16 / 26
帰ってきた故郷の城
しおりを挟む
アクバンの率いていた悪魔の軍隊も従えて帰ってきた故郷の城。そこは大きくて立派な城だった。
「ここに前世のお兄ちゃんが住んでたの?」
「前世って……」
光輝は希美の言葉に困惑するが、否定する材料は何も無かった。
ここが前世の光輝が住んでいた城だ。どうやらそのようだった。
「壊れていますな」
「うん」
ゼネルの言葉に頷く。確かに城のあちこちには壊れたような跡があり、瓦礫が転がったり土煙が上がったりしていた。
「わしらが出かけた時はこうで無かったのですが」
「誰か暴れたんやろか」
どうやら城はゼネルとリティシアが出かけている間に壊されたようだ。
復旧しようと、あちこちで悪魔達が修理に追われていた。
光輝はここまで同行してきた隣に立つ隊長アクバンに訊いた。
「何かあったの?」
「竜の襲撃があったのです。今はどこかへ向かってからまた戻ってきて北の山まで去ったようですが」
「奴は人間界に現れたのだ」
「そこでお兄ちゃんがやっつけたんやで」
「さすがは王です。奴はまたいつ来るか分かりません。でも、王がおられれば安心ですね」
褒められても光輝には苦笑いするぐらいしか出来ない。城内へ入って玉座のある部屋にやって来る。
「竜退治には明日向かうとして、今日は我らの歓迎をお受けください」
明日は学校が、とは断れそうに無い雰囲気だった。
「歓迎だって楽しみー」
「パーティーやー」
妹達はうかれているし、光輝は仕方なく歓迎会を受けることになったのだった。
夜も更けて。
明日は戦いがあるからと歓迎会を早めに切り上げさせた光輝は隅っこに移動して電話を掛けることにした。
明日学校を休むことを連絡しておかないといけない。光輝の頼む相手は郁子しかいなかった。
だが、やはりと言うべきか、携帯は圏外だった。
光輝がため息をついているとリティシアがやってきた。
「お兄ちゃん、どうしたん?」
ゼネルやアクバンは明日の準備で忙しそうだったが、彼女は暇そうだった。
「リティシア、希美は?」
一緒にいると思っていた希美のことを訊ねる。リティシアの答えはこうだった。
「向こうで悪魔達を集めて魔術の講習会をやっとるで。お姉ちゃん物知りやな」
「何やってるんだか」
希美のことをお姉ちゃんと呼んだが、リティシアと希美ではリティシアの方がずっと年上なんじゃないだろうか。前世の妹なんだし今いくつなんだろうと光輝は気になったが、女性に年を訊ねるのが失礼なことぐらいは知っていた。
それに一万と何才みたいな希美が喜びそうな言葉が出てきても困ってしまう。
これ以上希美を調子に乗らせないためにも、リティシアに余計な気を使わないためにも黙っておくことにする。
光輝は自分の事情を説明することにした。
「人間界と連絡を取りたいんだけど、電話が繋がらなくて」
「それならあっちの通信機を使えばええで」
リティシアに案内されてついていく。
そこにあったのは郁子が前に使っていた大きな通信機だった。まさか自分がこれを使うことになるとは思わなかった。
光輝はリティシアに教えられるままに操作した。あの時の郁子は苦戦していたが、今度はすぐに繋がった。
「はい、凛堂です」
「凛堂さん? 調子はどう?」
「大分良くなった。明日には学校に行けそう」
「無理しないで。辛かったら休んでもいいから」
「うん」
「それで……やっぱりいいや」
「?」
光輝は郁子に『明日もこっちにいることになったから学校のことをよろしく』と頼もうと思っていたのだが、彼女が本調子では無さそうだったので止めることにした。
自分も無理して魔界に来ると言いかねない。それも学校をさぼってまで。
人に迷惑を掛けるつもりはない光輝は何気なさを装って言った。
「それじゃあ、今日はゆっくりと休んで。また今度学校で」
「うん、またね」
通話を終える。気づくとすぐ間近にリティシアの顔があってびっくりした。彼女はにやにやとしていた。
「お兄ちゃんとあのお姉ちゃんってどういう関係なん?」
「どうって、ただのクラスメイトだよ」
友達どころか、こんな騒ぎが起こるまでは話したことも無かった。隣の席にいたが、特に意識することもない他人だった。
少し美人だなぐらいは思っていたが。彼女の方も積極的に他人と関わることはしない口数の少ない少女だった。
だが、リティシアは納得しなかったようだ。さらに突いてきた。
「嘘や。絶対恋人や」
「恋人ってお前なあ」
「お兄ちゃんが外で恋人作ってきたあ」
「ああもう、そんなこと言ってからかってくる妹にはこうだ」
「わひゃひゃひゃ!」
少しくすぐってやるとリティシアはアホみたいに笑い転げた。子犬みたいで面白かったのでつい熱中してしまった。
通り過ぎる悪魔達が仲睦まじい二人の様子に暖かい眼差しを向けてくるのには光輝もリティシアも気付いていなかった。
