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第6話 魔法研究室魔封じ戦隊 魅了封じるんじゃー
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小さな礼拝堂、その祭壇の前で青年が手を組んで祈っている。
朝焼けがステンドグラスに透けて、青年の真っ白な髪を鮮やかに染めていた。
青年の他に人の影はないが、青年は誰かと話すように、ぼそぼそとつぶやく。
「ですから、ご自身でなさったことの後始末はしてください。かわいそうでしょう」
「でもでもだって…、ではありません」
「いいですね。仲介はしますから」
しばらく言葉が途切れてから、青年はふぅ、と息を吐いて顔を上げた。
どこか愛嬌のあるそばかすを、ぽりぽりとかいて、青年はため息を重ねる。
「まずは、テオに会いに行かないとなぁ…」
次の日、準備できたからいつでも、なるべく早く来てくれたら嬉しいな!(要約)という手紙がビアンカの屋敷に届いた。
「は、早くないですか…?」
「…まあ、最優先事項にしたのでしょう」
いつまでもアイラをビアンカの家に閉じ込めているわけにも行かない。それでも一週間くらいはかかると踏んでいたのだが、まさか翌日に連れてこいと言われるとは。
おそらく、本当に急ぎのもの以外書類仕事を全部後回しにしたのだろう。次長が頭を抱えている様子が目に浮かんで、ビアンカは内心で小さくため息をついた。
「とりあえず、あなたを護送する馬車に魔封じを施してきます。昼食をとったら出かけましょう。…ああ、そうです」
「なんですか?」
「アイラは学校の寮に入っていましたよね。学校には、おそらく長く戻ることができません。なにか必要なものはありますか?」
長く戻ることができない、という言い回しはきっとビアンカの優しさだろう。永遠に戻れないというほうが、きっと現実には近いはずだから、とアイラはビアンカの言葉の選び方に感謝する。
「その…」
「はい」
「鞄と、その中身をお願いしたいです…」
「鞄ですか?」
「はい。その中に、両親の写真と、形見が入っているものですから」
両親が亡くなって家を出る時に、家のものを全て持っていくことはできず、父が愛用していた鞄と、母がいつもつけていたペンダント、そして全員で撮った写真を2枚。それだけを施設に持っていった。自分の罪を知らされるまでは、辛くて悲しくてどうしようもない夜は、いつも鞄に全部いれて抱きしめて寝ていた。
「わかりました。必ず届けましょう」
ビアンカは優しく微笑んで、そう頷く。
(ビアンカ様って、よく笑う人だったんだな)
アイラは感謝を述べながら、そんなふうに思った。
「ようこそ!国家魔法庁、魔法研究室へ‼︎」
「ぼくらが!」
「魔法研究室魔封じ戦隊」
「「「「「魅了封じるんじゃー!」」」」」
研究室に通されたアイラとビアンカは、扉を開けたと同時に叫ばれたじこしょうかいらしき言葉と、謎のポーズと、その勢いと意味不明な言葉に固まる。
「せ、せんたい…?」
「ふうじるん、じゃー…?」
中には五人の白衣を着た人がいて、そのうちの一人がアルトだ。アルトは中央に立ち右の拳を上に掲げるポーズでニコニコ笑っていた。
「別に物理的に戦うわけじゃないけどさ、研究ってまあある意味戦いだから、戦う研究隊員たちを略して戦隊!で、何と戦う?魅了だよね。あ、魅了封じるんじゃー!ってなんか語呂がよくない?って話になって、気がついたらポージングの練習に入ってた感じ」
「意味がわかりません、アルト様…」
ビアンカがこめかみを抑えていると、五人のうち一番左にいた女性が、うふふ、と笑ってアイラに近づいてきた。
「初めまして、私はミィ。よろしくね」
手を伸ばされて、一瞬躊躇したアイラに、ミィはまたうふふ、と笑う。
「大丈夫よ。さっき魔封じ戦隊って言ったでしょ?ここにいる私たち全員が魔封じの加護を持っているの」
