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第9章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟む茫然と佇む俺の名を、アカリが手紙を差し出して呼んだ。
すると……。
「!……ヴァロン、さん?
貴方が……やっぱり、ヴァロンさんなんですねっ?」
ずっと黙っていた少女が、俺の名前に反応して……。俺を見上げて、瞳に涙を浮かべながら微笑んだ。
「……思い描いていた通り。
聞いていた通り、素敵な方……ですね」
その言葉に、勇気を出して少女を見ると…。少女は目を擦って俺から目を逸らした。
「……すでに、お二人は出逢われていたんですね!
……。良かったぁ」
少女はそう言って、アカリに微笑んだ。
……。
何で、だよっ……。
何でっ……親子揃って、何も言わねぇんだよ……ッ。
俺の、幸せばっかり……祈ってんだよッ……。
俯きそうな俺に、少女は顔を上げさせるようにまた微笑んだ。
「……過去に、捉われないで下さい。
……。止まない雨はない。
きっと貴方の真上に、虹は架かっていますよ?」
少女はペコッと俺に頭を深く下げて……。
少しして顔を上げると……。俺の横を通って、足早に歩き出す。
擦れ違い際に香る匂い。
足早に歩く足音。
俺は彼女を、もう見失ってはいけないっ……!
「……。……待て。
っ……おい、っ……待て!」
その場を去ろうとした少女に、俺は夢中で駆け寄って……。パシッと手を掴んで、止めた。
小さな手、細い指。
力を込めたら折れてしまいそうな、少女。
……。
護ってやりたい。
愛おしさが、溢れて……。
何故、今まで傍に居てやれなかったのだと……。
気付いてやれなかったのだと、後悔した。
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