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第18章(4)雪side
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しおりを挟む「親父からの命令は「雪の奪還」だった筈だ。それなのに……」
そう言った響夜が顔だけこちらに向けてオレを見てきて、ドキッとした。
でも、視線が交わる事がなく、響夜が見ていたのはもう少し下。ベルトを緩められて乱れた、オレの着衣。
それに気付いたオレがカアッと顔に熱が高まって慌てて隠すのと、響夜の怒りが込もった声を放つのは同時だった。
「何勝手な事してんだよ、てめぇッ……!」
その声の鋭さは、まるで"返答次第では殺す"と言っているかのようだった。
けど、風磨さんは態度を崩す様子はなくさらりと答える。
「いいじゃないか。遅かれ早かれ、彼は僕の物になるんだから。
橘さん……。"君のお父さん"から、そう許可はもらっているよ」
君のお父さんーー。
橘さんの名前を出して、強調して、勝ち誇ったように風磨さんは笑った。
そう言われた響夜は、黙って……。でも、ギュッと拳を握り締めていた。まるで、悔しがっているみたいに……。
その様子に、やはり響夜でも橘さんに逆らう事は出来ないのだ、と。絶対的な権限があるのだと思い知る。
……やっぱり。
オレは、このまま風磨さんに……。
目を伏せながら着衣を直す手が震える。
こんなんで、この先オレは本当に1人で赤ちゃんを護れるのーー……?
弱音を吐いてはいけない。
けれど、橘さん、風磨さんの手の中にあるこの状況で、無事に子供を産めるのか不安が過った。
勿論、全くの考えなしで飛び込んだ訳ではなかった。
橘さんに近付けば、自分にとっても良い情報が入ってくるんじゃないか?と、オレは少し期待していたんだ。
赤ちゃんの事、出産の事……。何より、オレは今自分の身体がどんな状態なのかすら知らない。
だから、橘さんの側に行く事で、少なからず自分にも利益があると思っていた。
けど、やはり自分は父親にとって実験動物でしかなくて……。それを改めて痛感し、危険な場所である事に落胆する事しか出来なかった。
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