ミィの後ろから、吊り目の青年がひょこっと頭を出す。
「そうそう、だから僕らが君の魅了でメロメロになる可能性はほとんど0に近いからさ、安心していいよ!あ、僕はヴィック、よろしくねー」
強引に手を取られて、アイラはかたまりつつ、はい、よろしくお願いします、と頷いた。
「おい、俺らも自己紹介したいんですけど!初めまして聖女ちゃん、俺はトール。で、こっちの同じ顔したメガネが俺の双子の妹で」
「リリーだよ。ボクたち双子で同一加護持ちっていうレア素材なんだー。聖女ちゃんと一緒!」
「こら、リリー、アイラを素材扱いしないでください」
ビアンカに叱られて、ごめんごめん、とリリーは首をすくめた。
だが、アイラは正直、怒涛の展開と自己紹介してきた人たちの勢いに飲まれて、いろいろ混乱していた。
とりあえず、とミィが部屋をぐるり、とみてからアイラに向いて微笑んだ。
「この部屋が研究棟のうちの、アイラちゃんの魅了について研究するために貸し切った部屋になるわ。アイラちゃんの魅了は魔封じの加護を持つ人だけで対応することになったから、アイラちゃんには監禁生活を強いることにはなっちゃうんだけど…」
「大丈夫です。……むしろ、ありがたいです」
出来るだけ、人には関わりたくない。今のアイラにとってそれが本心だった。
自分が魅了魔法を使っていたと知った今、再びあの視線、自分を崇拝するあの視線を向けられるなんて、耐えられる気がしない。先ほどアイラに向けられた、研究対象として興味津々という視線に、どれほど安堵したのか、というのはきっとアイラにしかわからない。
俯いたアイラをみて、アルトはじめ研究室のメンバーは顔を見合わせた。
「アイラ」
「ビアンカ様…」
「私は別の業務があるので、そばにはいませんが、何かあればアルト様を通して私を呼んでください」
(ビアンカ様は優しい。でも)
ビアンカの態度が優しいものであればあるほど、効かないはずだとわかっていても、段々と不安になっていく。
「ありがとう、ございます」
顔が、あげられなかった。
朝焼けがステンドグラスに透けて、青年の真っ白な髪を鮮やかに染めていた。
青年の他に人の影はないが、青年は誰かと話すように、ぼそぼそとつぶやく。
「ですから、ご自身でなさったことの後始末はしてください。かわいそうでしょう」
「でもでもだって…、ではありません」
「いいですね。仲介はしますから」
しばらく言葉が途切れてから、青年はふぅ、と息を吐いて顔を上げた。
どこか愛嬌のあるそばかすを、ぽりぽりとかいて、青年はため息を重ねる。
「まずは、テオに会いに行かないとなぁ…」
次の日、準備できたからいつでも、なるべく早く来てくれたら嬉しいな!(要約)という手紙がビアンカの屋敷に届いた。
「は、早くないですか…?」
「…まあ、最優先事項にしたのでしょう」
いつまでもアイラをビアンカの家に閉じ込めているわけにも行かない。それでも一週間くらいはかかると踏んでいたのだが、まさか翌日に連れてこいと言われるとは。
おそらく、本当に急ぎのもの以外書類仕事を全部後回しにしたのだろう。次長が頭を抱えている様子が目に浮かんで、ビアンカは内心で小さくため息をついた。
「とりあえず、あなたを護送する馬車に魔封じを施してきます。昼食をとったら出かけましょう。…ああ、そうです」
「なんですか?」
「アイラは学校の寮に入っていましたよね。学校には、おそらく長く戻ることができません。なにか必要なものはありますか?」
長く戻ることができない、という言い回しはきっとビアンカの優しさだろう。永遠に戻れないというほうが、きっと現実には近いはずだから、とアイラはビアンカの言葉の選び方に感謝する。
「その…」
「はい」
「鞄と、その中身をお願いしたいです…」
「鞄ですか?」
「はい。その中に、両親の写真と、形見が入っているものですから」
