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第6章(4)紫夕side
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しおりを挟む今大事なのは風磨よりサクヤーー。
自らが迷わないようにそう思おうとした俺の心に、誰かが問い掛けた。
『本当にいいのか?』……と。
そう問い掛けてくれたのは、きっと斬月。
俺達が武器を向ける相手は魔物ーー。
物心ついた時からそうだと思っていたし、稽古や訓練の時以外に人に向ける事はない。ましてや魔器は、魔物を狩る為に造られた武器だ。
……いや。
そんな決まり事以前に、自分が人を傷付ける事が出来る人間ではない事は自覚している。
だから、この瞬間も俺の中にはそんな気持ちがあったんだ。
俺は、風磨を斬れるのかーー?
愛おしい人を救う為だとは言え、本気で、殺すつもりでなど……。俺はきっと斬月を振るう事など出来ない。
キィイイイーー……ンッ!!!!!
原っぱに響く、金属と金属がぶつかった音。斬月が風磨の魔器ー風乱ーによって受け止められた音だ。
風磨はニヤッと笑うと、片手で抱えていたサクヤをバッと突き飛ばすように放し、その様子に気を取られた俺の事も風乱を振るって弾き飛ばした。
「っ、……しゆーッ!!」
地面に倒れ込みながらも、サクヤはすぐに上半身を起こして俺の名を叫んでいた。その声に、俺はグッと足に力を込め地面に踏み留まる。
しかし、すぐに次の風磨の一手がくる。死神の釜のように形状を変えた風乱が、俺に向かって振るわれた。
キィインッ……!!!
今度は俺が風磨の一撃を止める。
ギリギリと互いに力を込めながら睨み合っていると、風磨が笑みを浮かべながら言った。
「随分と俊敏な動きをするようになったな。僕の背後にあっさり回るなんて、驚いたよ。
魔器、何だか少し変わったみたいだ」
風磨は、新しくなった斬月の事を見抜いていた。そして……。
「だが。
扱うお前が、まだまだだッ!!」
「っ……!!!」
殺意のない俺の心と、殺気のない刃も……。
力を込めて押すようにして俺から一旦離れるが、風磨はすぐに風乱を振り回しながら間合いを詰めて来て攻め手に回る。
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