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第3章(5)ツバサside
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しおりを挟む振り返って、瞳が重なった瞬間に思った。
ーーああ。
きっとこの先の人生がどれだけ長くても、彼女以上に俺の心を痛くする女性はいないーー
一瞬、呼吸が上手く吸えないくらい胸が締め付けられた。
おかしいな。
兄貴に代理を頼まれた時は怖くて、今日ここで待つ事もあんなに悩んだのに……。「久し振り」って微笑む彼女に「久し振り」って返せただけで、俺は帰らなくて良かったと心から思えたんだ。
レノアが入ってきた扉が閉まって、チャペルの中に二人きり。
「待っててくれたんだ?帰っちゃったのかと思ったよ」
「待っててほしそうだから、待っててやったんだよ」
「そっか」
クスクスと微笑いながら、彼女はゆっくりと俺に近付いてくる。
良かった、普通に話せる。
緊張していたのが嘘みたいに、レノアが話し掛けてくれたら自然と俺の口からは言葉が出ていた。
バレないように心の中で安堵していると、正面に立った彼女が手の平を上に向けた右手を俺に差し出してきた。
「?……なんだ?」
「プレゼントは?」
「……は?」
「誕生日プレゼントだよ~。くれないの?」
「それ、自分から強請るものなのか?
てか、それを言うなら俺も明日誕生日なんだけど?」
「あ、そっか」
俺の返しに、レノアはまたクスクスと微笑う。
ああ、いいな。って、思った。
彼女とのこういう時間が、俺はやっぱり心地良い。
俺は左手でレノアの右手を取ると、その掌に右手に隠し持っていた小さな四角い箱を置いた。
すると、それを見た彼女は目を見開いて驚く。
「っ……う、そ」
「言っとくけど、学生の小遣いじゃそれが限界だからな?期待すんなよ」
「私、何にも用意してない」
「だと思った」
「……これ、指輪?」
「バーカ。そういうのはなぁー……、……」
ーーそういうのは、こんな簡単に渡せるか!ーー
危なかった。
思わず、そう、喉まで出かかった。
変なところで途切れてしまった言葉。けど、咄嗟に「そういうのは、別の王子様にでも貰え」なんて言える機転も利かなかったし、それは、冗談でも言えなかった。言いたく、なかった。
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