スノウ2

☆リサーナ☆

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第20章(1)紫夕side

20-1-2

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その音が響いて、思わず眉間にシワを寄せて頭を押さえる。
ガンガンと痛み、重い頭。完全に二日酔いだ。

「にゃ~ん!」

俺が目を覚ますと、テーブルの上に乗っていた紫雪しせつが、じっと見つめてもう一度鳴く。
その鳴き声に、チラッと床に置いてある紫雪しせつ用のご飯皿を見るが、飯は減ってない。
俺は溜め息を吐くと、紫雪しせつの頭をそっと撫でた。

「何だよ。飯ならあるだろ?」

「……なぅ~」

そうじゃないーー。
まるで、そう言っているかのように……聞こえた。
昔は、動物に表情なんてないと思ってた。紫雪しせつを飼うまで、猫なんてみんな同じに見えた。

けど、今は違う。
紫雪しせつの言いたい事や思ってる事が、何となく分かる気がするんだ。
悲しそうな瞳に見つめられて、胸が痛む。

ゆきは、自分から出てったんだ。
……。なのに、俺にどうしろって言うんだよ?」

完全に、自信を喪失していた。

俺は椅子から立ち上がり台所へ行くと、流し台の水道の蛇口を捻り、そこで酔いを流そうと頭から冷水を浴びた。
すると、その際に横目にチラッと映ったゴミ箱。そこには、俺が捨てたリンゴが入っている。

そのリンゴについても、亜希あきさんから聞いた。
自分の孫が、このコテージの前で怪我をした際にゆきが助けてくれたから、そのお礼に渡した、って……。

ゆきは、俺との約束を破ってなんていなかったーー……。

確かにコテージここから外へは出たが、それはきっと、子供が怪我をしているのを見捨てる事など出来なかった、と言うアイツの優しさから……。
それなのに自分は話も聞かず、自分の感情ばかりをゆきにぶつけた。

今更だが色んな後悔が溢れて、俺はせめてもの罪滅ぼしにゴミ箱からリンゴを拾った。
幸い、他にゴミと言うゴミは捨てていなかったし、亜希あきさんが渡してくれた際に透明のビニール袋に入れてくれていたから、俺が投げるような捨て方をしてその衝撃で痛んでいるだけで……その他は綺麗だ。
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