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第4章(1)紫夕side
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しおりを挟むーー……そっか。
俺はきっと、コイツになら何度でも恋をするんだ。
名前が違ってもいい。
記憶なんて、なくてもいい。
俺は、目の前のコイツが愛おしいんだ。
「そんで。
俺の名前は、望月 紫夕」
「……し、ゆう?」
「そう、紫色の夕陽って書くんだ。よろしくな、サクヤ」
もう一度、ここから始めようと思った。
コイツの中に俺の記憶がないなら、もう一度知ってもらえばいい。
そう思って俺が自己紹介すると、サクヤは俺を見つめてしっかり聞いてくれた。
「しゆう、さん?」
「「さん」はいらねぇ。「紫夕」でいい」
「でも、としうえのひとには、「さん」つけないとダメなんだよ?」
「!っ、はは……!」
サクラさん、おっとりしてそうなのに、しっかり教育してたんだな、って思ったよ。真面目に返されて、俺はまた笑っちまう。
けど、やっぱり「紫夕」って呼んで欲しくて、言い聞かせるように俺はサクヤの頭を撫でながら言った。
「そうだな、サクヤが正しい。
でも、今回は特別!って事にしないか?」
「とく、べつ?」
「そう、特別!俺はサクヤともっと仲良くなりたいから、「さん」はいらねぇって事だ」
「……なかよく、なりたいから?」
「そうだ」
頭が悪いなりに上手く、もっともらしい理由を言えた気がした。
これできっと「紫夕」と呼んでもらえる筈だと胸を弾ませていると……。なんとサクヤは、俺の期待の遥か上を行く。
「わかった。……しゆう」
「!っ、……」
「しゆう!」
「ーー……っ、~~~?!」
少し照れたような可愛い笑顔に、甘えた声&口調の合わせ技。想像していた以上に破壊力がすごくて、久々に鼻血を噴きそうなのを俺は必死に鼻を押さえて堪えた。
「しゆう?どうしたの?しゆー?」
っ、やべぇ……可愛さが増してやがるッ!!
自分の可愛さを全く理解していないサクヤは俺の悶えなど知りもせず、上目遣いで服の袖を引っ張って、更に名前を呼び続けて追い討ちを掛けてくる。
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