スノウ2

☆リサーナ☆

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第8章(4)雪side

8-4-1

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目覚めてから、三度目の夜が来たーー。

オレは眠れなくて……。
いや、正確には"眠る必要なんてなくて"、そっとベッドを抜け出した。

時間が過ぎれば過ぎるほど、自分が普通の人間でない事を実感する。
人型魔物であるオレは、人間ほど睡眠時間が必要じゃない。特に、平和で体力を使う事がない今の生活なら尚更……。
そして、暗闇でもハッキリと見えるこの瞳。夜でも、電気を点ける必要なんてない。
それに、足音や気配も、自分では何の自覚もなかったけど自然に消していた。

だから、普通の人間の紫夕しゆうは気付いてない。
オレが夜中に隣から抜け出して、時間を潰して……。朝、紫夕しゆうが目覚める前に戻っている事なんて、知らないだろう。

「……オレも、そのうち母さんみたいに魔物化しちゃうのかな?」

昔は、それ程までに気にならなかった。
自分になんて興味がなかったし、守護神ガーディアンの隊員として生活している時は、戦いの日々に神経が研ぎ澄まされているだけだとも思っていた。

自分はただ、少し、他の人より敏感な感覚をしているだけなんだ、ってーー……。

でも、違う。
紫夕しゆうに引き取ってもらった際には虐待が原因で欠落していた幼い頃の記憶が、今になって思い出せるようになった。
母さんと研究所で過ごしていた日々。そして、研究所を逃げ出して、逃亡生活をしていた時の事を……、……。

母さんが、自分が魔物化する事とその時期を悟っていたように、オレにも何となく分かるんだ。
まだ時期は分からないけど、このまま生きてたらオレは間違いなく魔物化する、って……。

「……。
そしたら、紫夕しゆうとは居られない」

小さくポツリと出た呟きは、暗闇にすぐ消えた。
けれど、その呟きに気付いた紫雪しせつが「みゃ~」と、可愛く鳴いてオレの足元に擦り寄ってくる。
その姿にほんの少し癒されて、笑みが溢れた。オレは紫雪しせつを抱き上げると、そのままソファーに行き一緒に座った。
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