会社をクビになり絶望したので異世界に行ってみた

麻鈴いちか

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第3章 ルーマの盗人

司祭の愛

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第三章 四節 司祭の愛

ハルは昨夜、この事件の真相に気がついた。
そして、四人は宿からとある場所に来て、ある人物を目の前にしていた。

「こんな早い時間にいらっしゃるなんて・・・関心ですね」

「今はお祈りに来たわけじゃない・・・あなたに話があってきたんです」

ハルは力強い表情でその男を見上げた。

「一連の事件の犯人は・・・・司祭、あなたでしょう?」

ハルはきっぱりと宣言した。
すると、司祭は呆れた表情になった。

「はぁ・・・何を言い出すかと思えば・・・」

しかし、ハルの表情は依然として力強かった。

「証拠でもあるんですか?・・・聖職者を犯罪者呼ばわりするなど・・・あってはならないことだ」

司祭の表情にも不愉快さが表れていた。

「証拠は・・・状況証拠しかないです・・・」

「ほう・・・ではお聞かせ願おうか」

司祭は書き物の手を休めると腕を組んだ。
そして、ハルは説明を始めた。

犯行の流れはこうである。

まず、盗みに入る家を決めるが、ここで重要な制約がある。
それは、盗みに入る家が東区、あるいは東区に隣接する他の区の地域でなければならないという条件だ。
なぜなら、下水道は徒歩でしか移動ができない。
それゆえ、東区と真逆に位置する西区での犯行は時間的に不可能なのである。
これは、強盗事件の発生が東区に大きく偏っていたことに矛盾しない。

次に、犯行に際し下水道からその家の蔵に向けて横穴を掘る必要があった。
司祭は教会の関係者であるから、どこにどのように下水道が走っているかが分かっている。
従って、最小距離で目的の場所の直下に来ることができるのだ。

そして、犯行を決行する日。
お目当てのモノを下水道の方に移動させたのちに、蔵の壁に強力な爆薬を仕掛ける。
爆発が起きれば、警備の者を含め人の視線は爆発した場所に目が行き、なおかつそこが脱出経路であると錯覚するのが普通であろう。
しかし、実際のところは地下に逃げ込んでいたのだ。
これも、目撃情報が皆無であることと矛盾しない。

ひょっとすると、蔵の外部しか見張りを付けない家ならば、何日にも分けて物を盗み出すことができたかもしれない。
それが、被害を大きくした要因の一つとして考えられる。

そして、最後に。
司祭を犯人と考える材料がもう一つあった。

ハルは、とある場所を指さした。
彼がさしていたのは、あのアシンメトリーな幾何学模様が彫られた石板であった。

「・・・アレが何だというのだね」

司祭が尋ねる。

「司祭は昨日、あれが何かは知らないとおっしゃっていましたよね・・・」

「いかにも・・・」

「でもあれ、よく見たら何かわかると思うんですよ・・・」

上下左右が区分けされており、円盤を左右に横切るように太く掘られた溝。
そう、この石板はルーマの街を表していたのだ。

上下左右の区分け東西南北の区を表し、街を横切る溝はルーマ川を表しているのだ。
そして、その大きな溝から各区に向けて放射状に伸びる細い溝。
これこそが、この大都市ルーマの下水道のルートを示すものであった。

「それと、ミーカの名のもとにという置手紙ですが・・・あれは、教会を捜査線上から外すための偽装でしょう」

ハルは加えて言った。

「普通、そんなものを現場に残せば真っ先に疑われるのは教会関係者ですからね・・・ですが、あのゼーニ・コバーン区長の人柄と性格をよく知るあなたであればこの策が有効に働くということも計算済みだったのでしょう」