「ここに前世のお兄ちゃんが住んでたの?」
「前世って……」
光輝は希美の言葉に困惑するが、否定する材料は何も無かった。
ここが前世の光輝が住んでいた城だ。どうやらそのようだった。
「壊れていますな」
「うん」
ゼネルの言葉に頷く。確かに城のあちこちには壊れたような跡があり、瓦礫が転がったり土煙が上がったりしていた。
「わしらが出かけた時はこうで無かったのですが」
「誰か暴れたんやろか」
どうやら城はゼネルとリティシアが出かけている間に壊されたようだ。
復旧しようと、あちこちで悪魔達が修理に追われていた。
光輝はここまで同行してきた隣に立つ隊長アクバンに訊いた。
「何かあったの?」
「竜の襲撃があったのです。今はどこかへ向かってからまた戻ってきて北の山まで去ったようですが」
「奴は人間界に現れたのだ」
「そこでお兄ちゃんがやっつけたんやで」
「さすがは王です。奴はまたいつ来るか分かりません。でも、王がおられれば安心ですね」
褒められても光輝には苦笑いするぐらいしか出来ない。城内へ入って玉座のある部屋にやって来る。
「竜退治には明日向かうとして、今日は我らの歓迎をお受けください」
明日は学校が、とは断れそうに無い雰囲気だった。
「歓迎だって楽しみー」
「パーティーやー」
妹達はうかれているし、光輝は仕方なく歓迎会を受けることになったのだった。
夜も更けて。
明日は戦いがあるからと歓迎会を早めに切り上げさせた光輝は隅っこに移動して電話を掛けることにした。
明日学校を休むことを連絡しておかないといけない。光輝の頼む相手は郁子しかいなかった。
だが、やはりと言うべきか、携帯は圏外だった。
光輝がため息をついているとリティシアがやってきた。
「お兄ちゃん、どうしたん?」
ゼネルやアクバンは明日の準備で忙しそうだったが、彼女は暇そうだった。
「リティシア、希美は?」
一緒にいると思っていた希美のことを訊ねる。リティシアの答えはこうだった。
「向こうで悪魔達を集めて魔術の講習会をやっとるで。お姉ちゃん物知りやな」
「何やってるんだか」
希美のことをお姉ちゃんと呼んだが、リティシアと希美ではリティシアの方がずっと年上なんじゃないだろうか。前世の妹なんだし今いくつなんだろうと光輝は気になったが、女性に年を訊ねるのが失礼なことぐらいは知っていた。
それに一万と何才みたいな希美が喜びそうな言葉が出てきても困ってしまう。
これ以上希美を調子に乗らせないためにも、リティシアに余計な気を使わないためにも黙っておくことにする。
光輝は自分の事情を説明することにした。
「人間界と連絡を取りたいんだけど、電話が繋がらなくて」
「それならあっちの通信機を使えばええで」
リティシアに案内されてついていく。
そこにあったのは郁子が前に使っていた大きな通信機だった。まさか自分がこれを使うことになるとは思わなかった。
光輝はリティシアに教えられるままに操作した。あの時の郁子は苦戦していたが、今度はすぐに繋がった。
「はい、凛堂です」
「凛堂さん? 調子はどう?」
「大分良くなった。明日には学校に行けそう」
「無理しないで。辛かったら休んでもいいから」
「うん」
「それで……やっぱりいいや」
「?」
光輝は郁子に『明日もこっちにいることになったから学校のことをよろしく』と頼もうと思っていたのだが、彼女が本調子では無さそうだったので止めることにした。
自分も無理して魔界に来ると言いかねない。それも学校をさぼってまで。
人に迷惑を掛けるつもりはない光輝は何気なさを装って言った。
「それじゃあ、今日はゆっくりと休んで。また今度学校で」
「うん、またね」
通話を終える。気づくとすぐ間近にリティシアの顔があってびっくりした。彼女はにやにやとしていた。
「お兄ちゃんとあのお姉ちゃんってどういう関係なん?」
「どうって、ただのクラスメイトだよ」
友達どころか、こんな騒ぎが起こるまでは話したことも無かった。隣の席にいたが、特に意識することもない他人だった。
少し美人だなぐらいは思っていたが。彼女の方も積極的に他人と関わることはしない口数の少ない少女だった。
だが、リティシアは納得しなかったようだ。さらに突いてきた。
「嘘や。絶対恋人や」
「恋人ってお前なあ」
「お兄ちゃんが外で恋人作ってきたあ」
「ああもう、そんなこと言ってからかってくる妹にはこうだ」
「わひゃひゃひゃ!」
少しくすぐってやるとリティシアはアホみたいに笑い転げた。子犬みたいで面白かったのでつい熱中してしまった。
通り過ぎる悪魔達が仲睦まじい二人の様子に暖かい眼差しを向けてくるのには光輝もリティシアも気付いていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる