赤頭巾ちゃん

mare

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初めてのケンカ?6

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朝、目が覚めてもグレーテルは家にはまだ帰ってきていないようだった。

それで良かったのかもしれない。酷い顔を見せずにすむ。

あんな夢を見て泣いていたせいか顔を確認しなくても瞼が腫れているのがわかる。それに、身体もだる重い。

「……こんなひどい顔見せたらびっくりするわね」

苦笑いしながら1人呟き水でタオルを濡らしあてがう。

目の前が暗くなった事で夢の中での行為がリアルに思い出され虚しくなるのと同時にまた、下腹部が疼く。

「…………。」

頭を振り、もう一度タオルを濡らし瞼を冷やすが、願いは叶わず今度は自分へと向けられた甘い眼差しが瞼の裏に張り付く。

「━━っ」

思わずタオルが落ち立ち尽くしてしまう。涙が溢れ落ちそうになるのを服を握り締め必死に食縛る。

その背後で、がちゃりと音がして扉が開く。

「赤頭巾、ただいま。よく寝れた?」

「グレーテル、おかえりなさい。お陰様で。ありがとう。あ、そうだ!朝ごはん食べる?今から作ろうかと思って……。座って待ってて」

今振り返ると我慢した涙が流れそうで。グレーテルに背中を向けたま台所へと姿を隠そうと逃げ込む。

逃げ込むと同時に気が抜けそのまま崩れ落ちた。不自然だったかもしれないけれど、グレーテルがそれ以上何も言わない事に安堵し思わず溜息をつくと我慢していた涙も零れ落ちた。

「……赤頭巾」

背後から突如、呼びかけられ思わず息を呑む。
悪い事をしている訳では無いのに罪悪感が募る。

「ほら、やっぱり。泣いてるし」

「っ……ごめんなさい」

グレーテルは座り込んでいる私の横にしゃがみ指で涙を拭ってくれた。

「顔色も悪い……ベッド行くよ。横になって休んでて。ほら、肩捕まって」

言われるがまま掴まると、グイッと引き寄せられたかと思うと抱きかかえられていた。

「えっ、グ、グレーテル」

慌てるのも気にせず寝室へと動き出す。グレーテルは何かを思い出したのか振り返り誰かに声をかける。

「あぁ、その辺に勝手に座ってて。この子を休ませてくるから。誰かのせいで辛い想いしてるみたいだしね」

 「エッ!グレーテル、お客様なの?」

こんな姿を慌ててグレーテルの腕の中から逃れようとするが、頭を撫で胸の中へと引き戻された。そして、軽く額に口付けを落とす。


ガタッ!!

背後から椅子か何かが激しく倒れる音がした。
その音を確認しようと振り返ろうとしてもグレーテルの手がガッシリと頭を支えていて動かない。

「赤頭巾は気にしなくていいよ。自業自得だからね……」

そう言うと、寝室へと連れて行ってくれた。

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