「・・・・」

司祭はただ黙ってハルの話を聞いていた。
そして、大きなため息をつくと再び話し始めた。

「・・・言いたいことはそれだけですか?」

彼の態度は呆れ切ったという感じだった。

「全くお話になりませんね・・・そんな妄想だけで犯人扱いされてはたまったものではない」

しかし、ハルは冷静だった。

「ええ、これは確かに憶測の域を出ない話です・・・ただ・・・」

「ただ?」

司祭の表情が少しだけ神妙になった。

「この憶測を軍に話したらどうなるか・・・本当に憶測にとどまるでしょうか・・・幸い、連れの知り合いが軍人でしてね・・・」

司祭は急に大人しくなった。
表情こそ涼しげなままではあるが、呼吸が明らかに先ほどとは変わっていた。

「まぁ、僕の推理にご満足いただけなくて遺跡調査の許可がいただけないのであれば・・・ここにいる理由はもはやなくなりました・・・明日にでもルーマを発ちますよ。それでは、お元気で」

ハルはそう言うと司祭に背を向け、アキとマルクに自身の前を歩かせた。
そして、最後にヴァイシュが司祭に会釈をし、彼に背を向けハルの後について歩き始めた時だった。

司祭が胸から小さなナイフのようなものを取り出し、それをヴァイシュめがけて投げつけたのだ。

しかし、ヴァイシュはそれをひらりとかわすと、素早く腰から剣を抜き、司祭との間合いを詰めにかかった。
それと同時にハルとアキとマルクの三人は礼拝堂の長椅子の陰に身をひそめた。

司祭もかなりのやり手のようで、ヴァイシュが間合いを詰め切るよりも前に、自身が作業していた机まで下がり、そこに置いてあったサーベルを取り出した。

「仕留め損ねましたか・・・」

司祭の顔つきは冷静だった。

「やはり・・・あなただったのですね?」

ヴァイシュはそう言うと司祭に斬りかかった。
だが、ヴァイシュの剣先はいなされ、次いで司祭の攻撃がヴァイシュを襲った。
しかし、ヴァイシュも譲らずにその攻撃をかわした。

「シロ!いけそうか!?」

ハルが椅子の陰から尋ねた。

「大丈夫です!」

ヴァイシュはハルに背を向けたまま大声で返事をした。

しかし、司祭は攻撃の手を緩めなかった。
司祭の動きはヴァイシュのようなエレガントさには欠けるが、まるで戦場の猛者のようであった。

二人は礼拝堂の中を縦横無尽に駆け巡ったが、ついに司祭は自身の机のところまで追いつめられていた。

「ここまで追いつめられたのは・・・初めてかもしれないですね・・・」

司祭は少し笑みを浮かべるとそう言った。
そして、机の上にあった瓶をヴァイシュの目の前に投げつけた。
瓶が割れた瞬間、そこには火柱が上がった。

「火炎瓶!?」

ヴァイシュは三歩後ろに下がった。
しかし、司祭は間髪を入れずに何かを火の中に放り込んだ。

ヴァイシュは投げ込まれたものが何か一瞬で気がついた。
そして、バク転をしながら慌てて火柱から距離をとった。

しかし、顔をあげるとそこに見えたのは火柱ではなく、剣を突きながら走りこんでくる司祭の姿だった。

爆薬を背に、突っ込んでくるということは刺し違えてでもヴァイシュを殺すという明確な意思表示だった。
ヴァイシュも猛烈な勢いで剣を司祭に向かわせるが、もう手遅れだった。

