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第5章 (2)アカリside
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しおりを挟む「……断れない。もう決めた事なんだ。
契約も成立して、あとは行くだけだから」
射る様な、眼差し。
迷いのないヴァロンの瞳。
嘘をつかない彼。
一度決めた事は、曲げたりしない。
「……私も、一緒に行くのは?
傍にっ……いるのも、ダメなの……?」
なんとか冷静になろうとして、私は必死に涙を止めようとしながら尋ねた。
「……俺は依頼人の元に住み込みになる。
少し治安が悪いから、そんな場所にアカリを連れて行けない」
そう言ったヴァロンが、顔を歪ませていた。
……分かってる。
優しい彼が、自ら私が悲しむような事をするハズがない。
どうしても断れなかった。
ヴァロンにしか出来ない、依頼なんだ。
彼も、辛いんだ。
……。
……でも、止まらない。
感情が、抑えられないっ……!!
「っ……。……らい…ッ」
「?……アカリ?」
肩に触れているヴァロンの手を振り解き、私の顔覗き込んでいた彼をキッと涙目で睨んだ。
「っ……嫌いッ。
ヴァロンなんてっ……大っ嫌いッ……!!」
「ッ……」
私の言葉に……。
彼は母親に怒られた子供みたいな、哀しい表情をした。
酷い事を、言った。
ヴァロンが一番傷付く言葉を、言ってしまった。
……。
でも、離れたくない。
悲しくて寂しくて仕方なかった。
初めての妊娠。
望んでいた事なのに、不安が押し寄せる。
ヴァロンが喜んでくれたら、一緒に居てくれたらどんな事でも頑張れると思った。
……けど、彼はいない。
一人で産まなくてはいけない。
そう思ったら、私は急に怖くなってしまった。
……。
その日は別々のベッドで、眠った。
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