正統派RPGを爆破する。

kamekichi

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早々爆死の台頭

大怪獣バトル

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時間は少し遡る…









ミサキ
(爆弾、あと3つ…)




作戦開始から約2分と少しが経過した。

ミサキは爆弾を順調に湖底に仕掛けていき、現在8つ目を仕掛けている。


水上では少し苦戦していた。

セイジが放ったジャイアント・バットが単騎で水龍を挑発しているのだが…

空中という水棲生物に対する絶対的なアドバンテージを最大限に利用しているにも関わらず、マイとメイの回復魔法を常に受け続けないと秒殺されるほどに素の能力に差があった。

しかし生命線とも言えるマイとメイのMPが早くも底が見えてきた。




マイ・メイ
「セイちゃん、もう持たないよぉ~」

セイジ
「マジか…
予定より消耗が激しいな…
マサト君、爆弾設置はあとどれくらい?」

マサト
「あと20秒!
20秒あれば終わるぞ!」

セイジ
「そうか…
仕方ない、アレを使うか…
飯田さんジャイアント・バット、フルスロットルだ!!」




セイジの命令を受けたジャイアント・バットは赤いオーラを纏った。

そして俊敏さが通常の3倍程に上昇して、絶え間ない水龍の攻撃を全て避け始めた。




マサト
「え、飯田さん(ジャイアント・バットのニックネーム)すげえやん!」

セイジ
「でもこの技は30秒限定で、1度使用するとその魔物は3日間呼び出せなくなるんだ…」

マサト
「捨て身か…
頑張れ飯田さん!!
負けるな飯田さん!!
てかネーミングセンス…」




飯田さん…

ジャイアント・バットの活躍のおかげで時間が稼げ、なんとか爆弾を仕掛けられたミサキ。

急いで陸へ向かうが…

暴れまわる水龍の尻尾が運悪く当たってしまい、ミサキは意識を失う。

それと同時くらいにジャイアント・バットは効果限界がきて力尽きた。




セイジ
「マサト君、あれって…」




意識を失って変身が解けたミサキが浮かんでくる。

そしてセイジが気付くよりも早くマサトは湖に飛び込んでいた。

スキルやジョブの補正無しで、自分の運動神経だけで荒れる湖を泳ぎ…

ミサキのもとへ到達した。




マサト
「セイジ!!
後で回復頼む!!」




マサトはミサキを抱き抱えて湖底の爆弾を起爆した…




爆発の瞬間、地震のように大地が揺れ…




巨大な高波が起こり…




湖の周囲には数秒間のゲリラ豪雨が降り…




少し遅れて大量の魚が降り注ぎ…




まるで天変地異のような光景になっていた。




そして作戦通りに大空へ打ち上げられた水龍は、湖のすぐ横の森に落下した。




セイジはマイ、メイ、砂漠狼デザート・ウルフにマサトとミサキの捜索を指示し、自身は水龍が落ちた場所へ向かう。




セイジ
「まさかあんなにも強大な威力とは思わなかった…
ネットの記事の数倍はすごい人だな…
………。
無事だといいのにな…」




マサト、ミサキ、マイ、メイ、飯田さん…

みんなの頑張りを無駄にしないためにも、セイジは森を掛ける。

しかしこの時…

予想外で、しかも致命的な勘違いを知る…




セイジ
「おいおい、ウソだろ…」




水龍は森でも暴れまわっている。

そう、水棲生物だから陸上では無力だろうという事が勘違いで…

陸上でも戦える性質を持っていたのだった。




セイジ
「あんな化け物相手に通用するかはわからないけど…
君が唯一の頼りだ!
きゃしーパイセン!任せたぞ!!」




セイジが召喚できる魔物の中で、最高の戦闘力を持つ魔物…

[きゃしーパイセン]