もはや、ここまで・・・ハルさん、ごめんなさい。

ヴァイシュは心の中で死を覚悟した。

剣がヴァイシュの胸に刺さる直前に火柱の中の爆薬が爆発した。
そして、同時に少女のような叫び声も聞こえた。

「もう、やめて!!」

その少女の叫び声で、司祭の剣先は止まった。
そして、次の瞬間二人は爆風によって飛ばされた。

一瞬意識が遠のく。
だが、すぐに安否を問うハルの声が聞こえた。

「シロ!大丈夫か!!」

ハルはすぐさまヴァイシュのもとに駆け寄ってきた。

「は・・い・・・なん・・・とか」

ヴァイシュは自身の上に覆いかぶさっていた司祭の巨体から抜け出した。
だが、司祭は爆発によって背中にひどいやけどを負っていた。

すると、礼拝堂の前の方から一人の少女が駆け寄ってきた。
その少女の髪の色は赤色で、ウルマン人の特徴を備えていた。

そして、うつぶせで倒れる司祭の前に立ちはだかると両手を大きく広げて叫んだ。

「もうこれ以上先生をいじめないでください!!!」

そう懇願する少女の目には涙が浮かんでいた。

「いいから・・・お前は下がっていなさい」

司祭はうつぶせのままかすれた声でそう言った。

「でも・・・」

すると、ハルはその赤髪の少女の前に出ると笑顔で語りかけた。

「分かった・・・もういじめないよ」

「本当・・・ですか?」

「ああ・・・信じてくれ」

すると、少女はハルの言葉を信じたのか司祭の前から横に避けてくれた。

そして、ハルは司祭のもとによると話しかけ始めた。

「あなたのしたことは許されることではありません・・・」

「・・・・どうやら、私は君を・・・侮っていたようだな・・・」

司祭は自嘲するように言った。

「・・・もう、これまで・・・あとは警備隊なり軍なりに突き出せばいい」

「・・・・」

しかし、ハルは黙ったままだった。
そして、少し考えたのちに再び話し始めた。

「はて・・・僕があなたに受けた依頼は犯人を見つけ出すことだったような・・・」

すると、司祭は笑い始めた。
赤髪の少女はなぜ司祭が笑い始めたのかイマイチ分かっていないようだった。

「はっはっは・・・これは一本食わされた・・・どうやら、私の早とちりだったようだ・・・」

「では、約束の報酬を・・・」

すると、司祭は手元にあったサーベルをハルに差し出した。

「実は私はもともと貴族の出でね・・・とはいっても半分没落したようなものだが・・・これは、その証明になる」

司祭のサーベルには、ユートピア帝国の国章とこの司祭の家のと思しき家紋が描かれていた。

「ですが・・・こんな大切なものをいただいても・・・」

「気にするな・・・もう、私には必要のないものだ・・・黙って受け取りなさい」

ハルは司祭から金色に輝く剣を受け取った。
さらに、司祭は話をつづけた。

「この騒ぎを聞きつけて時期に人が集まってくる・・・早くここを立ち去りなさい」

「ですが、そんな状態のあなたを・・・」

ハルは困惑した。
先ほどまでは敵として戦っていたのだが、今の彼の姿には同情をせざるを得なかった。

「なに・・・うまいことごまかしてみせるよ・・・」

司祭はにやりと笑ってみせた。

「それでは、お元気で・・・」

ハルはうつぶせのまま倒れる司祭にそう声をかけると司祭に背を向け歩き始めた。
司祭はハルたちが教会を出ていくの様子をしばらく眺めていた。

そして、ハルたちは逃げるように教会をあとにした。

「ハルさん!これからどうするんですか?」

アキが小走りになりながら尋ねた。

「とりあえず、中区の大聖堂に向かう・・・」

「しかし!リスクが高すぎではないですか?」

ヴァイシュはこのいざこざが教会側に露見することを恐れていた。

「僕はあとはうまくごまかしてみせる、っていう彼の言葉を信じてるんだ・・・」

しかし、ハルはそれほど気にしている様子はなかった。
むしろ、自分の意見には自信があるようだった。

「分かりました・・・ですが、調査を終え次第早急にルーマを出ましょう」

「ああ・・・」

そういうわけで、ハルたちは大聖堂の遺跡調査に行くことになった。

そして、その時。
ハルはある人とすれ違った。
思わず、興味を惹かれその人を目で追った。

「どうか・・・しましたか?」

アキは不思議そうな様子でハルに尋ねた。

「いや・・・どこかで会ったような気がして・・・」

しかし、その人はすぐに見えなくなってしまった。




そして、一方の教会では・・・
ハルたちが出て行ったあとすぐに司祭が起き上がりながら、口を開いた。

「レイラ・・・こっちに来なさい・・・」

レイラと呼ばれた赤髪の少女はすぐに司祭のもとによると彼を介抱した。

「いいかい?今から言うことを絶対に聞くんだぞ・・・」

「・・・」

レイラは黙ってうなずいた。

「君は子供たちを連れて・・・ここからずっと南のカターヌを目指しなさい・・・今日の昼にちょうど船がある」

「でも・・・先生は・・・?」

レイラは不安そうな様子で尋ねた。

「私はここの司祭だ・・・離れるわけにはいかんよ」

「どうして・・・急すぎます!私もここにいさせてください!」

レイラは泣き始めた。

「ここは君たちが暮らすには窮屈すぎる・・・頼む、私のわがままを聞いてくれ」

司祭はそう言うと、教会の人間の証である白金のネックレスと一枚の手紙を少女に渡した。
少女は涙を流しながら、静かにうなずくと教会の地下へと続く隠し階段に向かって走り始めた。

「ありがとう・・・」

司祭は笑顔でそう言うと、礼拝堂の長椅子の寄りかかった。
レイラも立ち去り静かになった礼拝堂で司祭は自身の生涯を振り返っていた。

殊に、レイラとの出会いが思い出された。

レイラと出会ったのは自分が司祭になって数年・・・。
彼女は東区のスラムに暮らすゴロツキだったな・・・。
でも、教会で保護して一緒に恵まれない子の世話や仕事をするようになって彼女も随分といい子に育った・・・。
そして、私の最期の願いを叶えてくれるほどにたくましくなった・・・。

そんなことが司祭の頭を駆け抜けた。

「もういい・・・もう、十分すぎる・・・」

司祭は自身の幸せをかみしめていた。

すると、突然礼拝堂の扉が開く音がした。

「・・・遅かったですね」

司祭は扉の方を見るとそう言った。
しかし、その人は無言で引き金を引くと確実に司祭の眉間を撃ち抜いた。

司祭は自分の意識がなくなる寸前で走馬燈が見えた。
自身の過去の行いがすべて思い出された。
そして、心の中でつぶやいた。

ああ、神よ。
私は償えたのでしょうか・・・。

そして、礼拝堂は火薬のにおいとともに再び静寂に包まれた。





太陽が少し高い位置に昇ってきたころ。
ハルたちは、遺跡調査の真っ最中であった。
教会は、ハルが司祭からもらった剣を見ると、この間とは打って変わって態度を急変させ、すんなりと遺跡のある大聖堂への扉を開放してくれたのだった。

そして、マルクの両親はルーマにはユートピアの創生がある、と言っていたらしいがそれは真であった。
ここには、神話の形でユートピアの国の成り立ちが書かれていたのである。

「今まで、口伝承の形でしか残っていなかったユートピアの神話が現代語訳された・・・今日は歴史的な日だよ!!」

マルクは興奮を抑えられないようだった。

ただ、ここの遺跡の情報量は半端ではなく、同時に書かれていることのすべてを現代語訳していくことは、目下急いで街を立ち去る必要のあるハルたちには到底不可能な話であった。

とりあえず、ハルがユートピア古語の写経を行い、後日その現代語訳版をみんなで制作するということになった。
そして、写経を終えるとハルたちは急いで大聖堂を出た。

当初、教会から司祭の傷害に対する罪を追及されることを恐れていたハルたちであったが、不思議と教会側からはなんの干渉もなかった。
司祭が言葉通りうまくやってくれたのか、はたまた何か別の大きな力が働いているのか・・・。

