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第5章(1)紫夕side
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しおりを挟む「こっちに乗り換える、ってのはダメか?」
「……え?」
「おんぶだぞ、おんぶ~!町の入り口まで、ビューン!って走ってやるぞ?」
「……」
「限定一名様しか乗れない背中だぞ~?」
「っ、……」
名付けて、「新たな楽しみでの誘惑作戦」!
俺が問い掛ける度に、サクヤの表情に迷いの色が見え始める。
それを見た俺は目をキラッと輝かせ、よし、もう少しだ!とばかりにトドメの一言を発した。
「サクヤが乗らなねぇなら、他の人が乗っちまうかもな~?」
「っ、やだ!」
効果は抜群だ。
するとサクヤはシートベルトをようやく外して、俺の背中に飛びつくとぎゅ~っとしがみついてくる。
「ダメッ、サクがのる!
サクがのるもん!しゆーはサクのだもん!!」
紫夕はサクのだもん!!ーー。
その一言は何気に俺の胸をジーンと癒してくれた。
っ、ほんっと、可愛いよな~。
お前以外、こんな風に甘やかしたりしねぇよーー。
心の中でそう呟いて俺はゆっくりと身を起こし、車に鍵をかけるとサクヤが落ちないようにしっかりと腕を後ろに回して言った。
「よーし!じゃあ行くぞ~!発進ーーーッ!!」
車に敵う訳なんてないけど、俺は自分が出せる精一杯スピードで走り出す。
そしたら、背中からケラケラと喜ぶサクヤの笑い声が聞こえてきて、俺はまた幸せな気持ちになった。
この時間はきっと、神様が俺にくれたチャンスなんだーー。
雪と出会ってから、俺にはずっと思っていた事があった。
何で、もっと早く出会えて、助けてやれなかったんだろう、ってーー……。
そしたら、雪はあんなに身も心も傷付いて、辛い過去を永遠に背負っていく事はなかったのに……。
だから、今俺がこうして幼い雪と一緒に過ごせているのは奇跡のような贈り物なんだ。
過去を全て塗り変えてやる事も、なかった事にも出来ねぇけど……。その一部でも、「楽しかった」って言える想い出を、俺がやりたい。
コイツの幼い頃の想い出を色付けてやりたいーー。
俺は、そう思ったんだ。
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