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第8章 (2)ヴァロンside
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しおりを挟む俺は猫リディアをアカリの膝から降ろすと、ゴロッとベッドに横になり膝枕してもらう形で彼女のお腹を見つめた。
「……早く動かねぇかな~」
お腹の子供に日に日に愛おしさが増すばかり。
もうギルの事を親バカなんて笑えない。
産まれる前からこんなに大切に想うなんて、想像してなかった。
俺がアカリの腰に腕を回して、お腹に頬と耳を当てて目を閉じると……。
そんな俺の頭を彼女が優しく撫でてくれる。
暖かくて、思わず笑みが零れた。
「……な、アカリ。
名前さ、俺が付けてもいいか?」
「!……え?
名前、もう……考えてたの?」
顔を少しズラして見上げると、気が早いと言いたげにアカリが呆れた様に微笑んでいた。
「まだ、男の子か女の子かも分からないよ?」
「大丈夫。
男でも、女でも合う名前だから」
俺はゆっくり起き上がると仕事机から紙とペンを持って来て、ある字を書いた。
「……子供が出来たって分かった日さ。
すごく良い天気だったんだ。
電車の窓から射す陽射しが暖かくて、綺麗で、眩しかった」
あの景色を見た時に感じた暖かさと、初めてアカリのお腹に触れた時の暖かさが良く似ていると思った。
まるで陽だまりに包まれたみたいに、俺の心を穏やかで幸せな気持ちにしてくれた。
「きっとアカリみたいに、子供も俺の事を笑顔にしてくれる。
……だから、ピッタリだと思うんだ」
俺は字を書いた紙を、アカリに差し出した。
「太陽の”陽”って書いて、”ヒナタ”。
……。どうかな?」
「……ヒナタ?」
紙を見つめながら、俺の提案した名前を呟くアカリ。
暫くして……。
そっと自分のお腹に触れて、俺を見て微笑む。
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