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番外編2
デジレの恋9
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「なんですって! そんなこと、絶対に、許さないわ!」
夜中に、階下から、母のヒステリックな金切り声が聞こえてきた。
長兄も、次兄も、使用人達も眠っているだろうに……はた迷惑な。
「認めないわ! ソレイユ、あなたそれでも当主なの?」
会話の相手は父だ。帰ってきていたらしい。
父の声は通常の音量なので、聞こえてこない。
母の叫びのみが響いている。
(様子を見に行ってみようかしら?)
ベッドから降りた私は、音を立てないように部屋の扉を開けた。
廊下は薄暗く、所々に申し訳程度の灯りが設置されているだけ。
遠目に様子を見るなら見つかることはない。
階段のある場所まで進むと、邸のエントランス付近で父と母が向かい合っていた。
「こんな邸のど真ん中で……」
どうりで、声がよく響くはずだ。
母は尚もキーキーと文句を口にしている。
私は、会話内容を聞き取る為に、もう少し二人に近づくことにした。
「離婚だなんて、どういうことなの!」
「もう、君とはやっていけないよ、アデライド」
消え入りそうな声で、父が言葉を吐き出した。
「そんな話、認められるとでも思っているの?」
「ああ、正式に申し立てる」
「嫌よ! 私は離婚だなんて許さない! この国では双方の合意がないと、離婚の申し立ては出来ないはずよ」
取り乱す母に、父はそれ以上何かを告げることはなかった。
離婚……
その言葉の衝撃は大きかった。
父と母は不仲ではあるが(父が一方的に母を避けている)、まさか離婚にまで発展するとは思っていなかった。
私はその場を離れようと彼等から視線を外す。
家庭崩壊。
そんな言葉が浮かんだが、よく考えれば、もう随分昔から私達の家庭は破綻している。
きっとこの展開は起こるべくして起こったものなのだ。
「デジレ」
「っ……お兄様?」
急に名前を呼ばれて、心臓が飛び出そうになったが、なんとか声を抑えることが出来た。
声のした方を向くと薄闇に次兄の姿が浮かんでいる。
甘く整った顔の次兄は、闇の中でも美しい。
彼には日の光の中よりも、夜の闇が似合うと思った。
「心配いらないよ」
「……何がですか」
やや険のある声になってしまったのは仕方がない。
次兄が迎えを寄越してくれなかったせいで、私は今、軟禁生活中なのだから。
心配ないなどと言われたら腹が立つ。
彼は片眉を上げて、肩を竦めた。
表情からは、次兄が何を考えているのか掴むことは不可能だ。
「やっぱり、今は話さないでおこうかな。エリクとは上手くやっていけそう?」
「なっ……」
なぜ、次兄がエリクとのことを知っているのか。
動揺する私を、兄は面白そうに観察している。
「その様子だと、大丈夫そうだね」
「な、何なのっ!」
「そんなに大きな声を出したら二人に見つかってしまうけど、いいの?」
「っ……」
私は慌てて口をつぐんだ。
そんな様子を目にした次兄の目が細まる。
「父がボドワン夫人と再婚したら、その家族とも親しくする機会があるだろうと思って」
「え……あ……」
ああ、そういうことなの?
エリクとの関係に気付かれたと思い、一人で先走ってしまった。
(私ったら、恥ずかしい。お父様は、お母様との離婚後に、ボドワン夫人と再婚する気なのね)
そう言えば、以前からボドワン夫人を家に住まわせると言っていた。
いよいよ、それを実行に移す気なのだろう。
次兄は、用は済んだとばかりに、さっさと部屋に戻ってしまった。
長兄は、部屋から出て来ない。
この騒音の中、熟睡しているのだろうか……すごい神経だ。
父と母は、まだ言い争いを続けていた。
夜中に、階下から、母のヒステリックな金切り声が聞こえてきた。
長兄も、次兄も、使用人達も眠っているだろうに……はた迷惑な。
「認めないわ! ソレイユ、あなたそれでも当主なの?」
会話の相手は父だ。帰ってきていたらしい。
父の声は通常の音量なので、聞こえてこない。
母の叫びのみが響いている。
(様子を見に行ってみようかしら?)
ベッドから降りた私は、音を立てないように部屋の扉を開けた。
廊下は薄暗く、所々に申し訳程度の灯りが設置されているだけ。
遠目に様子を見るなら見つかることはない。
階段のある場所まで進むと、邸のエントランス付近で父と母が向かい合っていた。
「こんな邸のど真ん中で……」
どうりで、声がよく響くはずだ。
母は尚もキーキーと文句を口にしている。
私は、会話内容を聞き取る為に、もう少し二人に近づくことにした。
「離婚だなんて、どういうことなの!」
「もう、君とはやっていけないよ、アデライド」
消え入りそうな声で、父が言葉を吐き出した。
「そんな話、認められるとでも思っているの?」
「ああ、正式に申し立てる」
「嫌よ! 私は離婚だなんて許さない! この国では双方の合意がないと、離婚の申し立ては出来ないはずよ」
取り乱す母に、父はそれ以上何かを告げることはなかった。
離婚……
その言葉の衝撃は大きかった。
父と母は不仲ではあるが(父が一方的に母を避けている)、まさか離婚にまで発展するとは思っていなかった。
私はその場を離れようと彼等から視線を外す。
家庭崩壊。
そんな言葉が浮かんだが、よく考えれば、もう随分昔から私達の家庭は破綻している。
きっとこの展開は起こるべくして起こったものなのだ。
「デジレ」
「っ……お兄様?」
急に名前を呼ばれて、心臓が飛び出そうになったが、なんとか声を抑えることが出来た。
声のした方を向くと薄闇に次兄の姿が浮かんでいる。
甘く整った顔の次兄は、闇の中でも美しい。
彼には日の光の中よりも、夜の闇が似合うと思った。
「心配いらないよ」
「……何がですか」
やや険のある声になってしまったのは仕方がない。
次兄が迎えを寄越してくれなかったせいで、私は今、軟禁生活中なのだから。
心配ないなどと言われたら腹が立つ。
彼は片眉を上げて、肩を竦めた。
表情からは、次兄が何を考えているのか掴むことは不可能だ。
「やっぱり、今は話さないでおこうかな。エリクとは上手くやっていけそう?」
「なっ……」
なぜ、次兄がエリクとのことを知っているのか。
動揺する私を、兄は面白そうに観察している。
「その様子だと、大丈夫そうだね」
「な、何なのっ!」
「そんなに大きな声を出したら二人に見つかってしまうけど、いいの?」
「っ……」
私は慌てて口をつぐんだ。
そんな様子を目にした次兄の目が細まる。
「父がボドワン夫人と再婚したら、その家族とも親しくする機会があるだろうと思って」
「え……あ……」
ああ、そういうことなの?
エリクとの関係に気付かれたと思い、一人で先走ってしまった。
(私ったら、恥ずかしい。お父様は、お母様との離婚後に、ボドワン夫人と再婚する気なのね)
そう言えば、以前からボドワン夫人を家に住まわせると言っていた。
いよいよ、それを実行に移す気なのだろう。
次兄は、用は済んだとばかりに、さっさと部屋に戻ってしまった。
長兄は、部屋から出て来ない。
この騒音の中、熟睡しているのだろうか……すごい神経だ。
父と母は、まだ言い争いを続けていた。
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