7 / 7
7.魔王様と夜の森
しおりを挟む
私がカイル殿と森での暮らしを始め、最初に行ったことは湖のコインを拾い集める作業だ。
湖に入って、一枚一枚金貨を根気よく拾い集める作業。何せこの森深い場所にはコイン拾いに役立ちそうな道具が大して無いのだ。
ちなみに深い場所に落ちたものは湖の精霊が集めてくれている。一日でもかなりの量が集まり、ここ数日の成果として金貨が山と積もっていたが、全体からすれば我々のやっていることなどまだまだ微々たる量だ。まったく埒が明かない。
ここに来た時に私が吸い取った邪気や毒素は、水の底に金貨がある限り多大に発生し続けるだろう。それではいつまで経っても水質が改善しない。湖が汚れたままでは、それを飲む動物や周囲の土壌にも影響が生じる。巡り巡って人間も森の恵みを口にし、水も飲むだろう。すると徐々に人の心身は乱れ、結果全てが荒んでいく。そしてそのまま放置すれば湖の精霊は消え、汚染が進行し……魔の国のような荒野になる日もそう遠くはないことだろう。
それでは私がわざわざ足を伸ばして人の国に来た意味がなくなる。負の気は確かに私にとって必要な栄養素の一つであるが、食物を口から摂取さえしていればそんなに多く摂取しなくてもいいものなのだ。
森や動物は生きている以上微量ながらも毒を生み、陰気を作るものだ。それを僅かずつでも拝借できればそれで十分足りるだろう。これでもっと人の多い場所に行けば、負の感情がたんとあるに違いない。
村での暮らし……ふふふふ、楽しみだな。
まずは湖の精霊から貰った金貨で小さくとも家と畑を作る。それから牛やヤギを飼えるだけの収入を手に入れて、それから……
「アンヘルさん、先ほどからずっとニヤついてますが……あとヨダレが出てますが、何か良いことがありましたか?」
「あ、すまない。少し妄想が膨らんだ」
「妄想ですか、それはそれは……
というかそろそろ陽が落ちます。帰りましょう」
ここから管理人小屋までは少々距離がある。日が暮れると夜行性の獣が徘徊するからか、カイル殿はいつもまだ陽のあるうちに作業を切り上げて撤収していた。
しかし彼の実力があれば、獣の群れごときなら軽く躱せるだろうに。一体何を恐れているのだろうか。
もしや、私が獣に襲われるのを危惧しているとでもいうのか? いや、まさかな……?
そうこうしているうちにカイル殿はいそいそと帰り支度を整えて私を待っていた。私は慌てて湖から上がり、足を拭いてカイル殿のもとへ急いだ。
管理小屋には数日に一度の頻度でカイル殿の故郷の村から必要物資が届けられている。丁度今日がその日だったようで、カイルが小屋のドアを開けると木箱が数個置いてあった。その中からはいい匂いがしていて、私は大きく息を吸い込んでニンマリとした。
木箱の中は必要最低限の調味料、野菜や穀物、そして――焼きたてのパン!
この香ばしく中の生地がふわっとしたパンが、目下私の大好物だ。ドライフルーツやクルミがバランスよく入っていて、塩味が絶妙で甘みもある。これを作った職人に称賛を送りたいと言ったところ、カイル殿は少し笑った。
「これは、俺の幼馴染のシンシアが作ったパンなんですよ。彼女のお袋さんが村一番の料理上手で、その味をしっかり自分のものにしたみたいですね」
「そうか、料理……私も覚えないとな。
人として暮らしていく上で、食事は大切だからな」
「まだ時期尚早です。……アンヘルさんにはここから出る前に、最低限人の国のルールを覚えてもらう必要がありますから」
「う……わ、分かった。頑張る」
「はい、頑張りましょう」
そう言って、食卓越しのカイル殿は私にとろけるような極上の笑顔を見せた。
時折カイル殿は負の感情ともつかない厳しい一面を垣間見せてくる。しかし今のように私が肯定すると、すぐにほわっとした陽の感情に変わってしまうのだ。人間は……カイル殿はとても謎めいている。
もっと謎なのは、彼の不可解な感情に翻弄された挙げ句、ぎゅっと胸を掴まれたような感覚に陥り、顔が熱くなる私自身だ。
更には彼の口から『幼馴染のシンシア』という言葉が出てきた時には、胸を針先でつついたような、初めて体験する痛みも走った。
肉塊になっても死なないしぶとい体を持っているのに、病気になったとでもいうのだろうか?
まだまだ金貨は湖の底に沢山あるというのに、余計な心配をさせてカイル殿これ以上負担をかけるにはいかない。とりあえず私はそれらを黙っておくことにした。
ところで、カイル殿はいつになったらその『人間界のルール』とやらを教えてくれるのか? 未だそういったものを彼から聞いたことがない。
もしかすると……これがいわゆる『技術はよく見て盗め』というやつだろうか。魔の国の職人にも一部そういった文化があるらしいと宰相に聞いたことがある。
……迂闊だった。私は一体今まで彼から与えられる厚意をヌクヌクと享受して、堕落していただけではないか。
これからはカイル殿の動きをつぶさに観察し、しっかり覚えていこう。
「あ、あの……」
「? どうしたカイル殿」
スープを飲む時の手の運びを注意深く見つめていると、カイル殿は何故か視線を泳がせていた。
「それはそうとですね……そろそろ俺のことは、カイルと呼んで下さい。殿は要りません」
「いや、しかし……私は貴方にここまで世話になっている以上、そういうわけにもいかないだろう」
「それでもです。さすがに、殿なんて全然ガラじゃないんですよ」
「そ、そうか……ならば、か、か、カイル……」
「はい、アンヘルさん」
「ず、ずるいぞ! カイル、も……私のことは呼び捨てでいい」
「で、ですが……いや、同居しているんですから、それもそうですね。アンヘル……」
「…………っ」
カイルが私の名を呼ぶと、また胸にぎゅぅっと来た。それに顔面から火が出そうだ。やはり病気かもしれない。
そんな一抹の不安を抱いていた時だった。
おもむろに小屋の玄関が乱暴な音を立てて開き、何者かが雪崩込んできた。そのただならぬ様子に瞬時にカイルが反応し、ドアと私の間に立ってナイフを構えている。私も即座に椅子から立ち上がった。
しかし突然の来訪者は床に転がったまま、呻き声をあげて蹲っている。
「……ダレルおじさん? その傷はどうしたんですか!」
カイルは武装を解いて入室してきた者に駆け寄る。そこには中年の男が床に力なく伏したまま、肩から血を流していた。
「カイル、知り合いなのか?」
「いつもここに物資を運んでくれる、俺の叔父にあたる人です。おじさん、今手当をします」
「か、カイル……
魔獣と、そ、遭遇した……このままでは、村に危険が……」
私は無言で小屋を出ると、薪割りの斧を掴んで暗くなった森へと駆け出した。
カイルが背後で私の名を呼んでいたが、今はそれどころではない。
「カイルは叔父殿の手当を! 魔獣は私に任せろ!」
道にはまだ叔父殿が味わった恐怖の気が色濃く残っている。その気配を辿りながら、魔獣がいるであろう場所へと疾走した。
◇◇◇◇◇
深い森の中、木々の枝の上を縫うように駆け抜け、恐怖の残滓を辿る。魔力を込めた鉄の斧は既に黒く染まっている。
飛び移った木の眼前が開けた。カイルの叔父殿が通っていた街道に出たようだ。
道の真中には荷台付きの馬車が停まっていた。いや、残骸といったほうが正しいか。
月明かりに蠢く影がひとつ。むせるような血臭が辺りに立ち込め、恐怖と苦痛の気配が充満している。
影は大きな体躯の魔獣だった。奴はこちらに背を向け、先ほどまで荷台と叔父殿を運んでいた馬を貪り食っている。大量の馬の血が地面をてらてらと濡らしている。
私は木から飛び降り、唯一の武器である黒い斧を上空へと投げ飛ばした。
音を耳ざとく察知した魔獣は食事を止め、私を振り返る。狼のような長い鼻面の獣は筋肉で膨れ上がった体全体で私を威嚇し、唸り声をあげる。
それを意にも介さず、私は黒い魔力に染まった右手を上へと軽く凪いだ。
「ギャアッ!」
頭上から凄まじい速度で落下してきた斧に貫かれ、魔獣は甲高く叫んだ。
心臓を一突きにしたが、さて……
「ガウルルルル……!」
魔獣は生命力が強い。加えて負の感情を摂取したばかりでとてつもなく頑丈になっていた。
斧は急所を一直線に狙ったが、恐らく心臓まで刃が達していないのだろう。
私はなおも威嚇し続けている魔獣の背に素早く飛び上がり、幾重にも魔力を込めた踵を斧にの持ち手に落とした、斧ば更に魔獣に食い込み、轟音を上げながら地面を抉るほどの衝撃で魔獣に致命傷を与えた。
「ギャアアアアアアアアッ」
断末魔の雄叫びを上げた魔獣はすぐに大量の血を吐き、激しくのたうった後沈黙した。
腕を回転させると魔獣に刳りこんでいた斧はすっと浮き上がり、上空を回転して今度は魔獣の首に落ちた。
深く抉れた首元を覗き込み、骨が断たれているのを確認して魔獣の上から離れる。
その途端、背後の藪が揺れる音が聞こえた。
「アンヘル!!」
振り返ると、明かり魔法を掲げたカイルが肩で息をして立っていた。
驚いた。どうやってここまで私を追ってこれたのか、叔父殿は大丈夫だったのか。
それを口にする前に、突如カイルに腕を引き寄せられて私の視界は真っ黒に塞がれた。
両肩がギュウッと締め付けられ、カイルの鼓動がとても速いのが分かった。
……私はカイルの腕の中に、すっぽりと抱きしめられていた。
「無事なのか? 怪我は……?」
「だ、大丈夫だ……どこも、怪我してない。あ、だが、叔父殿の馬が……っ」
食べられた。と続けようとすると、カイルの腕の力が更に強くなった。私の黒髪に顔を埋め、大きく息を吸い込んで、長い溜息を吐いた。
「良かった……っ」
……いや、良くない。全然良くない。叔父殿の大切な財産である馬が食われたぞ。一大事だ。
しかもこの心配具合はおかしい! もしかして私が元魔王だって事を忘れてないか?
とにかく腕の力が強くて苦しい。ついでに胸もまた痛苦しい。一体私はどうなっているんだ。
「お、おい……とりあえず、無事だけど、苦しい……から」
「――あっ! すみません!!」
突如圧迫されていた胸が開放され、空気を一気に吸い込んだ私は軽く咳き込んだ。
「すみません、大丈夫ですか?」
「ああ……何ともない。
それよりも叔父殿の怪我は大丈夫なのか?」
「はい、回復魔法で傷は消しましたが、少し失血したので小屋に寝かせてきました」
「そうか、命に別状は無さそうでよかった。
だが、私が駆けつけたときには叔父殿の馬が魔獣に食われていた。間に合わなくて申し訳ない」
「アンヘルに怪我が無いなら、それでいいんです。
とにかく、ダレルおじさんが意識を取り戻しているかもしれない、ひとまずここは置いておいて、小屋に戻りましょう」
「……分かった」
この血の臭いだ、魔獣以外の獣も集まるかも知れない。街道はかなりの惨状だが、さすがに夜の間はここを離れたほうが良いだろう。
私達は森の中へと、再び足を踏み入れた。
◇◇◇◇◇
我々が小屋に辿り着くと、カイルの叔父殿は既に意識を取り戻していた。だが失血のため顔色がひどく悪く、ベッドの上から頭も起こせない状態になっていた。
しかし帰還した我々を見た叔父上の目は驚きに見開かれ、涙を浮かべながら恐る恐る震える手をカイルに差し出した。カイルはその手を握り返した。
「か、カイル……無事なのか……? さっきの娘さんも……?」
「はい。俺達は無傷です。魔獣は殺しました」
「……そうか、お前ならやってくれると思っていた……すまない。怪我がなくて、本当によかった……」
「おじさんがこの小屋まで、頑張って辿り着いてくれたからこそです。よく逃げられましたね」
「前に、お前から貰った聖水瓶を、お守りがわりに、常に持ち歩いていた……魔獣に投げつけた……痛がって気を取られている、その隙に、森に……」
「あの聖水が役に立ったんですね。本当に良かった……
今はとにかく血が足りないので、少し何か食べましょう」
残っていた晩餐のスープを飲ませると、カイル殿は倉庫の奥から常備してあった鎮痛薬を持ち出し、叔父殿に与えた。
やがて叔父殿は眠った。まだ顔色は悪いが、とにかく今は休ませるより他ない。
「おじさんの傷は塞がっているので、ひとまず安静にしておきましょう。動かせそうなら、明日事情の説明を兼ねて、村の医者に連れて行きますので」
「それがいいだろう」
「とにかく、我々も休みましょう」
「そうだな……」
久々に魔力を使ったし、もうすっかり深夜になってしまった。急激に眠たくなって、ぼんやりとする目をこすりながら、私は自分の寝室に向かった。寝間着に借りたカイルのシャツに着替えようと上の服を脱いだ所で、背後のドアが開いた。
「ん……? どうしたカイル……」
「ここにしかベッドが無いので、アンヘルと一緒に寝ようかと」
「ああ……そうか。それもそうだった……そうするかー……」
私はぼんやりしながらぶかぶかのシャツに体を通し、大欠伸しながらぼふっとベッドに横たわった。
やがて寝支度を終えたらしいカイルが私の横に寝そべり、おもむろに私の頭から枕を抜き取り、奪っていった。
半分眠りに落ちかけていた私がぼんやり振り返ると、カイルは自分の頭に枕をあてがっていて、私の両肩をぐいっと引き寄せた。
「ふぇ……」
私の首の下にカイルの腕が滑り込んできて、もう片方の手は私の背に回された。私のちっぽけな体は、完全に大柄な体にくるみ込まれた状態だ。
見上げるとカイルはひどく穏やかな笑みを浮かべ、私を眺めている。
私の背中を撫でる手がひどく温かくて、すごく心地がいい……
「おやすみなさい」
「……すみ……」
安心感と温かさに、瞼を開けていられないほどの眠気がどっと押し寄せて、私の意識はそっと途切れた。
湖に入って、一枚一枚金貨を根気よく拾い集める作業。何せこの森深い場所にはコイン拾いに役立ちそうな道具が大して無いのだ。
ちなみに深い場所に落ちたものは湖の精霊が集めてくれている。一日でもかなりの量が集まり、ここ数日の成果として金貨が山と積もっていたが、全体からすれば我々のやっていることなどまだまだ微々たる量だ。まったく埒が明かない。
ここに来た時に私が吸い取った邪気や毒素は、水の底に金貨がある限り多大に発生し続けるだろう。それではいつまで経っても水質が改善しない。湖が汚れたままでは、それを飲む動物や周囲の土壌にも影響が生じる。巡り巡って人間も森の恵みを口にし、水も飲むだろう。すると徐々に人の心身は乱れ、結果全てが荒んでいく。そしてそのまま放置すれば湖の精霊は消え、汚染が進行し……魔の国のような荒野になる日もそう遠くはないことだろう。
それでは私がわざわざ足を伸ばして人の国に来た意味がなくなる。負の気は確かに私にとって必要な栄養素の一つであるが、食物を口から摂取さえしていればそんなに多く摂取しなくてもいいものなのだ。
森や動物は生きている以上微量ながらも毒を生み、陰気を作るものだ。それを僅かずつでも拝借できればそれで十分足りるだろう。これでもっと人の多い場所に行けば、負の感情がたんとあるに違いない。
村での暮らし……ふふふふ、楽しみだな。
まずは湖の精霊から貰った金貨で小さくとも家と畑を作る。それから牛やヤギを飼えるだけの収入を手に入れて、それから……
「アンヘルさん、先ほどからずっとニヤついてますが……あとヨダレが出てますが、何か良いことがありましたか?」
「あ、すまない。少し妄想が膨らんだ」
「妄想ですか、それはそれは……
というかそろそろ陽が落ちます。帰りましょう」
ここから管理人小屋までは少々距離がある。日が暮れると夜行性の獣が徘徊するからか、カイル殿はいつもまだ陽のあるうちに作業を切り上げて撤収していた。
しかし彼の実力があれば、獣の群れごときなら軽く躱せるだろうに。一体何を恐れているのだろうか。
もしや、私が獣に襲われるのを危惧しているとでもいうのか? いや、まさかな……?
