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第8章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟む「わ、たし……がんばる、からっ……。
嫌い、に……ならない、で……ッ」
「っ……。
なる訳、ねぇだろッ……」
アカリの手を両手で包み込む様にして、俺は声を絞り出す。
っ……。
でも、駄目だ。
上手く、言葉が出てこない。
アカリが喜ぶ夢の言葉を、言ってやれない。
言葉を詰まらせる俺に、アカリが再び謝り始めた。
「……あか、ちゃんにも……。
ひど、い……こと……思った、の」
「……。」
「わたし、が……八つ当たりしたからっ……。
きっと、怒って……ッ、ごめっ……」
「っ……違うッ。
絶対、っ……違うから、そんな事言うな……ッ」
俺は椅子から立ち上がってベッドの傍で前屈みになると、寝たままのアカリに優しく覆い被さるようにして抱き締めた。
アカリが少し、痩せていた。
昨夜も抱き締めた筈なのに……。
今になって気付く。
っ……俺だ。
アカリに汚い言葉を言わせたのも、酷い事を思わせたのも……っ。
俺がアカリを追い詰めた……っ。
押し寄せる感情をグッと飲み込む。
俺は少し身体を離すと、アカリを安心させる様に微笑んて見せた。
「俺の子供なんだ。
アカリの事、嫌いになるなんて絶対にない。
怒ってる訳、ねぇじゃん。
……大丈夫。元気に産まれてくるから安心しろ」
そう言って、掛け布団の上からアカリのお腹にそっと手を触れた。
……すると。
「っ……」
彼女を慰めて落ち着けるつもりだった筈の俺の目から、涙が溢れて……頬をつたり落ちた。
まだ自分が父親になるなんて、実感が湧かない。
……けど。
不思議と彼女のお腹に触れた瞬間、胸が暖かくなった。
確かにここにいる小さな命。
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