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第3章(3)紫夕side
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しおりを挟むヒビ割れて刃こぼれした斬月は、きっと俺の心そのものだったーー……。
雪を救う為にはこれまでの自分を捨てて、橘達のようになる必要があると思った。
ただ、普通に暮らさせてやりたいーー。
でも、守護神本部での戦いで雪が普通の人間でない事が多くの人に知れ渡ってしまい……。俺は眠ったままの雪を連れて孤独の人生を選んだ。
幼い頃からずっと辛い目に遭ってきた雪が、また人に傷付けられる姿を見たくなかったんだ。
だって、どんなに自分が傷付いても、お前はこう言うだろ?
「仕方ないよ。オレ、化け物だもん」
自分の胸の傷は隠して、誰も責めず、俺の為に心配かけまいと微笑むんだ。
雪に悪い所なんて一つもねぇのに、「仕方ない」って、色んな事をアイツは封じるんだ。
……そんな悲しい笑顔、見たくねぇ。
俺が好きな雪の笑顔は、見てるこっちが幸せな気持ちになるくらい可愛くて、綺麗なんだ。
一緒に色んな場所に行こう?
一緒に美味しい物食べよう?
一緒に色んな想い出作ろう?
そんで、一緒にいっぱい笑おう?
お前が微笑ってくれるなら、俺はもう一生お前と二人きりでもいいんだ。
他の人なんて……。
他には、何もいらねぇんだ。
ーー……けど。
ホントのホントは、思ってた。
心の中の、1番奥底の方で、ホントはずっと思ってた。
雪と一緒に、"あの日"に戻りたいーー。
杏華や海斗やマリィ……。みんなで楽しく一緒に居られた、あの頃に戻りたい、ってーー……。
雪、俺はお前が1番好きだ。
この世の誰よりも、お前を愛してる。
けど、何でかな?
この数ヶ月、ずっと寂しかったんだ。
お前と紫雪と一緒に居られて、嬉しくて幸せな筈なのに……、……。
……
…………その答えは。
目の前の光景を見て、ようやくハッキリとした。
"雪の為に"とか。
"雪の代わりに"とか。
そんな風に犠牲にしていい人なんていなければ、自分は全然強くなくて……。
寂しがり屋で、弱虫だったんだ、って。
……
…………。
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