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第14章(1)紫夕side
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しおりを挟む見失ったら、最後だと思ったーー。
俺はリュックを投げ捨て迷わず川に飛び込むと、無我夢中で流されている雪の元を目指した。
物音や守護神の動きを頼りに、俺がようやくその姿を見付けた時。見上げた崖の上に居たのは傷だらけの雪だった。
何で、もっと早く見付けてやれなかったんだーー!!
そう悔やんでも遅い。
大きな発砲音とほぼ同時に吹っ飛んだ雪の身体は、崖から真っ逆さまに落ちて行き、水面に叩きつけられて、動かなくなった。
元々流れの早い川が、早朝から降り続けていた雨のせいで水かさも増えている。
でも、諦められる筈がない。後先なんて考えられず一心不乱に泳ぎ、俺は何とか雪の腕を掴むとその身体を抱き寄せた。
っ、雪……!
絶対にッ……放して、たまるか……っ!!
しかし、まだまだ気は抜けない。
勢いの強い流れに何度も呑まれそうになりながらも、今度は必死に必死に岸を目指して進む。
っ……もう、少しッ!!
だが、後一歩。後一歩、と言うところで流れの勢いや漂流物に遮られて上がる事が出来ない。
このまま二人で滝の方まで流されてしまうか、とまさに万事休すの時だった。背中に背負ったままだった斬月がチカチカと輝き出し、その直後に俺の身体がグンッと岸に上がりやすいように持ち上げられた。
俺は驚きつつも咄嗟に木の根の出っ張りを掴むと、渾身の力を込めて自分と雪の身体を岸に上げた。
「っ、ゲホゲホッ…………ッ、雪」
疲れた、なんて休んでいる暇はない。
俺は雪を仰向けに寝かせると、すぐに状態を確認をする。
さすが、と言うべきか浅くて弱いが呼吸はしてる、心臓も動いてる。けど、それよりも……。
「ーー……ッ、出血が……止まらねぇっ」
腕や脚はもちろん、溝落ちの、魔器によって傷付けられたであろう傷からの出血が酷い。手で強く抑えても、滲み出てくるばかりだった。
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