そうこうしているうちにカイル殿はいそいそと帰り支度を整えて私を待っていた。私は慌てて湖から上がり、足を拭いてカイル殿のもとへ急いだ。
管理小屋には数日に一度の頻度でカイル殿の故郷の村から必要物資が届けられている。丁度今日がその日だったようで、カイルが小屋のドアを開けると木箱が数個置いてあった。その中からはいい匂いがしていて、私は大きく息を吸い込んでニンマリとした。
木箱の中は必要最低限の調味料、野菜や穀物、そして――焼きたてのパン!
この香ばしく中の生地がふわっとしたパンが、目下私の大好物だ。ドライフルーツやクルミがバランスよく入っていて、塩味が絶妙で甘みもある。これを作った職人に称賛を送りたいと言ったところ、カイル殿は少し笑った。
「これは、俺の幼馴染のシンシアが作ったパンなんですよ。彼女のお袋さんが村一番の料理上手で、その味をしっかり自分のものにしたみたいですね」
「そうか、料理……私も覚えないとな。
人として暮らしていく上で、食事は大切だからな」
「まだ時期尚早です。……アンヘルさんにはここから出る前に、最低限人の国のルールを覚えてもらう必要がありますから」
「う……わ、分かった。頑張る」
「はい、頑張りましょう」
そう言って、食卓越しのカイル殿は私にとろけるような極上の笑顔を見せた。
時折カイル殿は負の感情ともつかない厳しい一面を垣間見せてくる。しかし今のように私が肯定すると、すぐにほわっとした陽の感情に変わってしまうのだ。人間は……カイル殿はとても謎めいている。
もっと謎なのは、彼の不可解な感情に翻弄された挙げ句、ぎゅっと胸を掴まれたような感覚に陥り、顔が熱くなる私自身だ。
更には彼の口から『幼馴染のシンシア』という言葉が出てきた時には、胸を針先でつついたような、初めて体験する痛みも走った。
肉塊になっても死なないしぶとい体を持っているのに、病気になったとでもいうのだろうか?
まだまだ金貨は湖の底に沢山あるというのに、余計な心配をさせてカイル殿これ以上負担をかけるにはいかない。とりあえず私はそれらを黙っておくことにした。
ところで、カイル殿はいつになったらその『人間界のルール』とやらを教えてくれるのか? 未だそういったものを彼から聞いたことがない。
もしかすると……これがいわゆる『技術はよく見て盗め』というやつだろうか。魔の国の職人にも一部そういった文化があるらしいと宰相に聞いたことがある。
……迂闊だった。私は一体今まで彼から与えられる厚意をヌクヌクと享受して、堕落していただけではないか。
これからはカイル殿の動きをつぶさに観察し、しっかり覚えていこう。
「あ、あの……」
「? どうしたカイル殿」
スープを飲む時の手の運びを注意深く見つめていると、カイル殿は何故か視線を泳がせていた。
「それはそうとですね……そろそろ俺のことは、カイルと呼んで下さい。殿は要りません」
「いや、しかし……私は貴方にここまで世話になっている以上、そういうわけにもいかないだろう」
「それでもです。さすがに、殿なんて全然ガラじゃないんですよ」
「そ、そうか……ならば、か、か、カイル……」
「はい、アンヘルさん」
「ず、ずるいぞ! カイル、も……私のことは呼び捨てでいい」
「で、ですが……いや、同居しているんですから、それもそうですね。アンヘル……」
「…………っ」
カイルが私の名を呼ぶと、また胸にぎゅぅっと来た。それに顔面から火が出そうだ。やはり病気かもしれない。
そんな一抹の不安を抱いていた時だった。
おもむろに小屋の玄関が乱暴な音を立てて開き、何者かが雪崩込んできた。そのただならぬ様子に瞬時にカイルが反応し、ドアと私の間に立ってナイフを構えている。私も即座に椅子から立ち上がった。
しかし突然の来訪者は床に転がったまま、呻き声をあげて蹲っている。
「……ダレルおじさん? その傷はどうしたんですか!」
カイルは武装を解いて入室してきた者に駆け寄る。そこには中年の男が床に力なく伏したまま、肩から血を流していた。
「カイル、知り合いなのか?」
「いつもここに物資を運んでくれる、俺の叔父にあたる人です。おじさん、今手当をします」
「か、カイル……
魔獣と、そ、遭遇した……このままでは、村に危険が……」
私は無言で小屋を出ると、薪割りの斧を掴んで暗くなった森へと駆け出した。
カイルが背後で私の名を呼んでいたが、今はそれどころではない。
「カイルは叔父殿の手当を! 魔獣は私に任せろ!」
道にはまだ叔父殿が味わった恐怖の気が色濃く残っている。その気配を辿りながら、魔獣がいるであろう場所へと疾走した。
◇◇◇◇◇
深い森の中、木々の枝の上を縫うように駆け抜け、恐怖の残滓を辿る。魔力を込めた鉄の斧は既に黒く染まっている。
飛び移った木の眼前が開けた。カイルの叔父殿が通っていた街道に出たようだ。
道の真中には荷台付きの馬車が停まっていた。いや、残骸といったほうが正しいか。
月明かりに蠢く影がひとつ。むせるような血臭が辺りに立ち込め、恐怖と苦痛の気配が充満している。
影は大きな体躯の魔獣だった。奴はこちらに背を向け、先ほどまで荷台と叔父殿を運んでいた馬を貪り食っている。大量の馬の血が地面をてらてらと濡らしている。
私は木から飛び降り、唯一の武器である黒い斧を上空へと投げ飛ばした。
音を耳ざとく察知した魔獣は食事を止め、私を振り返る。狼のような長い鼻面の獣は筋肉で膨れ上がった体全体で私を威嚇し、唸り声をあげる。
それを意にも介さず、私は黒い魔力に染まった右手を上へと軽く凪いだ。
「ギャアッ!」
頭上から凄まじい速度で落下してきた斧に貫かれ、魔獣は甲高く叫んだ。
心臓を一突きにしたが、さて……
「ガウルルルル……!」
魔獣は生命力が強い。加えて負の感情を摂取したばかりでとてつもなく頑丈になっていた。
斧は急所を一直線に狙ったが、恐らく心臓まで刃が達していないのだろう。
私はなおも威嚇し続けている魔獣の背に素早く飛び上がり、幾重にも魔力を込めた踵を斧にの持ち手に落とした、斧ば更に魔獣に食い込み、轟音を上げながら地面を抉るほどの衝撃で魔獣に致命傷を与えた。
「ギャアアアアアアアアッ」
断末魔の雄叫びを上げた魔獣はすぐに大量の血を吐き、激しくのたうった後沈黙した。
腕を回転させると魔獣に刳りこんでいた斧はすっと浮き上がり、上空を回転して今度は魔獣の首に落ちた。
深く抉れた首元を覗き込み、骨が断たれているのを確認して魔獣の上から離れる。
その途端、背後の藪が揺れる音が聞こえた。
「アンヘル!!」
振り返ると、明かり魔法を掲げたカイルが肩で息をして立っていた。
驚いた。どうやってここまで私を追ってこれたのか、叔父殿は大丈夫だったのか。
それを口にする前に、突如カイルに腕を引き寄せられて私の視界は真っ黒に塞がれた。
両肩がギュウッと締め付けられ、カイルの鼓動がとても速いのが分かった。
……私はカイルの腕の中に、すっぽりと抱きしめられていた。
「無事なのか? 怪我は……?」
「だ、大丈夫だ……どこも、怪我してない。あ、だが、叔父殿の馬が……っ」
食べられた。と続けようとすると、カイルの腕の力が更に強くなった。私の黒髪に顔を埋め、大きく息を吸い込んで、長い溜息を吐いた。
「良かった……っ」
……いや、良くない。全然良くない。叔父殿の大切な財産である馬が食われたぞ。一大事だ。
しかもこの心配具合はおかしい! もしかして私が元魔王だって事を忘れてないか?