どちらにせよこの時、ハルたちは司祭がすでに亡くなっているということなど知る由もなかったのだ。







同じころ、西区の港にはレイラと教会で保護していた子供たちがいた。
レイラは一抹の不安を抱えながらも、カターヌ行きの船に乗り込もうとしていた。

当然、船へと続くタラップの前に立つ乗組員に止められた。

「君たち・・・乗船券は?って・・・ウルマン人の子供?」

その乗組員の態度は、明らかにレイラたちを疑っていた。
そこで、レイラは首にかけてあった白金のネックレスを見せた。

「私は東区教会の助祭のレイラです。今回は司祭の代理でカターヌに行くのですが・・・」

すると、その乗組員の顔が変わった。

「教会の方とはつゆ知らず・・・申し訳ありませんでした!すぐに一等客室をご用意いたします!」

「ええ、お願いするわ」

レイラは物応じしない毅然とした態度でこの局面を乗り切った。
一等客室を使えるというのは棚から牡丹餅であった。

そして、乗組員の案内でレイラたちは豪華な一等客室へと案内された。

「お食事はこちらでお召し上がりになられますか?」

乗組員は丁寧に尋ねた。

「ええ、夕刻にこの子たちの分もお願いね・・・」

「かしこまりました」

その乗組員はぺこりと頭を下げると部屋を出て行った。
そして、レイラはドアを閉めるとその場に崩れ落ちた。

目からは大量の涙があふれ出てきていた。

「お姉ちゃんどうしたの?どこか痛いの?」

子供たちの一人がそう尋ねた。

「ううん・・・なんでもない・・・なんでもないよ」

レイラはそう言うと、その子のことを強く抱きしめた。

しかし、レイラは知ってしまったのだ。
司祭がもうこの世にはいないということを。

それを知ったのは今朝、司祭の命を受けて教会を発った時であった。
レイラは、司祭の遺体の第一発見者の区民の会話を偶然にも聞いてしまっていたのだ。

「ひえぇぇ、今朝はたまげたぜ・・・司祭にちょっと用があったから教会に行ったら死んでるんだもんなぁ・・・それに、むごい殺され方だったぜ・・・脳みそがぶっとんでやんの」

「そりぁ、朝から大変なもん見ちまったなぁ・・・」

「全くだぜ・・・」

司祭が死んだ。
死んだ。

今すぐにでも司祭の元に戻りたい。
そんな気持ちだったが、レイラは自らの気持ちに鞭を打ったのだ。
今すべきことは、この子たちをカターヌまで連れて行くという司祭の命令を果たすことだった。
そして、おそらくこの目的のために司祭はお金を作っていたのだろうということも予想がついた。
なんとしても、彼の願いはかなえなくてはならなかった。

しかし、船に乗った今。
そんな緊張の糸も緩み、今まで我慢していたものがあふれ出てきたのだった。

すると、船が出航の汽笛を鳴らし始めた。

この船はカターヌまでまっすぐ進む。
そう、レイラはやり遂げたのだ。

「先生・・・私、やりましたよ・・・ちゃんと言いつけ・・・守れましたよ」

レイラは子供たちを抱きしめたまま静かに泣いた。






そして、時刻は夕刻。
ハルたちはルーマの街境まで来ていた。

「はぁ・・・今回もなかなかに大変だったなぁ・・・」

ハルは坂を登りながらぼやいた。

「そうですね・・・」

さすがのヴァイシュの相当お疲れのようだった。

「でもよ!兄ちゃんのおかげで歴史的大発見ができたんだぜ!」

だが、マルクだけは元気なようだった。

「あ・・・」

すると、アキがルーマの街の方を振り返ると声を上げた。

そこには、西に傾いた太陽とちらほらと明かりのつき始めたルーマの街並みがあった。
それと、南に向かう大きな船が水平線の向こうに消えようとしているのも見えた。

「綺麗・・・ですね」

そうつぶやく、アキの夕日に照らされた横顔を見てハルは妹のユキのことを思い出した。
この世界にやってきてからもう少しで二か月が経とうとしている。
今頃、現実の世界の日本は六月。
きっと、友達も増えただろうし、暑くもなってきているころだろう。

ハルは一瞬、こんなことをしてていいのだろうかという罪悪感にも似た感情を抱いた。
だが、大聖堂の遺跡調査からこの世界と現実の世界の繋がりがはっきりと見えたのも事実だった。
今は、少しづつでも前進しているのだろう、と自分に言い聞かせるほかなかった。

「ああ、すごく綺麗だ・・・」

ハルはルーマの美しい情景を眺めながら、一歩ずつでも歩み続けなければという覚悟を新たにした。
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