俺がロボットに乗って活躍するぜ!

けろよん

文字の大きさ
15 / 22
第四章 桃乃と律香と遊ぶ日曜日

第15話 朝から来た二人

しおりを挟む
 隼人が部屋にやって来ると博士がテーブルの席についていつものように新聞を読んでいた。
 桃乃と律香も一緒にいて、彼女達はテレビを見ていた。桃乃が来ているなら律香も来ているか。二人は仲の良い友達だ。そのことに不思議は無かった。
 二人が見ているのは朝の子供向けの番組だ。
 そわそわとした様子の桃乃の隣で、律香が振り返って声を掛けてきた。

「お兄さん、おはよう」
「ああ、おはよう。お前も来てたんだな」
「うん、朝からもーちゃんに起こされてね。もう参っちゃうよ」
「まあ、桃乃がはしゃぐ気持ちは分かるよ。そりゃ来たいだろうってな」
「分かるの!?」

 律香はなぜか驚いたように目を丸くしていた。その隣で桃乃が律香の上げた声に驚いたように肩をびくっとさせていた。
 ロボットに乗れるんだからそりゃ乗りたいと来るのは普通だろと隼人は思うのだが。桃乃はテレビを見たままだ。
 今いいところなのか、その頬は少し紅潮しているように感じられた。
 隼人は考えて、やっぱり一つしか思いつかない答えを口にした。

「そりゃ分かるだろ。お前らはロボットに乗れるんだもんな。そりゃ乗りたいだろうなってことぐらいはな」
「そうですね。ロボットに乗るの楽しいですもんね。お兄さんにとっては」
「ん?」

 律香は何故か想定通りの当然のことを答えながら、呆れているような表情を見せていた。
 何か違っていたのだろうか。隼人は不思議に首を傾げた。
 そこでアニメがCMに入って、桃乃がやっと振り返って声を掛けてきた。
 彼女は感情を抑えるように口を引き結びながら、とても真摯で真面目な顔をしていた。
 子供が子供向けのアニメを見て興奮するのが恥ずかしいと思っているのだろうか。別にそんなことはないんだから無理をしなくていいと隼人は思う。
 桃乃は息を吸って、すぐに言葉を発してきた。

「いえ、今日はロボットに乗りに来たわけじゃないんです。隼人さんとその……遊びに来たんですよ!」
「遊び?」

 そう言われて隼人は思い出す。前に博士から遊んでいると言われた時のことを。ロボットに乗るトレーニングをしていたことをそう言われたことは心外だったことを。
 あれからすぐに桃乃を迎えに行ったんだっけ。律香もロボットに乗るようになったり、あれからいろいろあったものだ。
 考えていると途中で桃乃が言葉を続けてきた。今度は少し声をごにょごにょと濁すようにしながら。

「だからその……出来たら大人の遊びを隼人さんと……うきゃ、言っちゃった」
「もーちゃん……」

 律香は少し呆れ顔。まあ、気持ちは分かる。
 桃乃は大人のパイロットがやるようなトレーニングをしたいと言っているのだから。
 積極的な彼女に、隼人も前向きに答えることにした。

「お前の気持ちはよく分かるぜ。早く一人前になりたいんだよな」
「はい!」

 元気に答える桃乃。その姿が小学生ながらとても素敵で凛々しく思えた。
 博士の発明を無邪気に見ていた子供の頃の自分を思い出すようだった。
 だが、やる気があるからこそ、隼人は彼女が無茶をしないように釘を刺しておかないといけないと思った。

「でもよ、お前にはやっぱりまだ大人のやることは早いと思うんだ」
「そうですか……」

 桃乃はしょんぼりしてしまった。律香が何かフォローしようと動きかけるが、その前に隼人は続きの言葉を口にした。

「何もするなと言っているわけじゃない。急ぐことはないと言っているんだ。まずは今出来ることをだな。俺と一緒にやって行こうぜ!」
「はい!」

 隼人は手を差し伸べる。桃乃はその手を取って笑顔で答えてくれた。



 さて、小学生のトレーニングといっても何をすればいいのだろうか。
 隼人は考えて、小学生のやることは小学生に訊くことにした。

「お前ら、いつもは何をやって遊んでいるんだ?」
「縄跳びとか」
「オセロとか」
「ふむ」

 何とも小学生らしいシンプルな答えだ。
 やはり何か特別な訓練をしているわけじゃないらしい。当然か。彼女達は正規の軍人でも何でも無い、ただパイロットに選ばれただけの少女なのだから。
 ならばまずは普通に遊ぶことから始めようか。
 隼人はそう決めて、遊ぶ道具のある場所を考えた。

「倉庫に行こうか。あそこならいろんな物があるからな」
「隼人さんと倉庫に……」

 桃乃が何故か照れている。その隣で律香が訝し気に訊いてきた。

「閉じ込めたりしませんよね」
「しねえよ」

 小学生だとまだああいう薄暗い場所を怖がる年代なのだろうか。
 隼人も昔はちょっと不気味で怖いと思ったことを思い出して苦笑してしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...