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第20章(1)紫夕side
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しおりを挟むその音が響いて、思わず眉間にシワを寄せて頭を押さえる。
ガンガンと痛み、重い頭。完全に二日酔いだ。
「にゃ~ん!」
俺が目を覚ますと、テーブルの上に乗っていた紫雪が、じっと見つめてもう一度鳴く。
その鳴き声に、チラッと床に置いてある紫雪用のご飯皿を見るが、飯は減ってない。
俺は溜め息を吐くと、紫雪の頭をそっと撫でた。
「何だよ。飯ならあるだろ?」
「……なぅ~」
そうじゃないーー。
まるで、そう言っているかのように……聞こえた。
昔は、動物に表情なんてないと思ってた。紫雪を飼うまで、猫なんてみんな同じに見えた。
けど、今は違う。
紫雪の言いたい事や思ってる事が、何となく分かる気がするんだ。
悲しそうな瞳に見つめられて、胸が痛む。
「雪は、自分から出てったんだ。
……。なのに、俺にどうしろって言うんだよ?」
完全に、自信を喪失していた。
俺は椅子から立ち上がり台所へ行くと、流し台の水道の蛇口を捻り、そこで酔いを流そうと頭から冷水を浴びた。
すると、その際に横目にチラッと映ったゴミ箱。そこには、俺が捨てたリンゴが入っている。
そのリンゴについても、亜希さんから聞いた。
自分の孫が、このコテージの前で怪我をした際に雪が助けてくれたから、そのお礼に渡した、って……。
雪は、俺との約束を破ってなんていなかったーー……。
確かにコテージから外へは出たが、それはきっと、子供が怪我をしているのを見捨てる事など出来なかった、と言う雪の優しさから……。
それなのに自分は話も聞かず、自分の感情ばかりを雪にぶつけた。
今更だが色んな後悔が溢れて、俺はせめてもの罪滅ぼしにゴミ箱からリンゴを拾った。
幸い、他にゴミと言うゴミは捨てていなかったし、亜希さんが渡してくれた際に透明のビニール袋に入れてくれていたから、俺が投げるような捨て方をしてその衝撃で痛んでいるだけで……その他は綺麗だ。
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