばして悪魔が飛びかかってくる。光輝は暴走を抑えきれずに悪魔に腕を向けた。
闇の炎が発射され、巻き込まれた悪魔は吹き飛び、教室の壁が破壊された。
黒い物が外へと去っていき、空で消滅した。涼しい風が入ってくる。
静かになった教室で、光輝は唖然として立ち尽くした。
教卓から先生が言う。
「時坂、後で職員室な」
「はい……」
断る言葉を光輝は持っていなかった。
途方に暮れる光輝の後ろでは郁子が剣を使えなくて手をうずうずさせ、しばらくしてその手を下ろして、剣を自分の机の横に立てかけて席に戻った。
希美は闇に目覚めたかっこいい兄のために黒いマントを用意しないといけないなと思ったのだった。
遠い異世界の城で、浴室の広い湯船に浸かりながら闇の王女リティシアは自分の使い魔がやられたことを察していた。
美しい少女だ。年は光輝や希美とそう変わらないように見えるが、纏う魔の姫としての風格が彼女に威厳を与えていた。
「我が使い魔が倒されるとは。向こうの世界で動きがあったか」
指先を見つめながら彼女は不吉に笑う。
「闇の炎シャドウレクイエム。この手に!」
拳を握り、影が走る。新たな使い魔達が現世に向かって放たれていった。
悪魔と戦う相談とかしなくて良かったのだろうか。きっと彼女は一人で戦えるのかもしれない。
凛堂郁子は悪魔も認めるハンターを自称する少女なのだから。
「待たせたわね! 闇のハンターのお出ましよ!」
剣を手にした郁子はまたびっくりするような勢いで教室のドアを開けた。光輝は今度は驚かなかった。だが、教室でいつもの授業が行われていたのには目が点になった。
教壇に立っている先生がのんびりとした様子で訊いてくる。
「凛堂、剣は取ってきたのか?」
「ええ、この手に」
「じゃあ、早くそいつを何とかしてくれよ」
先生は別にのんびりとしているわけでは無かった。どうすればいいか分からなくて害獣を駆除する業者を待っていただけだった。光輝はそう理解した。
悪魔はまだいた。教室の後ろでまるで授業参観するかのように立っていた。
「待っていたぞ。お前が必ず戻ってくるとこいつが言っていたからな!」
「お兄ちゃん!」
何と希美が悪魔に人質に取られていた。黒い爪のある手が希美の肩を掴んでいた。
「今度は逃げるなよ。逃げるとこいつが痛い目に合うからな!」
「くっ」
人質が取られてはハンターもうかつに踏み込めない。膠着する状態で光輝は訊くことにした。
「お前の目的は何なんだ。僕に何の用があるんだ!」
「お前の中には闇の炎シャドウレクイエムが宿っているはずだ。それを渡せ」
「シャドウレクイエム?」
初めて聞く名前だった。
だが、その名を呟いた時だった。光輝の呼び声に呼応したかのように内なる闇が目覚める感覚がして、右腕が痛んだ。
「何だこれは。うおお、鎮まれ! 僕の右腕えええ!」
反射的に叫んでしまう。
「お兄ちゃん! ついにそっちの道に……」
魔の者に興味のある希美は目を煌めかせた。光輝の方はそれどころではない。別に妹の遊びに付き合っているわけではないのだ。
ただ鎮まって欲しいと思っているだけで。恥ずかしいと思って気を抜いた隙だった。
「違うよ! うわあああ!」
闇が目覚めた。そう精神の奥深くで知覚するとともに、光輝の右腕から闇の炎が吹き上がった。教室のみんながそれを目撃した。
「これが王の力!」
「なんかすげえぜ!」
「シャドウレクイエム!」
「時坂君、それをしまいなさい!」
「僕にどうしろってんだ!」
「渡せ! それは真に王にふさわしい方の物だ!」
「キャ!」
「ちょっと待ってよ。うわあああ!」
希美を突き飛ばして悪魔が飛びかかってくる。光輝は暴走を抑えきれずに悪魔に腕を向けた。
闇の炎が発射され、巻き込まれた悪魔は吹き飛び、教室の壁が破壊された。
黒い物が外へと去っていき、空で消滅した。涼しい風が入ってくる。
静かになった教室で、光輝は唖然として立ち尽くした。
教卓から先生が言う。
「時坂、後で職員室な」
「はい……」
断る言葉を光輝は持っていなかった。
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希美は闇に目覚めたかっこいい兄のために黒いマントを用意しないといけないなと思ったのだった。
遠い異世界の城で、浴室の広い湯船に浸かりながら闇の王女リティシアは自分の使い魔がやられたことを察していた。
美しい少女だ。年は光輝や希美とそう変わらないように見えるが、纏う魔の姫としての風格が彼女に威厳を与えていた。
「我が使い魔が倒されるとは。向こうの世界で動きがあったか」
指先を見つめながら彼女は不吉に笑う。
「闇の炎シャドウレクイエム。この手に!」
拳を握り、影が走る。新たな使い魔達が現世に向かって放たれていった。
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