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第6章 (1)アカリside

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「……。私が、アカリさんの悪口を言ったんです」

「!……へ?」

信じられない私に更にシュウさんのその一言。
私が目を見開いて見つめると、顔を上げたシュウさんと目が合った。真剣な瞳で見つめられて、ドキッとする。

「私は、貴女とヴァロンが……。
!……っ。……アカリさん?その、首……」

私の顔を見つめていたシュウさんが、少し視線を落として首元を凝視した。

「?……首?……。っ……あ!」

すっかり忘れてた。
この前ヴァロンに付けられたキスマーク。

全然消えなくて髪の毛で隠してたのに、夕食を作ろうとして髪を纏め上げて……。そのままにしていた。

「ち、違うんですっ……!これはっ、その……ッ!」

や、やだやだッ……!すっかり忘れてた……っ~~。

私は慌てて髪を解くと自分の髪で首筋を隠した。

「ヴァロンに、やられたんですか……?」

「!っ……や、やられてません!まだ、やられてませんからッ……!!
……っ。……あ」

『やられたんですか?』……。

動揺していた私は、シュウさんの言葉を思いっきり否定した。
答えなくてもいい事を、恥ずかしい事を……大声で言ってしまった。


部屋の中がシーンとなる。

わ、私……最悪っ。

真っ赤な顔を押さえて俯く私。


でも、あの時の事を思い出して……。私は首筋に触れると呟いた。

「……あのまま。襲われちゃっても、良かったんですけどね……」

「!……え?」

驚くシュウさんに、私は顔を上げて微笑んだ。
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