そう名付けられたのはセイジがタマゴから育てた魔物で、
種族名は[コング・ザ・コング]
超大型のゴリラだ。

圧倒的な物理攻撃と、巨体に似合わぬ俊敏さを併せ持つ魔物。

体のサイズで比べると水龍とほとんど互角に見える。

しかし戦いは背比べではない…


水龍はいきなりきゃしーに噛み付く。

寸前で避けて水龍の頭部に拳を放つ。

しかし水龍の攻撃の本命は視覚外から尻尾での凪払いだったようで、きゃしーの背中を打ち付ける…


初手は相討ちだったようだ。

しかし物理攻撃ではきゃしーが優勢のようで、きゃしーはすぐに体勢を整えたが水龍は少しよろけた。




『ヘビがゴリラに勝てるわけないじゃん。』




セイジは猛攻を指示し、それに応えたきゃしーは水龍に飛び掛かる。

飛び膝蹴りからのジャブで距離を計り、渾身のアッパー…

のけ反った所に岩をも砕くラリアット。

そしてトドメに全体重をのせたエルボードロップを受けて水龍は地面に沈む。




『ごめんねぇ~
今のはモロに入ったわね、痛そうだわ♪』

セイジ
「きゃしー、やったのか?」

『全治2ヶ月コースよ、もう立てっこないわ。』




勝利の咆哮をあげるきゃしー。

しかしきゃしーの背後で動く影…




セイジ
「きゃしー後ろ!!」




セイジの声に反応して状況を察知し、後ろを振り返らずにそのまま横に回避をするきゃしー。




セイジ
「大丈夫か?」

『大丈夫、まだ生きてるわよ♪
でも左腕は…
ダメそうね、動かすと出血が止まらなくなるわ。』




水龍が放った超高圧水流によって左肩あたりに深い裂傷ができた。

きゃしーにとってはそれだけでは致命傷にはならないが、しかし出血は体力を少しずつ奪う…




『セイちゃん、なにか作戦はないの?
できれば…
単騎決戦だと嬉しいわね…』




先程のダメージを感じさせない程に堂々と構える水龍と、
真っ赤に染まる左腕を庇うように右半身を前に出して構えるきゃしー…





「うわぁぁぁああ!
飛びすぎた~!!」




張り詰めた空気をぶった切るように声が聞こえてきた。

セイジはまわりを見渡す。

しかし声の主はいない。





「ぶつかるー!!
避けてー!!」




声の主を見つけたきゃしーは後方へ跳んだ。

きゃしーの視線の先にあるものを見付けたセイジは開いた口が塞がらなかった。

なぜなら猛スピードで龍が飛んで来ていたからだ…




セイジ
「もしかして…
ミサキちゃんなの?」

ミサキ
「カタパルト作戦大成功!!」

セイジ
「カタパ…えっ?なに?」




飛んで来た龍…

ミサキの背からマイとメイとマサトが降りてきた。




マイ
「あのね、セイちゃん。
この人たちバカだよ。」
メイ
「でもね、セイちゃん。
すごく楽しかったよ♪」

セイジ
「あ、うん。」
(ヤバい、説明してくれそうな人が1人もいない…)


ミサキ
「うおっ!
うなぎとゴリラ!
どっちが敵?両方?」

セイジ
「ゴリラは仲間だよ!
うなぎが敵!
えっ?うなぎ?
まあいいか…
そう!敵はうなぎ!
水龍だけどうなぎ!」

ミサキ
「おっけい任せろー!!」









爆風で飛ばされて弱っていたマサトとミサキを見つけたマイとメイ。

飯田さん作戦で残りわずかだったMPを使いきってマサトとミサキに回復魔法をかける。

そして回復したマサト達だが…




マサト
「マイちゃんメイちゃん、セイジはどっちに行った?」

マイ・メイ
「わかんない。」

マサト
「おい犬っころデザート・ウルフ、セイジはどこや?」

デザート・ウルフ
『バカ者!俺は犬じゃねえ!狼だ!』

マサト
「犬語なんかわかるわけないやんけ…」




デザート・ウルフ、犬と呼ばれてキレる。

しかし残念ながらテイマー以外の人間にはわんわん吠えているだけにしか聞こえない…




デザート・ウルフ
『お前いつか絶対噛む。
まあいい、こっちだ!着いてこい!』

マサト
「おっ、案内か。ご苦労。」




デザート・ウルフを追いかけて走り出すマサト。

しかし…




ミサキ
「マサト君!」

マサト
「えっ?なに?」

ミサキ
「ミー走るの苦手なんだ。
遅いし、すぐ疲れるし。」

マサト
「うん。」

ミサキ
「だから適当に早いやつに変身しようとして変身リスト見てたの。」

マサト
「うん。」

ミサキ
「そしたら…」




マサトの目の前に突然、爆発で吹き飛ばしたはずの水龍が現れた。




ミサキ
「ほら見て!うなぎ!」

マサト
「なるほど、あの時うなぎに叩かれて気絶してたんか。」

ミサキ
「そうみたい。
だからみんなミーに乗って一緒に行こうよ~」

マサト
「それやったらいい方法があるんやけど…」









セイジ
「つまり水龍が爆発耐性あるのを逆に利用して爆風で飛んで来たの?」

マサト
「おう!かなり早かったぞ~」

セイジ
「なるほど、ネット記事より数段クレイジーだね…」




マサト達が楽しそう?に話している目の前では大怪獣バトルが繰り広げられていた。

ミサキと水龍は同じ耐性で同じ攻撃手段なので完全互角。

そこにきゃしーが加わるので優勢はこちら…

というわけではないようだ。




きゃしー
『どけ!小娘!
お前は後ろであたしのサポートしてればいいのよ!』 

ミサキ
「ちょっとゴリラ邪魔よ…
ええい!噛んじゃお♪」

きゃしー
『いてえな小娘!
てめえから先にぶっ飛ばしてやる!!』




どうやらミサキときゃしーの相性は最悪なようだ。

こうして戦いは三つ巴になっていき…

というか途中から水龍は置いてけぼり気味になっている。




セイジ
「おい!きゃしー!
いい加減に仲良くしてくれよ!!
水龍に負けたらもうブラッシングしてやんないぞ!!」

マサト
「ミーちゃん頼むわ…
ゴリ子と協力してうなぎ倒してくれや~
勝ったら鰻丼、負けたら魚肉ソーセージな。」


きゃしー
『ちょっと待ってよセイちゃん…
わかったわよ、ちゃんとやるわよ!』

ミサキ
「肝吸いは?
ねえ肝吸いは?」

マサト
「わかった、勝ったら鰻丼と肝吸いな。」

ミサキ
「よっしゃー!!
即効でシメてやる!!」


マサト・セイジ
「はぁ…」




そこからの戦いは今までの苦戦がウソのように一方的な展開になった。

きゃしーが華麗な足技で水龍を怯ませ、ミサキ(水龍)が噛み付く。

水龍が魔法を放つと、耐性があるミサキがきゃしーを庇い…

抜群のコンビネーションでものの数分で水龍は倒れた。




マサト
「えっ、ウソやん…」

セイジ
「最初からそれをやってくれよ…」
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