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(7)リディアside
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しおりを挟むでも、マスターは信じてくれていた。
いつも私を暖かい目で見て、本当の娘のように可愛がってくれていた。
「っ……言わないで下さい。
ヴァロンには、言わないで下さいっ」
側に歩み寄って来るマスターに、私は震える声でお願いしながら頭を下げた。
「……。
まだ、ヴァロンがガキだからか?
……だが、年は関係ない。
自分のした事に責任を持たせんといかんだろう?」
責める訳でも、怒る訳でもなく。
心から心配して私に問い質してくれるマスター。
私は、首を横に振った。
「ヴァロンは、悪くありません。
っ……誘ったのは、私です……」
あの夜。
私を抱こうとしたヴァロンは、何の準備をしていなかった事に気付いて一瞬躊躇していた。
それを、私が……自ら身体を繋げた。
無責任に抱く事を迷ったヴァロンを誘ったのは私。
これは私が、自分で望んだ結果。
「……ヴァロンにとって、この子は出来る筈のない子供だった。
彼が責任を負う必要は、ありませんっ」
……それでも。
ヴァロンは私が身籠っていると知ったら、絶対に全てを手放しても傍に駆け付けてくれる。
息を切らして駆け付けて。
何も言わずに隣に居てくれる。
ずっとずっと、手を握ってくれる。
私が好きになった人は、そんな人。
そんな彼だから、もう迷わないでほしい。
「……父親のいない。
そして、母親のお前もいなくなったら……。
その子はどうするつもりだ?」
「この診療所の先生と奥様が、引き取って下さいます。
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それ以上、何も望まない。
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