スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
252 / 589
第12章(3)紫夕side

12-3-4

しおりを挟む

「へ~そりゃすご……」
「ーー見ててね?」

俺の言葉を遮ると、ゆきはコップに入っていた水を指さして……。「ほらね!」と、得意気に言った。

ーー……は?

俺は、凝視した。
コップの中に入っていた水が、一瞬で、凍ったからだ。

冷や汗が、出た。

信じられない現象を目の当たりにして、頭の中が真っ白になった。
今は初夏、気温は真夏とまではいかないが暖かい方だ。自然に水が固まるなんて、まず有り得ない。

っ……コイツが、本当にーー?

「ねっ?すごいでしょっ?」

戸惑う俺に、ゆきがまるで子供のように無邪気に微笑む。
その表情を見て、胸がドクッと締め付けられながらも……。俺は、何とか笑顔を作って、ゆきの頭を撫でてやった。

「っ、ああ。すごいすごい!
ごめんな~、あんまりすごいからビックリしちまったよ!」

返事をするまでに出来てしまった間を、俺は驚いた、って事にして、そう言った。
するとゆきは、

「オレ、紫夕しゆうに迷惑かけないように頑張るからね!」

って、笑って……。
再び、朝食の続きを頬張り出した。

「……わりっ、ゆき。俺、ちょい用を足してくるな」

「うん、いってらっしゃい」

そんなゆきを残して、俺は理由をつけてその場から離れた。

……、っ……バカ。
あれくらいの事で、何動揺してんだよっ。

乱れた心が歩みに表れ、ついつい早足になる。
少し離れた場所まで来て、俺は俯いて拳をギュッと握り締めた。

どんなゆきでも愛してる。
どんなゆきでも受け入れてやる。
魔物でも構わない、って誓ったんだ。

……それなのに。
さっきゆきの力を目の当たりにした時。俺は一瞬、感じちまったんだ。

強力な魔物と対面した時の恐怖をーー……。

本能的に。無意識に咄嗟に感じてしまった感情とは言え、俺はそんな自分が許せなかった。

……
…………。
しおりを挟む

処理中です...