夢の言葉と陽だまりの天使（上）【続編②】

第８章 （１）ヴァロンside

１-２

〈回想シーン〉
【夢の配達人隠れ家/医療施設の治療室前】

「……。
子供？……」

アカリの担当に付いてくれたシュウの奥さんのホノカさんに聞かされて、俺の頭はまた真っ白になる。

そんな俺にホノカさんはゆっくり話してくれた。
アカリが昨日、別の病院で診察を受けていた事。
……妊娠、していた事。


この三週間、仕事ばっかりで俺は全くアカリを見ていなかった。
最後に一緒に夕飯を食べた時、着替えや仕事用具を取りに帰った時……。
食が細くて元気のないアカリを気にしながらも、それを”夏バテ”だと言う彼女を見過ごした。

……。

どんな想いで、アカリは俺を待ってたんだろう？
三週間、体調が悪い中一人ぼっちで我慢して不安だったに違いない。


「……今は落ち着いてます。
でも、妊娠初期は気を付けてあげて下さい。
運ばれて来た時はかなりパニック状態で、アカリさんの場合初めての妊娠で情緒も不安定なので、……。……」

ホノカさんは言葉を詰まらせた。

……言いたい事は、分かってる。
”傍に居てもっと安心させてやってほしい。”
多分、そういう事だ。

白金バッジの俺の仕事に終わりはない。
次々来る依頼、年々溜まっていく一方だ。
少しでも消化する為に、次に行く長期任務の間にも短期の依頼を予定している。
明日も、明後日も……休みなんて、ない。

ホノカさんから目を逸らして俯く俺。
すると……。


「……シュウ。
ヴァロンは明日から休暇じゃ。
……。全ての任務から外せ」

一緒に話を聞いていたマスターが、側に居たシュウに言った。