165 / 172
第7章(5)ランside
5-4
しおりを挟む「よう、兄ちゃん!やっていかない?
その子も景品気に入ってるみたいだし、可愛い彼女の為に取ってやりなよ~!」
っ~~……おじさん!
やめてやめてやめて~~ッ!!
この港街に住む人は私とツバサが仲の良い幼馴染みだと知っている人が多い。
しかし。運悪く、どうやらこの店主さんは祭りの為に今日ここに来た人のようで、完全にカップルだと勘違いされて冷やかされてしまう。
普段なら良かったが平常心ではない今、私には笑って返す余裕がなかった。それにツバサも、そういう冗談をサラッと返せるような性格でない事を私は知っていたから……。
どうしようっ……。
このままじゃ、ますます気不味い雰囲気になっちゃう。
これはやましい気持ちを隠しながら、密かにデート気分に浸っていた自分への罰だと思った。
神様が決めたツバサと運命の糸で結ばれてるのはレノアで、"今日だけ"、"今だけ"、ってそんな束の間の時間さえ私には許されないのだ、と……。
でも。
そんな嫌な雰囲気を変えてくれるのは、ツバサの言葉と笑顔だった。
「ーーおっし!
取ってやるか~可愛い姪っ子の為にな!」
その言葉は私をハッとさせるんじゃなくて、スッと私中に入ってきて、心を優しく包んでくれるようだった。それに……。
「え?姪っ子??」
「そう、姪っ子」
「ははっ、またまた~!兄ちゃん冗談キツいね~!」
驚いたのはツバサの対応。
以前の彼なら、こんな風に冷やかされた時に上手く交わせずにいた筈なのに……。
「いや、ホントなんだけど……。
ま、いいや。おじさん、一回ね」
「一回~?兄ちゃん、一回じゃ無理だよ~。
それに兄ちゃん片目が……」
「余裕余裕~。俺、こういうの大得意だから!」
耳に届くツバサと店主さんの会話に、いつの間にか落ち着いた私は顔を上げてそのやり取りを見ていた。
お金を払って、射的用の銃を手に取ると弾を銃口に詰めるツバサ。瞬きもせず見つめていると、視線に気付いた彼が私を見て、首を少し傾けながら意地悪そうに微笑む。
お祖父ちゃんにそっくりな、その仕草と表情ーー。
それを見て、ツバサが店主さんへの冷やかしの言葉に一切動じなかった理由が分かった。
私が想像していたよりもずっと、彼が大人になっていたからだ。
……参ったなぁ。
また一段と、カッコ良いや。
素直にそう感じた。
でも、まるでツバサの冷静さが伝わったかのように私も冷静で……。自然と、笑顔を返していた。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる