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第1章
第12話
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その後、私達は教会の近くにあるカフェで昼食を食べることになった。そこでは色んな話をしたのだが、その中でも一番盛り上がったのはやはりウィルのことだった。
「まさか生きていたなんて信じられないわね……」
そう言った私に同意するように頷く彼女を見て嬉しくなった。やはり姉妹だけあって考えることは同じなのだと実感した瞬間でもあったからだ。その後も会話を続けていたのだが、ふとあることを思い出したかのように訊ねられた。
「そういえば最近、殿下とはどうなの?」
何気なく聞いたつもりなのだろうが、それを聞いた途端私の顔が曇ってしまったのを見て彼女は驚いていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
心配そうに顔を覗き込んでくる彼女を見て申し訳ない気持ちになった。何故なら、昨日の出来事を話すわけにはいかなかったからである。言えばきっと心配をかけてしまうと思ったからだ。
「……何でもないわ」
そう言って誤魔化すことにした。しかし、そんな私の様子を見て何かを察したのかそれ以上聞いてくることはなかった。
「そう……ならいいんだけど……」
そう言うと、話題を変えようとしてくれたので内心ホッとしながら相槌を打つのだった。その後は他愛のない会話をしていただけだったのだが、不意に気になることを言われた。
「ところでなんだけどさ、今度殿下に会う予定とかはあるのかしら?」
その質問に首を傾げていると、彼女は続けて言った。
「ほら、前に言ってたじゃない? 結婚するかもって言ってたでしょ? だからそろそろなのかなって思って聞いてみたのよ」
確かにその話は以前にもしたことがあるが、今はもう婚約破棄された後だったので完全に忘れていたのだ。なので正直にそのことを話したところ、彼女は残念そうに呟いた。
「そっか……残念だけど仕方ないわよね」
その言葉にどう反応すればいいのかわからなかったので黙っていることしかできなかった。すると、今度は逆に質問された。
「それでどうするの? これからはウィルと付き合うの? それともやっぱり殿下と結婚するのかしら?」
その問いかけにドキッとしたが、平静を装って答えた。
「まだわからないわ。だってこれからどうなるのかもわからないし……」
「まあ、それもそうね」
私の言葉に同意した彼女はそれ以上何も聞いてこなかった。そのことに安堵したものの、同時に不安に思ったのも事実だった。なぜなら、今後どうなるかなんて誰にも予想できないのだから……。
そんなことを考えていると、ふいに声をかけられた。
「大丈夫? さっきからぼーっとしてるみたいだけど……」
その声にハッとして顔を上げると目の前に彼女の顔があった。どうやら考え事をしているうちに上の空になっていたようだ。慌てて謝罪の言葉を口にしたが、彼女は首を横に振った。
「別にいいわよ。それよりも具合が悪いんだったら無理しない方がいいんじゃない?」
そう言われたものの、これ以上迷惑をかけたくなかったので大丈夫だと答えた。だが、それでも引き下がろうとはしなかった。それどころか真剣な表情で見つめられてしまったので観念した私は正直に打ち明けることにした。
「実はね、ここに来る前の事なんだけどね……」
そこまで言うと一旦言葉を区切った後で再び話し始めた。その内容を聞いた彼女は驚いていたが、何も言わずに最後まで聞いてくれた。
全てを話し終えた時、彼女は難しい顔をしていたが、やがて私の方を向くと言った。
「なるほどね……それは辛かったでしょう」
同情するような眼差しを向けられて泣きそうになったが何とか堪えることができた。ここで泣いてしまったらますます心配をかけてしまうと思ったからだ。そんな彼女は私の頭を撫でながら言った。
「話してくれてありがとう。でも、もう大丈夫よ。貴女のことは私が守ってあげるから安心してちょうだい」
その言葉に思わず涙が出そうになったが何とか堪えることに成功した。そして、小さく頷いて返事をすると優しく抱きしめられた。その瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。それが何なのかはわからなかったが、不思議と嫌な気分にはならなかった。むしろ心地良いと思えるほどだった。
それからしばらくの間抱き合っていた私たちはどちらからともなく離れると、お互いに見つめ合ったまま微笑み合っていた――。
「まさか生きていたなんて信じられないわね……」
そう言った私に同意するように頷く彼女を見て嬉しくなった。やはり姉妹だけあって考えることは同じなのだと実感した瞬間でもあったからだ。その後も会話を続けていたのだが、ふとあることを思い出したかのように訊ねられた。
「そういえば最近、殿下とはどうなの?」
何気なく聞いたつもりなのだろうが、それを聞いた途端私の顔が曇ってしまったのを見て彼女は驚いていた。
「どうしたの? 何かあったの?」
心配そうに顔を覗き込んでくる彼女を見て申し訳ない気持ちになった。何故なら、昨日の出来事を話すわけにはいかなかったからである。言えばきっと心配をかけてしまうと思ったからだ。
「……何でもないわ」
そう言って誤魔化すことにした。しかし、そんな私の様子を見て何かを察したのかそれ以上聞いてくることはなかった。
「そう……ならいいんだけど……」
そう言うと、話題を変えようとしてくれたので内心ホッとしながら相槌を打つのだった。その後は他愛のない会話をしていただけだったのだが、不意に気になることを言われた。
「ところでなんだけどさ、今度殿下に会う予定とかはあるのかしら?」
その質問に首を傾げていると、彼女は続けて言った。
「ほら、前に言ってたじゃない? 結婚するかもって言ってたでしょ? だからそろそろなのかなって思って聞いてみたのよ」
確かにその話は以前にもしたことがあるが、今はもう婚約破棄された後だったので完全に忘れていたのだ。なので正直にそのことを話したところ、彼女は残念そうに呟いた。
「そっか……残念だけど仕方ないわよね」
その言葉にどう反応すればいいのかわからなかったので黙っていることしかできなかった。すると、今度は逆に質問された。
「それでどうするの? これからはウィルと付き合うの? それともやっぱり殿下と結婚するのかしら?」
その問いかけにドキッとしたが、平静を装って答えた。
「まだわからないわ。だってこれからどうなるのかもわからないし……」
「まあ、それもそうね」
私の言葉に同意した彼女はそれ以上何も聞いてこなかった。そのことに安堵したものの、同時に不安に思ったのも事実だった。なぜなら、今後どうなるかなんて誰にも予想できないのだから……。
そんなことを考えていると、ふいに声をかけられた。
「大丈夫? さっきからぼーっとしてるみたいだけど……」
その声にハッとして顔を上げると目の前に彼女の顔があった。どうやら考え事をしているうちに上の空になっていたようだ。慌てて謝罪の言葉を口にしたが、彼女は首を横に振った。
「別にいいわよ。それよりも具合が悪いんだったら無理しない方がいいんじゃない?」
そう言われたものの、これ以上迷惑をかけたくなかったので大丈夫だと答えた。だが、それでも引き下がろうとはしなかった。それどころか真剣な表情で見つめられてしまったので観念した私は正直に打ち明けることにした。
「実はね、ここに来る前の事なんだけどね……」
そこまで言うと一旦言葉を区切った後で再び話し始めた。その内容を聞いた彼女は驚いていたが、何も言わずに最後まで聞いてくれた。
全てを話し終えた時、彼女は難しい顔をしていたが、やがて私の方を向くと言った。
「なるほどね……それは辛かったでしょう」
同情するような眼差しを向けられて泣きそうになったが何とか堪えることができた。ここで泣いてしまったらますます心配をかけてしまうと思ったからだ。そんな彼女は私の頭を撫でながら言った。
「話してくれてありがとう。でも、もう大丈夫よ。貴女のことは私が守ってあげるから安心してちょうだい」
その言葉に思わず涙が出そうになったが何とか堪えることに成功した。そして、小さく頷いて返事をすると優しく抱きしめられた。その瞬間、胸の奥が熱くなるのを感じた。それが何なのかはわからなかったが、不思議と嫌な気分にはならなかった。むしろ心地良いと思えるほどだった。
それからしばらくの間抱き合っていた私たちはどちらからともなく離れると、お互いに見つめ合ったまま微笑み合っていた――。
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