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第4章(2)紫夕side
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しおりを挟む「……こわく、ないの?」
「え?」
「しゆうは、サクのこと……こわく、ないの?」
っーー……怖い?
その言葉に驚いて顔を覗き込もうとするが、サクヤが俺の首に手を回してギュッと抱きついて来て顔を見せてはくれない。そのまま言葉を続けた。
「サクね、「ふつうじゃない」んだって……」
「……」
「からだも、きずがいっぱいあって……「きもちわるい」の」
「っ……」
なんで、そんな酷い事ばっか言うんだよ……ッ。
サクヤのその言葉を聞けば、俺が見ていない所で研究員や医師達にそう言われたのだと分かる。
そしてその言葉に、コイツがめちゃくちゃ傷付いているんだと言う事も……。
記憶を失くしても、子供に戻っても、コイツは結局同じ事で傷付くのかよっ……。
文句を言ってやりたい。殴って、ボコボコにして、そんな心無いヤツ等を黙らせてやりたい。
けど、それは何の解決にもならない。かつて「暴力では助けられない事もある」と、教えてくれた親友の事を思い出して、俺はグッと怒りを堪えた。
深呼吸して、心を落ち着けて、自分が今サクヤにしてやれる精一杯を考えて……。俺は口を開いた。
「サクヤ、その傷は"男の勲章"だ!」
「っ?……おとこの、くんしょー?」
俺が背中をポンポンッと叩いてやりながらそう言うと、ようやくサクヤが顔を見せてくれた。
首を傾げてキョトンとするサクヤを地面に降ろすと、俺は上着を脱いで腕を捲りして右腕の傷を。更に、襟を少し引っ張って左肩の傷を見せる。
「俺もな、いっぱい怪我して傷があるんだ。
でもな?それは恥ずかしい事じゃない。「怪我するくらい、頑張った証」なんだ!」
気にしなくて良い、とか。俺はお前が大好きだから大丈夫だ、って言っても、俺の事を特別に見ていないサクヤの心にはきっと届かない。
だから今は、今のコイツに伝わる精一杯の言葉を掛けてやる事にしたんだ。
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