両親が亡くなって家を出る時に、家のものを全て持っていくことはできず、父が愛用していた鞄と、母がいつもつけていたペンダント、そして全員で撮った写真を2枚。それだけを施設に持っていった。自分の罪を知らされるまでは、辛くて悲しくてどうしようもない夜は、いつも鞄に全部いれて抱きしめて寝ていた。
「わかりました。必ず届けましょう」
ビアンカは優しく微笑んで、そう頷く。
(ビアンカ様って、よく笑う人だったんだな)
アイラは感謝を述べながら、そんなふうに思った。
「ようこそ!国家魔法庁、魔法研究室へ‼︎」
「ぼくらが!」
「魔法研究室魔封じ戦隊」
「「「「「魅了封じるんじゃー!」」」」」
研究室に通されたアイラとビアンカは、扉を開けたと同時に叫ばれたじこしょうかいらしき言葉と、謎のポーズと、その勢いと意味不明な言葉に固まる。
「せ、せんたい…?」
「ふうじるん、じゃー…?」
中には五人の白衣を着た人がいて、そのうちの一人がアルトだ。アルトは中央に立ち右の拳を上に掲げるポーズでニコニコ笑っていた。
「別に物理的に戦うわけじゃないけどさ、研究ってまあある意味戦いだから、戦う研究隊員たちを略して戦隊!で、何と戦う?魅了だよね。あ、魅了封じるんじゃー!ってなんか語呂がよくない?って話になって、気がついたらポージングの練習に入ってた感じ」
「意味がわかりません、アルト様…」
ビアンカがこめかみを抑えていると、五人のうち一番左にいた女性が、うふふ、と笑ってアイラに近づいてきた。
「初めまして、私はミィ。よろしくね」
手を伸ばされて、一瞬躊躇したアイラに、ミィはまたうふふ、と笑う。
「大丈夫よ。さっき魔封じ戦隊って言ったでしょ?ここにいる私たち全員が魔封じの加護を持っているの」
ミィの後ろから、吊り目の青年がひょこっと頭を出す。
「そうそう、だから僕らが君の魅了でメロメロになる可能性はほとんど0に近いからさ、安心していいよ!あ、僕はヴィック、よろしくねー」
強引に手を取られて、アイラはかたまりつつ、はい、よろしくお願いします、と頷いた。
「おい、俺らも自己紹介したいんですけど!初めまして聖女ちゃん、俺はトール。で、こっちの同じ顔したメガネが俺の双子の妹で」
「リリーだよ。ボクたち双子で同一加護持ちっていうレア素材なんだー。聖女ちゃんと一緒!」
「こら、リリー、アイラを素材扱いしないでください」
ビアンカに叱られて、ごめんごめん、とリリーは首をすくめた。
だが、アイラは正直、怒涛の展開と自己紹介してきた人たちの勢いに飲まれて、いろいろ混乱していた。
とりあえず、とミィが部屋をぐるり、とみてからアイラに向いて微笑んだ。
「この部屋が研究棟のうちの、アイラちゃんの魅了について研究するために貸し切った部屋になるわ。アイラちゃんの魅了は魔封じの加護を持つ人だけで対応することになったから、アイラちゃんには監禁生活を強いることにはなっちゃうんだけど…」
「大丈夫です。……むしろ、ありがたいです」
出来るだけ、人には関わりたくない。今のアイラにとってそれが本心だった。
自分が魅了魔法を使っていたと知った今、再びあの視線、自分を崇拝するあの視線を向けられるなんて、耐えられる気がしない。先ほどアイラに向けられた、研究対象として興味津々という視線に、どれほど安堵したのか、というのはきっとアイラにしかわからない。
俯いたアイラをみて、アルトはじめ研究室のメンバーは顔を見合わせた。
「アイラ」
「ビアンカ様…」
「私は別の業務があるので、そばにはいませんが、何かあればアルト様を通して私を呼んでください」
(ビアンカ様は優しい。でも)
ビアンカの態度が優しいものであればあるほど、効かないはずだとわかっていても、段々と不安になっていく。
「ありがとう、ございます」
顔が、あげられなかった。
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