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第1章(1)ツバサside
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しおりを挟む俺と母さんを見て、親子にしては仲が良すぎる。
何かがおかしい、って感じる人もいるだろう。
俺の家は元々仲の良い家族だったけど、もちろん昔はこれ程じゃなかった。
今も忘れもしない、2年前の春。俺が16歳になる少し前の出来事。
その日を堺に、母さんは俺に対する執着がいっそう強くなった。
俺の両親はとにかく仲が良くて、喧嘩してるところなんて、少なくとも俺の記憶の中には一度もない。
いってらっしゃい、おかえりなさいのハグやキスなんて当たり前だったし、家族で出掛けても夫婦必ず手を繋いで寄り添って歩くくらいで……。いつも姉貴と兄貴と三人で、気を遣って離れて歩いたっけ。
少し恥ずかしい気もしてたけど、今思うとすごく幸せな光景だった。
母さんはいつもニコニコしてて、俺達はそんな母さんを見てるのが大好きで、どんなに辛い事や嫌な事があっても家に帰ってその笑顔を見ると忘れられたんだ。
でも、その笑顔はある日突然消えた。
父さんの死という、俺達家族にとって最大で最悪な出来事と共に……。
それは出張中の出来事だった。
取り引き先の元へ行っていた父さんが帰りに利用した列車が、地震による土砂崩れに巻き込まれたのは……。
更に最悪だったのが、破損した列車が爆発して炎上。中にいた、逃げ遅れた乗客はほぼ丸焼けで……。全焼した遺体から、父さんが身に付けていた腕時計だけが焼けずに残っていた。
その腕時計は父さんが母さんの祖父から会社を受け継いだ時に譲り受けた特別な時計で、この世に二つとない品。
父さんの死は、決定的だった。
母さんはその日からずっと無気力状態で、時折り静かに涙を流してた。
その姿は泣き叫ぶよりもいっそう哀しそうで、見ていてとても辛かった。
やつれて、あっという間に痩せていく母さんを見て、このままじゃ母さんまで死んでしまうんじゃないか?って怖くなった。
だから俺は、母さんの"お願い"を断る事が出来なかった。
母さんをもう一度笑顔に出来るのは、父さんの容姿を誰よりも受け継いだ俺しか……いないと思った。
……だから、後悔はない。
だけど、時々想像するんだ。
父さんが亡くならなければ……。
父さんの容姿を受け継いだのが俺じゃなかったら……。
あの日、母さんのお願いを断る事が出来たのならば……。
俺と彼女の距離は、少しは縮まっていたんだろうか?
通学途中にある本屋。
『アッシュトゥーナ財閥御令嬢、レノアーノ様。間も無く二十歳のお誕生日!!』
店頭に並ぶ週刊誌の表紙を飾る美しい赤茶色の髪の女性を見て、俺はそう思わずにはいられなかった。
これは、俺と彼女の"半分こ"のお話。
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