とにかく腕の力が強くて苦しい。ついでに胸もまた痛苦しい。一体私はどうなっているんだ。
「お、おい……とりあえず、無事だけど、苦しい……から」
「――あっ! すみません!!」
突如圧迫されていた胸が開放され、空気を一気に吸い込んだ私は軽く咳き込んだ。
「すみません、大丈夫ですか?」
「ああ……何ともない。
それよりも叔父殿の怪我は大丈夫なのか?」
「はい、回復魔法で傷は消しましたが、少し失血したので小屋に寝かせてきました」
「そうか、命に別状は無さそうでよかった。
だが、私が駆けつけたときには叔父殿の馬が魔獣に食われていた。間に合わなくて申し訳ない」
「アンヘルに怪我が無いなら、それでいいんです。
とにかく、ダレルおじさんが意識を取り戻しているかもしれない、ひとまずここは置いておいて、小屋に戻りましょう」
「……分かった」
この血の臭いだ、魔獣以外の獣も集まるかも知れない。街道はかなりの惨状だが、さすがに夜の間はここを離れたほうが良いだろう。
私達は森の中へと、再び足を踏み入れた。
◇◇◇◇◇
我々が小屋に辿り着くと、カイルの叔父殿は既に意識を取り戻していた。だが失血のため顔色がひどく悪く、ベッドの上から頭も起こせない状態になっていた。
しかし帰還した我々を見た叔父上の目は驚きに見開かれ、涙を浮かべながら恐る恐る震える手をカイルに差し出した。カイルはその手を握り返した。
「か、カイル……無事なのか……? さっきの娘さんも……?」
「はい。俺達は無傷です。魔獣は殺しました」
「……そうか、お前ならやってくれると思っていた……すまない。怪我がなくて、本当によかった……」
「おじさんがこの小屋まで、頑張って辿り着いてくれたからこそです。よく逃げられましたね」
「前に、お前から貰った聖水瓶を、お守りがわりに、常に持ち歩いていた……魔獣に投げつけた……痛がって気を取られている、その隙に、森に……」
「あの聖水が役に立ったんですね。本当に良かった……
今はとにかく血が足りないので、少し何か食べましょう」
残っていた晩餐のスープを飲ませると、カイル殿は倉庫の奥から常備してあった鎮痛薬を持ち出し、叔父殿に与えた。
やがて叔父殿は眠った。まだ顔色は悪いが、とにかく今は休ませるより他ない。
「おじさんの傷は塞がっているので、ひとまず安静にしておきましょう。動かせそうなら、明日事情の説明を兼ねて、村の医者に連れて行きますので」
「それがいいだろう」
「とにかく、我々も休みましょう」
「そうだな……」
久々に魔力を使ったし、もうすっかり深夜になってしまった。急激に眠たくなって、ぼんやりとする目をこすりながら、私は自分の寝室に向かった。寝間着に借りたカイルのシャツに着替えようと上の服を脱いだ所で、背後のドアが開いた。
「ん……? どうしたカイル……」
「ここにしかベッドが無いので、アンヘルと一緒に寝ようかと」
「ああ……そうか。それもそうだった……そうするかー……」
私はぼんやりしながらぶかぶかのシャツに体を通し、大欠伸しながらぼふっとベッドに横たわった。
やがて寝支度を終えたらしいカイルが私の横に寝そべり、おもむろに私の頭から枕を抜き取り、奪っていった。
半分眠りに落ちかけていた私がぼんやり振り返ると、カイルは自分の頭に枕をあてがっていて、私の両肩をぐいっと引き寄せた。
「ふぇ……」
私の首の下にカイルの腕が滑り込んできて、もう片方の手は私の背に回された。私のちっぽけな体は、完全に大柄な体にくるみ込まれた状態だ。
見上げるとカイルはひどく穏やかな笑みを浮かべ、私を眺めている。
私の背中を撫でる手がひどく温かくて、すごく心地がいい……
「おやすみなさい」
「……すみ……」
安心感と温かさに、瞼を開けていられないほどの眠気がどっと押し寄せて、私の意識はそっと途切れた。
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
世界観とカイル×アンヘルが好きです…!!
初めは勇者×魔王の恋愛ものなのかな?って思ったんですが、神官×魔王とは…尊い
これからの展開が気になって気になって昼しか眠れません!!更新楽しみに待ってます!!!
面白いです~。なんというか、この空気感が好きです。
魔王様可愛いし、宰相も可愛いww
勇者もリリアちゃんも可愛いですし。皆ええ子やっ><
更新、楽しみにしていますm(_"_)m
感想ありがとうございますー(´▽`)
皆呑気でホンワカしてる話なのでちょっと色々心配でしたが、楽しんでいただけて嬉しいです!