スノウ2

☆リサーナ☆

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第18章(1)雪side

18-1-3

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煙草タバコをやめて、お酒もあまり飲まなくなって……。守護神ガーディアンの仕事で留守にする時以外は、どんなに夜遅くても迎えに来てくれて、オレと一緒に過ごしてくれた。

ーー……ああ。
本当に、大好きだったなぁ。

過去を振り返れば振り返る程。思い出せば思い出す程、そう思った。心が、揺れる。
でも、このまま傍に居れば、自分はいつか魔物化して紫夕しゆうの事を喰い殺してしまう可能性もあるのだ。

それだけは、絶対に嫌だ。
だから、このタイミングで離れるのが1番良いんだ。

オレは自分に言い聞かせて迷いを払うと、パジャマから私服に着替えた。
洗面所で涙で濡れた顔を洗い、長い髪を簡単にまとめて身支度を整えると、羽織ったパーカーのフードを被って酷い顔を隠す。

……置き手紙なんてしたら、ウザいよね?

本当は、「ありがとう」って、一言だけでも伝えたかった。
でも、帰って来た紫夕しゆうがそれを見て、またオレの事を思い出して気分が悪くなるのは……嫌だった。

出て行く、って。
離れる、って……。
もう、会わないって決めたんだ。

それなら、もう何も、残さずに行こうーー……。

オレは、リュックを背負うと玄関で靴を履き、追って来ようとする紫雪しせつをコテージ内に残すと、扉を閉めて外に出た。

……
…………。

眩しい太陽の光も、秋色に色付き始めていた自然の美しさも、目に入ってこない。
そして、自分に忍び寄って来ていた魔の手にも気付かない程に、オレの心は落ちていた。

「ーーこれはこれは、自ら目の前に出て来てくれるとは思わなかったよ。ゆき君」

その声にビクッと立ち止まり、俯いていた顔を上げる。
そこに居たのは、焦げ茶色の髪に瞳の……。

「っ、風磨ふうま……さん」

ドクンッと嫌な音を立てる鼓動。
止まっていたかのような時間が、静かだった空気が騒めき出す。
オレが名を口にすると風磨ふうまさんはニコッと微笑み、右手をオレに向かって差し出した。
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