66 / 297
第3章 (2)シュウside
2-2
しおりを挟む
【6月11日/夜】
心配してヴァロンが任務後に宿泊予定の宿に駆け付けると、彼は警戒心が薄れる程に調子を崩していた。用心深いヴァロンが、ここまで追い詰められている事。
私は、嫌だと思った。
「……シュウ。
いつも……ありがと、な……」
「!……え?」
「いつも、ありがと……」
今にも眠ってしまいそうなヴァロンを支えながら、私は彼の雨に濡れた髪を拭いてやった。気持ち良さそうに表情を和らげるヴァロン。
私に甘えている彼を見て、嬉しいと思いながら……。同時にヴァロンにとって、私はリディアやアカリさんとは違うんだと思い知らされた。
「……今日だけ、特別。
もう言わねぇ、かもな……。……」
ヴァロンがすぅ……と、眠って。私の腕の中にコテンッと子供のように倒れ込む。
「……馬鹿、ですね。
全然、嬉しくないですよ……」
私は彼の寝顔を見つめて呟くと、ポケットから液体の薬を取り出す。
「……薬、飲んで下さい」
私は自分の口に薬を含むと、ヴァロンに口付けて……。薬を飲ませた。
熱い唇と口内。
許されるなら、ずっと触れていたいとさえ……。思った。
ーーけど、現実は残酷だ。
「んっ……。アカ、リ……?」
愛おしい人が呼ぶのは、私の名前ではない。
「……。
好きですよ、ヴァロン」
叶わないと知りながら、消せない気持ち。
ずっとずっと、想っていた。
いつ好きになったか、分からないくらい……。
心配してヴァロンが任務後に宿泊予定の宿に駆け付けると、彼は警戒心が薄れる程に調子を崩していた。用心深いヴァロンが、ここまで追い詰められている事。
私は、嫌だと思った。
「……シュウ。
いつも……ありがと、な……」
「!……え?」
「いつも、ありがと……」
今にも眠ってしまいそうなヴァロンを支えながら、私は彼の雨に濡れた髪を拭いてやった。気持ち良さそうに表情を和らげるヴァロン。
私に甘えている彼を見て、嬉しいと思いながら……。同時にヴァロンにとって、私はリディアやアカリさんとは違うんだと思い知らされた。
「……今日だけ、特別。
もう言わねぇ、かもな……。……」
ヴァロンがすぅ……と、眠って。私の腕の中にコテンッと子供のように倒れ込む。
「……馬鹿、ですね。
全然、嬉しくないですよ……」
私は彼の寝顔を見つめて呟くと、ポケットから液体の薬を取り出す。
「……薬、飲んで下さい」
私は自分の口に薬を含むと、ヴァロンに口付けて……。薬を飲ませた。
熱い唇と口内。
許されるなら、ずっと触れていたいとさえ……。思った。
ーーけど、現実は残酷だ。
「んっ……。アカ、リ……?」
愛おしい人が呼ぶのは、私の名前ではない。
「……。
好きですよ、ヴァロン」
叶わないと知りながら、消せない気持ち。
ずっとずっと、想っていた。
いつ好きになったか、分からないくらい……。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる