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第16章(2)雪side
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しおりを挟む「え?紫夕、明日から働くの?」
コテージを借りてもうすぐ一週間が過ぎようとしていた、ある夜の事。
一緒のベッドに横になっていた紫夕が腕枕をしてくれながら話してくれた事に驚いて、オレは思わず聞き返した。
「ああ。日雇いでさ、出来そうな仕事があったんだ。
まだもう少し滞在する事になりそうだから、その間の費用くらい少しでも稼ごうと思ってな」
「っ、……そう、なんだ。
……。ご、ごめんね、紫夕……」
訳を聞いて、それって絶対にオレのせいだ、って思った。
ここに来てから今日まで、良くなったと思ったらまたその日の夜や翌日に体調を崩して、を繰り返しているオレ。そのせいで、ここを出て、次の場所へ旅立つ目処が全然立たなくて……。
きっと、お金がかかるから……だよね?
ここはただの貸家ではなく、いわゆる旅の人が宿泊する観光施設のようなものだ。
旅行なんてした事なかったから詳しくは分からないけど、昔、雑誌で読んだから、旅行はお金がかかるものだ、って知ってる。
それに、自分は最近何故か野菜か果物しかまともに食べられなくて、食費も嵩む。
紫夕は「気にすんな!少しでも良い物食って、栄養つけろ」って言ってくれるけど、……。
気にせずにはいられない。
紫夕は最近大好きなお酒も全然飲んでないのに、オレだけ贅沢してる、って罪悪感に駆られた。
けど、そんなオレをギュッと抱き寄せて、紫夕が言った。
「バカ。謝るな、っていつも言ってんだろ?夫婦なんだから、当たり前だ。
お前は、俺の1番の大切なんだからな」
「っ、……紫夕」
また、そんな嬉しくて優しい言葉を掛けられて、自分はなんて幸せなんだろうと胸が甘く締め付けられる。
本当に、自分なんかがこんなに幸せでいいのか?と、何度も何度も心の中で思ってしまう。
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