40 / 172
第3章(2)ツバサside
2-5
しおりを挟む
***
「!……ツバサ様、大丈夫でございましたか?」
部屋から出て廊下を歩いていると、会場に戻るまでに心配して俺を迎えに来てくれたシオンと合流する事が出来た。
「大丈夫だよ、ありがとう。
……シオン、帰ろうか?」
「……。はい」
俺の言葉に、何も聞かずに了解してくれるシオン。その存在が、とても有り難い。
俺はこのまま、物分かりの良い男の仮面を被ったままこの場を後にしようと思った。
けど、出口に向かう途中。
今の時刻を確認する為に左腕に着けている腕時計を見て、俺は足を止めた。
『待ってて。
前夜祭が終わるまで、待ってて……』
それは父さんの腕時計を、見たから?
レノアの声が、俺の心に再び語り掛けてくるように感じた。
そしてその囁きのような声に、俺の偽りの仮面が外れ、"本当にこのままでいいのか?"という気持ちが湧き上がる。
「……。もしかして、父さん?」
「!……え?」
まさか、と思った。
そんな事はあり得ないと、思う。
でも、もしかしたら……。さっきからの不思議な現象は不甲斐ない息子を見かねた父さんが、俺の能力を高めているのではないか?と思った。
俺が大切な瞬間を、もう逃したりしないように……?
そう思ったら、さっきまで静かだった胸にトクンッと暖かい鼓動が響いて、止まっていた自分の血がゆっくり全身に巡ったような気がした。
「あの、ツバサ様……」
「ーーシオン、悪い。
やっぱりもう少し付き合ってくれ」
さっきの"父さん"と言う呟きを聞いたからか、また心配そうな表情をしているシオンに俺は微笑って言う。
「やっぱりレノアに会う。その為に力を貸してくれ」
「!……。はいっ、勿論です」
気のせいでも、思い込みでも構わなかった。
父さんが付いていてくれるーー。
そう思えるだけで、何だか勇気が湧いてきた気がした。
俺の決意にシオンも安心したように微笑って、賛成してくれる。
最後に、一歩踏み出してみよう。
最悪だったレノアとのあの日の別れを、少しでも良いものに変えられるように……。
「!……ツバサ様、大丈夫でございましたか?」
部屋から出て廊下を歩いていると、会場に戻るまでに心配して俺を迎えに来てくれたシオンと合流する事が出来た。
「大丈夫だよ、ありがとう。
……シオン、帰ろうか?」
「……。はい」
俺の言葉に、何も聞かずに了解してくれるシオン。その存在が、とても有り難い。
俺はこのまま、物分かりの良い男の仮面を被ったままこの場を後にしようと思った。
けど、出口に向かう途中。
今の時刻を確認する為に左腕に着けている腕時計を見て、俺は足を止めた。
『待ってて。
前夜祭が終わるまで、待ってて……』
それは父さんの腕時計を、見たから?
レノアの声が、俺の心に再び語り掛けてくるように感じた。
そしてその囁きのような声に、俺の偽りの仮面が外れ、"本当にこのままでいいのか?"という気持ちが湧き上がる。
「……。もしかして、父さん?」
「!……え?」
まさか、と思った。
そんな事はあり得ないと、思う。
でも、もしかしたら……。さっきからの不思議な現象は不甲斐ない息子を見かねた父さんが、俺の能力を高めているのではないか?と思った。
俺が大切な瞬間を、もう逃したりしないように……?
そう思ったら、さっきまで静かだった胸にトクンッと暖かい鼓動が響いて、止まっていた自分の血がゆっくり全身に巡ったような気がした。
「あの、ツバサ様……」
「ーーシオン、悪い。
やっぱりもう少し付き合ってくれ」
さっきの"父さん"と言う呟きを聞いたからか、また心配そうな表情をしているシオンに俺は微笑って言う。
「やっぱりレノアに会う。その為に力を貸してくれ」
「!……。はいっ、勿論です」
気のせいでも、思い込みでも構わなかった。
父さんが付いていてくれるーー。
そう思えるだけで、何だか勇気が湧いてきた気がした。
俺の決意にシオンも安心したように微笑って、賛成してくれる。
最後に、一歩踏み出してみよう。
最悪だったレノアとのあの日の別れを、少しでも良いものに変えられるように……。
0
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】
積み上がった伏線の回収目前!!
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる