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ん? なんだって?

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 俺たちがダンジョンを造り始めてから2週間が経過した。

 クロエが商人の確保。
 アリスが洞窟内の魔物を魔法で倒しポイントと食料を稼ぐ。
 サラが付与魔法で、兄達に対抗するための準備を行っていた。

 それぞれが独自の力を活用して頑張っていた。

 ん? 俺? ずっと専業主夫をがんばってるよ? 

 え? 勇者(仮)のくせになにやってるんだって?

 いや、だって、適材適所で仕事割り振ったらこうなったんだもの、仕方ないよね。うん。

 けどまぁ、そうは言っても、俺だって成長してるんだよ? 聞いて驚け?

 この度、俺の召喚獣は40体を超えましたー。すごくね?

 全部カラスですけど、なにか問題でも?

「はぁ…………」

「んゅ? どうしたのお兄ちゃん?」

「あ、いや、なんでもない」

 思わず盛大にため息を付けば、クロエに心配されてしまった。

 そうそう、成長したと言えば、この1週間でダンジョンもそれなりに成長した。

――――――――――――――――――――

 ダンジョンレベル 3 

 設置可能施設:中部屋2000P、個室・中1000P、食料庫1000P 分かれ道300P、果樹園1800P、魔力堰300P

 実行可能機能:自動修復2000P

 召喚可能従者: 水スライム 500P/匹 土スライム 500P/匹 木スライム 500P/匹 油スライム 1000P/匹 電気スライム 1000P/匹 

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 っと、まぁ、色々と増えました。

 まずは、果樹園の増設。

 当然のように果実達が攻撃を仕掛けてきたので、収穫はクロエかアリスの担当になりました。

 次に、個室・中を改造して、応接室と控え室も作った。

 こっちは勇者としての面子の保持に必要らしい。

 サラ曰く、王都の謁見の間くらいの仕上がりになったらしい。

「それじゃぁ、商人さんを連れてくるね?」

「あぁ、よろしくな」

 そんな威圧感たっぷりの部屋に入った俺は、中央の立派な椅子に腰掛けていた。

 左後ろにアリス、逆側にサラが座る。

「お兄ちゃん、お待たせー」

 ほどなくしてクロエと共に、2人の女性が部屋に入ってきた。

 年上の方は、面倒見の良い、近所のお姉さん。
 年下の方は、陸上部を頑張る中学生、って感じだ。

 姉妹なのだろうか。

 正反対の見た目だが、どこか似たものを感じた。

 俺がぼんやりと女性たちを眺めていると、ここまで案内して来たクロエが口を開いた。

「えっとね、中央に居るのがお兄ちゃん。職業は勇者様だよ。
 左がサラお姉ちゃんで、右がアリスお姉ちゃん。第4王女様と第5王女様ね」

 商人2人が揃って表情を強張らせた。 

 まぁ、いきなり勇者だ、姫だ、って言われても驚くしか出来ないよな。 

 俺が呼びつけた形になってるわけだし、ここは誠意を見せとくか。

「遠いところをよく来てくれた。さっそくなのだが――」

「はいー。不束者ではございますが、幸せにしてくださいー」

「…………は?」

 お姉さんっぽい方に言葉を遮られてしまった。

 サラやアリス、クロエに視線を送るが、3人とも、意味がわからないと首を横にふる。

 そんな俺たちの様子をしり目に、女性が言葉を続けた。

「……えぇーっと、やっぱり、側室はダメですかー?
 けど、大丈夫ですよー。愛人の覚悟も決めてきましたー」

 沈黙を否定ととったのか、相変わらず意味のわからない言葉を続けてきた。

 その顔が真っ赤に染まる。

「勇者様のお好きにお使いくださいー。我侭を聞いて貰えるなら、2人っきりがいいですー」

「…………何を言っている?」

 とりあえず、女性がパニック状態になっていることはわかった。

 そんな俺のつぶやきに、パニックが加速していく。

「ごめんなさいー、いますぐここで出来ますー、すぐ脱ぎますー、大丈夫でーーむぐっ」

 胸のボタンを外した女性を慌てて陸上女性がおさえた。

 女性の口が、陸上女性の手でふさがれる。

「すいません勇者様。バカな姉を落ち着かせますので、5分だけください」

「……あぁ、構わない。
 こちらとしても、勇者だ、姫だなどと言って、すぐに受け入れられるとは思っていないからな。
 先ほどの休憩室であれば、好きに使って構わないから、5分と言わず1時間でも、落ち着くまでゆっくりしてくるといい」

「ありがとうございます」

 商人との会談は始まってすぐに中断となった。

 とりあえず、爆弾発言娘が姉で、陸上女性が妹だと言うことはわかった。

 意味のわからない発言は聞かなかったことにしようと思う。
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